バフェット氏の買い増し着々 「総合商社」関連株が上昇

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株式市場で「総合商社」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は2.6%と、東証株価指数(TOPIX、0.8%安)に対して逆行高となりました(8月29日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

三菱商事株、バークシャーの保有比率10%超に

総合商社株が上昇したきっかけは、8月28日に三菱商事が米投資会社バークシャー・ハザウェイによる同社株の保有比率が議決権ベースで10%を超えたと発表したことです。

バークシャーによる総合商社株(三菱商事、伊藤忠商事、三井物産、住友商事、丸紅)への投資については、2020年8月に新規に5%超保有したと開示。22年11月と23年6月に買い増しを公表。そして、今年2月に公表した「株主への手紙」では、これまで各社の株式保有比率を10%未満に抑えるとしてきた方針について、上限を適度に緩めることで各社と合意したと発表。時間をかけて比率を引き上げる可能性を示唆していました(『バフェット氏が買い増し意欲 「総合商社」関連株が上昇)

今回、バークシャーによる三菱商事株の保有比率が節目となる10%超に達したことで、再び関心が高まりました。

議決権10%超えの主要株主に【三菱商事】

上昇率首位は総合商社大手の三菱商事 」です。8月28日に筆頭株主の異動を開示。バークシャーの完全子会社であるナショナル・インデムニティー・カンパニーの議決権の保有比率が従来の9.74%から10.23%に上昇し、初めて10%を超えたと明らかにしました。

金融商品取引法では議決権の10%以上を実質的に保有している株主を「主要株主」と呼び、取締役選任などを決める株主総会で発言権が強まるとされます。これまでの変更報告書では保有目的を「純投資」としており、アクティビスト(物言う株主)のような過度な株主還元の要求などはしないとみられますが、存在感は着実に高まっています。

大手5社に次ぐ存在【豊田通商】

上昇率2位はトヨタ系総合商社の豊田通商で、大手総合商社5社に次ぐ存在です。トヨタグループ向けの収益が全体の2割弱を占めるほか、アフリカで積極的に事業を展開しているのも特徴です。これまではバークシャーの投資対象となっていませんが、もし大手商社5社以外に投資対象を広げるとした場合に有力な投資先候補になりそうです。

株主還元に意欲、買い増しの余地大

兼松は中堅総合商社で、ICT(情報通信技術)ソリューションや電子・デバイス、食料分野などに強みを持っています。24年公表の中期経営計画「integration 1.0」では、27年3月期まで年間配当金の下限を90円とする累進配当、総還元性向30~35%を目標に利益成長に応じて配当金増額の方針を示すなど株主還元に意欲を示しています。

伊藤忠商事は大手総合商社で、3月中旬時点でバークシャー子会社の保有比率が8.53%と大手商社5社の中で一番低いため、買い増し余地が最も大きいとみられます。

丸紅は大手総合商社の一角で、3月中旬時点でバークシャー子会社の保有比率が9.30%と大手商社5社の中で3番目に低いため、買い増し余地は大きいとみられます。

バークシャーと総合商社の協業も

米国株に集中投資するバークシャーの上場株ポートフォリオのなかで、日本の大手総合商社は国外投資として数少ない事例とされます。5月に開催した株主総会において、バフェット氏は保有する大手総合商社株に関して、「今後50年間売却することなど考えないだろう」と語るなど長期保有の意向を示しています。

バフェット氏は5大商社への投資を明らかにした際の声明で、「日本の商社は、世界中で合弁会社をつくっている」と指摘。傘下で保険やエネルギーなど多様な事業を展開しているバークシャーとの協業にも期待感を示していました。

バークシャーが総合商社の「主要株主」となることで協業が実現する可能性も考えられます。商社株からは目を離せない展開が続きそうです。