株式市場で「農業」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は7.7%と、東証株価指数(TOPIX、2.6%)を大きく上回りました(8月8日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
政府がコメ増産方針を表明
農業関連株が上昇したきっかけは、コメ増産の表明や好調な企業の決算発表です。
8月5日、一部メディアが「コメ増産に政策転換、首相表明へ」と報道、同日、石破首相はコメの安定供給実現関係閣僚会議で「(コメの)増産に舵を切る」と表明しました。
「減反」や「生産調整」から「コメ増産」へという農政の大きな政策転換により、コメ農家の収益増を通じ、農業関連企業の業績押し上げを期待。また、農業関連企業が発表した決算発表も好感され、株価上昇に弾みがつきました。
8月4日に農林水産省が発表したコメの価格が、割安な備蓄米の販売ペースの落ち着きなどを主因に10週ぶりに上昇したことも買い安心感につながったとみられます。

コイン精米機も手掛ける【井関農機】
上昇率首位の「 井関農機 」は田植え機やトラクター、精米機などコメ農家向けの機械やコイン精米機を手掛けています。同社は8日、2025年12月期連結業績見通しを上方修正し、最終損益は18億円の黒字(従来予想は13億円の黒字、前期は30億2200万円の赤字)になりそうだと発表しました。コメ価格の上昇による農家の購買意欲向上が寄与し、足元の業績は好調に推移しています。コメ価格が再び上昇基調に転じれば、収益を一段と押し上げる可能性があります。
日本初の農薬専業メーカー【日本農薬】
「 日本農薬 」は日本初の農薬専業メーカーで1928年に創業しました。主力製品の一つとして水稲向けの殺虫剤を手掛け、国内のみならず、インドやベトナムなどアジア市場の開拓を進めています。26年3月期連結業績が従来予想を上回り、純利益が前期比2倍超の50億円(従来予想は48億円)になりそうだと7日に発表しました。同社も米価高騰による農家の生産意欲の高まりを要因に挙げています。
除草剤メーカーなども株価上昇
「 石原産業 」は水稲用の除草剤などを手掛けています。8日には25年4~9月期連結最終損益が従来予想(5億円の赤字)から一転して黒字化し、前期比3.3倍の24億円の黒字になりそうだと発表しました。
「 住友化学 」は農業用殺虫剤や除草剤の販売や、コメ生産者への種もみや農薬、肥料の提供から収穫したコメの販売まで一貫するコメ事業を手掛けています。
「 タカキタ 」は肥料や土壌改良剤の散布などに使う農業用作業機の製造や販売をしています。いずれの銘柄もコメの増産などによる恩恵を受けるとの期待から物色されました。
スマート農業推進の可能性も
小泉進次郎農相や石破首相は5日の閣僚会議で、増産に向けた政策として、農業経営の大規模化やスマート農業技術の活用に取り組み、輸出の抜本的拡大を目指す方針を示しました。政府は27年度の水田政策の見直しを目指しており、26年夏にも骨格を固めたい考えとみられます。
スマート農業が推進されれば、農業機械のみならず、AI(人工知能)やロボット、ドローンなどの活躍が見込まれ、関連銘柄のすそ野が広がることも考えられます。コメ価格の上昇に伴い、米の卸売り業者や米菓メーカーなどの関連銘柄が幅広く物色される場面がありましたが(『価格改定で収益確保 「米価高騰」関連株が上昇』)、状況は大きく変化する可能性もあります。コメの生産を中心とする農業を巡る動向は当面ホットなテーマとなりそうです。