株式市場で「大手銀行」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は9.3%と、東証株価指数(TOPIX、4.0%高)を上回りました(8月15日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
米財務長官が日本の金融政策に言及
米財務長官の発言で日銀による利上げ観測が高まり、大手銀行株が買われました。
11日付の日本経済新聞が、米ベッセント財務長官に対するインタビュー記事を掲載。為替報告書で円相場の正常化に向けて日銀は利上げを続けるべきだと記載していることに関して、「日銀が経済のファンダメンタルズやインフレ率、成長率に焦点を当てて金融政策を進めるならば、為替レートは自然と調整されるだろう。日銀の植田総裁と政策委員会は、為替レートではなくインフレ目標の達成を目指しているとみている」と述べました。
13日の米ブルームバーグテレビのインタビューでも「彼らは後手に回っている。利上げをしてインフレの問題をコントロールする必要がある」と主張したことで利上げ期待が高まりました。
内閣府が8月15日に発表した4〜6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値が前期比年率換算で1.0%増と市場予想(0.3%増)を上回りました。5四半期連続のプラスと景気の底堅さが確認されたことも、利上げ観測を高める要因になったとみられます。底堅い景気を背景に融資が伸びるとの見方も追い風になったようです。

ROE目標を12%に引き上げ【三菱UFJFG】
上昇率首位は最大手の「 三菱UFJフィナンシャル・グループ 」です。資本効率を示すROE(自己資本利益率)は2019年度に3.3%と低迷していましたが、業績回復とともに上昇しています。24年に公表した3年間の中期経営計画では最終年度となる2026年度に9%程度、中長期目標として9~10%に設定していましたが、2024年度に9.3%に到達したことで、中長期目標を12%程度へと引き上げました。ROE12%はアメリカの大手金融機関と肩を並べる水準で、主要米銀に迫る収益性を目指すとしており評価が高まりそうです。
8月4日に発表した2025年4~6月期連結決算は、純利益は減益となりましたが、傘下でタイのアユタヤ銀行(KS)が決算期を変更した影響を除くと実質では増益となります。通期の純利益は過去最高を見込んでいます。
法人向け貸出増で大幅増益【りそなHD】
上昇率3位は「 りそなホールディングス 」です。2025年4~6月期連結決算で純利益は大幅に伸びました。堅調な法人向け貸出に加え、住宅ローン実行額も大幅に増加しコア業務純益が増えたほか、政策保有株の削減も寄与しました。
株式売却益などの計上で増益も
「 みずほフィナンシャルグループ 」は7月31日に発表した2025年4~6月期連結決算で、政策保有株式の売却益や与信関係費用の戻入益などにより純利益が微増となりました。2026年3月期の業績予想については、4~6月期の堅調な業績などをふまえて純利益を従来予想から引き上げました。
「 ゆうちょ銀行 」は、2025年4~6月期連結決算で、外債投資信託からの収益減少などにより粗利益は減少したものの、プライベートエクイティファンドなどからの収益増加や株式売却益の増加などが利益を押し上げました。
日銀「主な意見」で年内利上げの可能性を示唆
日銀が8月8日に公表した7月末開催の金融政策決定会合における「主な意見」によれば、ある政策委員は「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」と指摘。「仮に米国経済が想像以上に持ちこたえるようであれば、日本経済への下押しの影響も軽微なものにとどまると思われる。その場合、早ければ年内にも現状の様子見モードが解除できるかもしれない」との意見もありました。
2025年3月にも日銀の利上げ期待の高まりを背景とした長期金利上昇で銀行株を取り上げました(『長期金利が16年ぶりの高水準 「銀行」関連株が上昇』)。4月にトランプ関税が発表された影響で利上げ期待は一時後退しましたが、関税引き下げ合意で再び利上げ機運が高まったと言えそうです。
関税を巡る不透明感が後退したのを勘案すると、日銀が年内に利上げする確度は高いとみられ、銀行株にとって追い風になりそうです。