関税交渉決着で大幅高! 次に注目すべき3つの材料

カエル先生の株式相場プレイバック/ 日興フロッギー編集部平松 慶

マーケットの「温度感」がわかる連載「カエル先生の株式相場プレイバック」。今回は、再度日経平均が4万円台を回復した株式市場の動きと、その原動力となった日米関税交渉の決着を軸に解説します。

カエル先生の一言

7月の日本株市場は、月中こそ小動きでしたが、月末には日米関税交渉の決着をきっかけとして大幅に上昇しました。株式市場の最大の不透明要因だった関税交渉が一段落したことから、それに伴う下値不安は後退したと言えるでしょう。8月は、米国のEUや中国との関税交渉、企業の決算発表、参院選後の政権枠組みの行方などが注目ポイントとなりそうです。

7月の日本株市場

7月31日の日経平均株価は4万1069円、前月末比582円高でした。

6月末に米株市場が中東情勢の緊張緩和や米国の利下げ観測などから大幅に上昇した流れを受け、4万円台を回復した日経平均ですが、短期的な過熱感が意識されたことで、7月月初は大幅反落するなど軟調なスタートとなりました。

その後は、米関税政策に対する警戒感や、参院選を巡る不透明感が株安要因となりました。一方、エヌビディアによる中国向け半導体輸出再開や台湾積体電路製造(TSMC)の良好な決算発表など、ポジティブな動きを好感する局面もあり、日経平均は3万9000円台の狭いレンジで推移。

20日に行われた参院選での与党敗北を受け小幅安となった翌23日、日米関税交渉の合意や石破首相の退陣観測報道などを受け、日経平均は1400円に迫る大幅上昇。約1年ぶりの4万1000円台を回復しました。

日米関税交渉が決着

日本時間23日(米東部時間22日夜半)、トランプ大統領がSNSで日米関税交渉で合意したことを発表しました。各種報道によると、相互関税率は7月7日に通告されていた25%を大幅に下回る15%へ引き下げられ、自動車への関税も15%で妥結したとのことです。

日本にとっては、ある程度の譲歩をしたものの、最悪の事態は回避され比較的マイルドな着地点に落ち着いたことから一定の成果を得られたと言えそうです。マクロ経済的にも、関税の設定はGDP成長率を若干押し下げるものの、軽微なものにとどまり経済は拡大する見通しです。

前述のように、関税交渉の決着を受けた日本株市場は大幅高となりましたが、業種別では関税の影響が大きい「輸送用機器」が最大の上昇となりました。市場は関税交渉決着の影響を一定程度織り込んだとも言えそうです。

8月の注目点3つ

最大の不透明要因が後退したことで、市場の視線は次の材料に移っていくと考えられます。大きくは以下の3つが挙げられそうです。

1つ目は、関税交渉に絡んで、米国にとって日本以上に重要なEU及び中国との交渉の行方です。日本との合意をきっかけに協調的な交渉の推移や決着となれば、世界経済見通しにもプラスとなる可能性があります。

2つ目は、国内企業の決算発表動向です。関税交渉の決着を織り込んで、今期通期予想を上方修正するまでには至らないと思われますが、上積み余地は高まることが想定され、利益面から日本株市場の評価余地の拡大に繋がることも期待されます。

3つ目は、参院選後の政権の行方です。与党敗北の一因には「保守離れ」があるとも言われています。保守基盤層とアベノミクス路線には一定の近接性があり、金融緩和・財政拡張指向の新総裁、連立枠組みとなった場合は、円安・株高が連想され、株式市場は好感する流れも考えられます。

為替感応度が高く米国売上高比率の大きい銘柄

日米関税交渉の決着によって、一旦、日本株市場は大きく上昇しました。交渉での妥結内容が明らかになっていく場面では、大きく値上がりした個別銘柄に「利益確定の売り」が出る局面も想定されます。

それでも、極端な下値不安が生じる可能性は限定され、上値期待は維持されそうです。以下では、米国売上高比率が大きく、株価の為替感応度の高い銘柄をご紹介します。

悲観的に過度に織り込んでいた米国売上高に対する関税のマイナス影響は想定を下回る可能性があり、また、円安局面で株価がプラスに反応する銘柄として注目してみてはいかがでしょうか。

SUBARU
武田薬品工業
住友林業
ブリヂストン
キッコーマン
大塚ホールディングス
アステラス製薬
クボタ
マツダ
オリンパス