音声メディア「Voicy」で、「10分で決算が分かるラジオ」を毎日配信中の「妄想する決算さん」が、日経225・グロースコア・スタンダードコアの企業を1社ずつ取り上げる人気連載を日興フロッギー版としてスタート! 読むだけで、知らず知らずのうちに主要な株価指数に採用されている企業についてわかるようになる決算解説。日興フロッギー版ならサクっと5分でチェックできます!
2025年3⽉期決算説明資料
2025年3⽉期 決算説明資料 別冊(参考資料)
2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)
中期経営計画2030
今回取り上げるのは、不動産の総合ディベロッパーとしては、三井不動産や三菱地所に次ぐ3位の規模を持つ企業で、最近ではShibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)の開発も話題になった東急不動産ホールディングス株式会社です。
事業内容
それでは早速事業内容から見ていきましょう。
東急不動産ホールディングスの事業セグメントは以下の4つです(2025年3⽉期 決算説明資料 別冊(参考資料)P5、中期経営計画2030 P31参照)。
②戦略投資事業:再エネ、海外事業など
③管理運営事業:不動産管理、ホテル運営など
④不動産流通事業:東急リバブルを主力とする不動産の売買や売買仲介、賃貸住宅サービスなど
不動産の開発や賃貸、売買、不動産仲介、不動産管理などの不動産事業を一貫して行い、さらにホテルの運営、再エネ事業なども展開している企業です。
2025年3月期のセグメント別の構成は以下の通りです(2025年3⽉期 決算説明資料 別冊(参考資料)P5参照)。
①都市開発事業:30%
②戦略投資事業:9%
③管理運営事業:31%
④不動産流通事業:30%
①都市開発事業:47%
②戦略投資事業:3%
③管理運営事業:16%
④不動産流通事業:34%
営業収益は分散した構成で、利益面は、都市開発事業と不動産流通の規模が大きいです。
続いて主力事業をもう少し詳しく見ていきましょう。
都市開発事業の売上高構成比率は以下の通りです(2025年3⽉期決算説明資料 P24参照)。
・賃貸オフィス:(18%)
・賃貸商業施設:(14%)
・その他(投資家向け売却等):(30%)
②住宅事業:39%
・住宅分譲:(24%)
・住宅その他(投資家向け売却等):(15%)
※売上高構成比率は妄想する決算氏が算出
オフィス・商業施設が6割で、その中でも賃貸オフィスや賃貸商業施設で都市開発事業の32%を占めています。
賃貸商業施設も固定賃料が8割を超えていますので、都市開発事業の3割ほどは安定収益の事業だとわかります(2025年3⽉期 決算説明資料 別冊(参考資料)P10参照)。
このような事業は施設の開発と共に積み上がりが期待できるストック型の事業です。とはいえ、不動産の開発は販売、投資家向け売却が半分以上を占めていますので、不動産市況に左右される事業でもあります。
また、強みを持っているエリアは渋谷です。以前から渋谷の開発を主導してきた企業であり、現在保有するオフィスや商業施設も渋谷圏を中心としています(2025年3⽉期 決算説明資料 別冊(参考資料) P9、11、12参照)。渋谷区、港区、千代田区、中央区といった都心部を主力に事業を展開していて、今後も大きく相場が崩れることは考えにくく、安定収益の下支えが期待される事業展開です。
続いて管理運営事業の売上高構成比率は以下の通りです(2025年3⽉期決算説明資料 P40参照)。
・マンション管理:(33%)
・ビル管理:(27%)
②ウェルネス事業:36%
・ホテル:(19%)
・レジャー:(5%)
・ヘルスケア:(4%)
・その他(会員権販売等):(11%)
③環境緑化事業:4%
※売上高構成比率は妄想する決算氏が算出
マンションやビル管理といった安定収益が6割を超える一方、近年客室単価上昇で好調な業態であるホテルも2割ほどの規模があります。ホテル市場の動向などに一定程度左右されるものの、安定収益が期待できる事業です。
続いて不動産流通事業の売上高構成比率は以下の通りです(2025年3⽉期決算説明資料 P43参照)。
・売買仲介:(27%)
・不動産販売:(40%)
・販売受託等:(3%)
②賃貸住宅サービス事業:31%
※売上高構成比率は妄想する決算氏が算出
不動産売買に関連する事業が主力で、不動産市況に左右されやすい事業です。
最後に戦略投資事業を見ていくと、再エネ関連の事業規模が大きく、海外事業は165億円程度の売上になるため、国内事業が主力の企業と言えます(2025年3⽉期決算説明資料 P32参照)。
都市開発事業や管理運営事業などでは、賃料収入や管理収入といった安定収益もありますが、不動産の売買に関連する事業の規模が大きく、国内の不動産市況に左右される企業です。
業績の推移
続いて2018年3月期以降の業績の推移を見ていきましょう。

東急不動産HD 2025年度3月期決算(参考資料)より
利益の推移を見ていくと2021年3月期こそ、コロナの影響を受けて減益となったものの、基本的には右肩上がりでの成長を続けています。
ここまでのまとめ
・東急不動産ホールディングスの事業セグメントは4つ:都市開発、戦略投資、管理運営、不動産流通
・営業収益は分散した構成比率だが、利益は、都市開発事業と不動産流通が主
・都市開発事業の売上高構成比はオフィス・商業施設61%、住宅39%
・渋谷圏を中心に安定収益を期待
・管理運営事業は安定収益が6割超、ホテルも好調
・不動産流通事業は売買仲介が主力で市況に影響されやすい
・戦略投資事業は再エネが主力、海外事業の営業収益は165億円で、国内が主力事業
・2018年以降、業績は右肩上がりで成長
直近の業績
直近の2025年3月期の業績を詳しく見ると以下の通りです(決算短信より)。
営業利益:1407億円(+17.1%)
経常利益:1291億円(+17.0%)
純利益:775億円(+13.2%)
増収増益が続き、2025年3月期も過去最高益を更新しています。

東急不動産HD 2025年度3月期決算(参考資料)より
セグメント別の業績の推移を見ると都市開発、管理運営、不動産流通と主力事業が軒並み増益傾向となっています。
各事業の成長が続いている要因を見ていきましょう。まず、オフィスや商業施設、住宅などを手掛ける都市開発事業が拡大しているのは、オフィスや商業施設の開発による安定収益の積み上がりが進んだこと、都心部エリアで事業を展開していること、そして不動産市況の影響が大きいです。

東急不動産HD 2025年度3月期決算(参考資料)より
コロナ禍以降は、オフィスや商業施設の延べ床面積は横ばい傾向で推移していますから、ここ数年の好業績に影響が大きいのは都心部エリアの堅調な市況です。

東急不動産HD 2025年度3月期決算資料より
主力のオフィス市況を見てみると、コロナ禍以降のテレワーク化により、東京のビジネス地区の空室率は増加し、現在もコロナ前の水準には回復していません。一方、渋谷を中心に展開する東急不動産ホールディングスのオフィスは、コロナ禍で空室率が増加したものの、2019年3月期の0.4%から1%台前半にとどまる程度の増加に留まっています。コロナ禍では空室率が増加していたものの、平均賃料は増加傾向にあり、近年は賃料上昇が好調な要因となっています。需要が大きい都心部中心の展開により、堅調な状況が維持されています。
さらに、直近の2025年3月末時点では空室率が0.3%まで低下し、今後も堅調な業績が続くことが期待されます。

東急不動産HD 2025年度3月期決算(参考資料)より
さらに、不動産価格は高騰しています。
首都圏の分譲マンションの市況を見ると、2024年は発売戸数に関しては、1973年以降で最小となっていますが、一方2010年代以降、価格は上昇傾向で、2023年以降では大幅な上昇を見せています。それ以前は平均6000万円ほどだったのが、8000万円前後まで上昇しました。
そういった中で投資家向けの売却益は高水準で推移していますし、分譲マンションに関しても、粗利率は上昇傾向が続いています(2025年3⽉期決算説明資料P17、30参照)。
都心部の不動産価格の高騰によって好調です。

東急不動産HD 2025年度3月期決算資料より
そして不動産価格が高騰する中で、賃貸不動産の含み益も増加傾向となっています。
今後も堅調な売却益が計上されることが期待されます。
管理運営事業が好調な要因は、直近ではホテル事業にあります(2025年3⽉期決算説明資料P40、42参照)。2025年3月期ではホテル単価の高騰を受けてホテル事業が+23億円の増益となり、好調でした。その一方で不動産管理に関しては+4億円の増益となっていて、管理物件の量から質への転換を進めています。そういった中で管理物件数自体は減少しています。
2026年3月期は増加を見込んでいますが、質重視に転換し、堅調な業績は期待されるものの、大きな成長が起こるような状況ではないでしょう(2025年3⽉期決算説明資料 P41参照)。
とは言うものの、質への転換と活況なホテル市況を考えるとこの事業も堅調な業績が続くことが期待されます。
不動産流通事業の拡大が続いているのは、仲介件数や取扱高の増加が影響しています。

東急不動産HD 2025年度3月期決算(参考資料)より
首都圏の新築マンションは、現状供給戸数は減少し、価格が高騰しています。
新築の供給が足りていないため、活況となるのは中古マンション市場です。都心部に強みをもつ東急不動産ホールディングスは、取扱件数も増加していますし、中古マンションの価格上昇で単価も上昇し、好調です(2025年3⽉期決算説明資料 P44参照)。
東急不動産ホールディングスは、不動産市況やホテル市況の影響で好調ですが、現在は国内でも金利上昇が進んでいます。トランプ関税など、景気面も不透明な状況で、本来なら今後の不動産市況には注意が必要ですが、東急不動産ホールディングスの場合は、こうした影響を比較的受けにくい都心部に強みを持っているため、基本的には堅調な状況が続くと期待されます(2025年3⽉期決算説明資料 P4参照)。
そして、2026年3月期の業績は、増収増益が続くことを見込んでいます(2025年3⽉期決算説明資料 P21参照)。
事業が堅調に推移するだけでなく、2025年3月期には戦略投資事業で米国の物件評価損が54億円発生したため、その反動による好影響も見込まれています。これにより、好調が持続する可能性が高いと言えます(2025年3⽉期決算説明資料 P16参照)。
このように好調が続く東急不動産ホールディングスですが、近年の好調は不動産市況による影響も大きいため、2030年までの計画を見ていくと、最も成長を見込んでいるのは戦略投資事業です(中期経営計画2030 P32、33参照)。
2025年3月期→2031年3月期のセグメント利益の目標は以下の通りです。
②戦略投資事業:+543億円
③管理運営事業:+120億円
④不動産流通事業:+172億円
※増減額は妄想する決算氏が算出
最後に、各事業の今後の取り組みです。
都市開発事業
増益を計画してはいないものの、複数の大規模プロジェクトが進んでいて、広域渋谷圏でのオフィスや商業施設の安定収益拡大を進めています(中期経営計画2030 P34、35参照)。今後も適切に売買は進めていくと思われますが、不動産の保有による安定収益拡大によって2025年3月期と同水準を目指しているため、収益構造の変化が進むかどうかに注目です。
不動産流通事業
事業規模の拡大を続けることで成長することを目指しています。
管理運営事業
成長を目指すのはホテルで、ホテル運営関与室数を9300→1万2800室まで拡大させる計画です(中期経営計画2030 P38~39参照)。ホテル市況や事業規模の拡大が続いているかどうかに注目です。
戦略投資事業
最注力で、拡大を目指しています。2025年度~2030年度で1.4兆円もの投資を計画しています(中期経営計画2030 P36参照)。既に業界トップクラスの再エネ設備を保有していますが、今後さらなる大規模投資で再エネ事業の大きな成長を目指しています(2025年3⽉期決算説明資料P33、34参照)。

東急不動産HD 2025年度3月期決算資料より
物流施設への投資やデータセンター投資などのインダストリー事業も積極投資を進めていて、この事業でも拡大を目指しています。増益の主要因としているのがこの2事業ですから、その拡大に注目です(中期経営計画2030 P33参照)。海外事業も成長を目指し、米国やアジアへ投資していますのでその進捗にも注目です(2025年3⽉期決算説明資料P38,中期経営計画2030 P37参照)。
以上、都市開発事業は安定収益の拡大、不動産流通事業では事業規模拡大、管理運営事業ではホテル事業の拡大、戦略投資事業では再エネや物流施設、データセンター、そして海外投資が進んでいるかに注目です。
※「日興フロッギー版」では、解説のポイントがわかりやすいようにマーカーを付けています。
※「日興フロッギー版」では、解説に使用したデータの参照元を記載しています。
※「日興フロッギー版」では、画像による説明は決算発表会資料に集約し、それ以外は、データの参照元を明記しています。
※「日興フロッギー版」では、用語解説を追加しています。
※「日興フロッギー版」では、「事業内容と業績のポイント」について「まとめ」を追記しています。