8月と言えば夏休みです。今月はインデックスの紹介をお休みし、小学生の夏休みの宿題に例えるなら「自由研究」のようなことをしてみました。テーマは「インデックス構成銘柄の入れ替えで何が起きるのか」です。
日経平均高配当株50指数の銘柄定期入れ替え
去る6月13日、日本経済新聞社が「日経平均高配当株50指数」の銘柄定期入れ替えを発表しました。皆さんは、以前お話しした日経平均高配当株50指数を覚えていますか? 日経平均株価を構成する225銘柄から配当利回りが高い50銘柄で構成されるものです。日経平均株価と比較して高リターン・低リスクのなかなか優秀な株式指数です。
採用が除外より1銘柄多いのは、2024年秋の日経平均株価の定期入れ替えで「
DIC
」が除外され、併せて日経平均高配当株50指数からも除外されたためです。「原則として構成銘柄が45銘柄未満となるまではその都度補充はせず、次の定期見直しで50銘柄に戻す」というルールに基づき、補充は次回の定期入れ替え時に実施することが発表されていたという背景があります。
実際の定期入れ替えは6月30日に実施されました。前回の記事で紹介したウエイト上位10銘柄にランクインしていた、商船三井、SOMPOホールディングス、三菱UFJフィナンシャル・グループが除外され、6月末の入れ替え後のウエイト上位10銘柄は以下の通りです。

銘柄入れ替えは資金を動かす
2024年3月に配信した「日経平均の銘柄、どうやって見直される?」の記事にて、銘柄入れ替えにより資金の動きを誘発することを説明しました。日経平均株価の場合、連動するETFや投資信託をかき集めると数十兆円はあるだろうと想像されます。こうした資金が銘柄入れ替え時に採用銘柄を買い、除外銘柄を売りますから、規模の大きな売買が起きるわけです。
では、日経平均高配当株50指数の銘柄入れ替えでは何が起きたかを検証しましょう。当指数に連動する「 NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信 」を例に見てみます。時価総額が3600億円程度とETFとしてはかなり規模が大きいです。他の連動商品として純資産総額が200億円程度の投資信託もあります。日経平均株価に連動する資金に比べれば規模は小さいですが、これらの資金が日経平均高配当株50指数の銘柄入れ替えに伴い、採用銘柄を買い、除外銘柄を売ります。銘柄入れ替えは6月30日でした。この場合、1営業日前の引けで銘柄入れ替えに伴う売買を実施するのが一般的です。2025年の場合は6月27日の引けが入れ替えに伴う取引が実施されています。では、採用銘柄と除外銘柄のチャートと出来高を確認しましょう。採用銘柄からは野村HD(8604)、除外銘柄からは商船三井(9104)を選びました。入替前後がわかるように、5日のチャートを用います。
採用された野村HDは27日の寄りから、前日より高い株価で推移しました。午後2時以降はいったん下げましたが、引けでは出来高を伴い株価が上昇しています。
除外された商船三井は、採用された野村HDとは異なり、6月27日の前場が前日比で軟調でした。後場は上昇しましたが、引けは出来高を伴って株価が下げています。
他の採用・除外銘柄が全く同じような株価の動きになったわけではありませんが、共通しているのは6月27日の引けの出来高が非常に多いことです。これは日経平均高配当株50指数の銘柄定期入れ替えが理由の一つだとみなしてほぼ相違ないでしょう。
予想配当利回りを比較してみた
個人的な印象で恐縮ですが、6月13日に日経平均高配当株50指数の銘柄定期入れ替えが発表されたときやや意外に感じました。この株式指数の採用銘柄は5月末の予想配当利回りランキングで決まります。前年度比で減配を発表した商船三井や無配予想を出した日産自動車が除外されたことは合点がいったのですが、本決算で前年度比増配を発表した三菱UFJフィナンシャル・グループ、SOMPOホールディングス、東京海上HDが除外されたことが意外に思えたのです。
採用銘柄にもやや不思議さを感じた点がありました。決算発表時に前年比で増配を発表した王子HDやジェイテクトは合点がいくとしても、電通Gとヤマハ発動機の予想配当は前年比で同じ、NTN、マツダや野村HDは企業側が予想を出していません。予想配当利回りの算出には日経予想を使いますが、それとて王子HDとジェイテクト以外は前年比で増配になっているわけではありません。個人的に釈然としなかったので、採用・除外銘柄について予想配当利回りを調べてみると腑に落ちました。無配予想で予想配当利回りが0%の日産自動車は例外だとしても、採用銘柄と除外銘柄には予想配当利回りに明らかな差があります。配当利回りでランキングした結果だということがわかります。
採用銘柄について、1株あたり配当の推移も確認してみました。過去と比較すると、おおむね増配傾向が見えます。
予想配当利回りは予想配当÷株価×100で算出します。つまり予想配当が変わらなくても、株価が下落すれば上昇する値です。配当利回りだけを見て高配当株だ! と判断するのではなく、1株あたりの配当金の変化も合わせて確認して投資した方がいいと改めて感じさせる結果でした。一般的に増配は株価上昇に寄与する傾向がある変化です。であれば、増配傾向がある銘柄が採用されるのは、株価指数にもプラスと考えられますね。
王子ホールディングス
電通グループ
NTN
ジェイテクト
マツダ
ヤマハ発動機
野村ホールディングス
日本郵政
日産自動車
三菱UFJフィナンシャル・グループ
SOMPOホールディングス
東京海上ホールディングス
商船三井