株式市場で「百貨店」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は7.2%と、東証株価指数(TOPIX、1.0%高)を大幅に上回りました(9月5日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
免税売上高に改善の兆し
百貨店関連株が上昇したきっかけは、月次売上高の発表です。8月の国内売上高(前年比)は、軒並みプラスでした。
訪日外国人(インバウンド)の免税売上高は、2024年8~9月にかけて米景気懸念と日銀の追加利上げに端を発した急速な円高・ドル安の進行や地震警報などにより、伸びが大きく鈍化。2025年に入っても、日本百貨店協会発表の「免税売上高・来店動向」(既存店ベース)では大幅な落ち込みが続いていました。
急速な円高進行に伴い、高額ブランド商品などの相対的な割安感が薄れたことで、買いが手控えられたことがインバウンド売上減の大きな原因と考えられます。
円相場が140円台後半と前年と同水準となり、インバウンド売上の前年比のハードルが下がることで免税店売上高の改善を後押ししそうです。

7ヵ月ぶりにプラス転換【松屋】
上昇率首位は老舗百貨店の「 松屋 」です。同社が9月1日に発表した8月の月次売上速報で、主力の銀座店の売上高が前年同月比8.5%増と7月実績(26.3%減)から大幅に回復し、7ヵ月ぶりのプラスとなりました。
銀座店の8月の免税売上高は約9.4%減ながら、7月実績(約42%減)から改善したほか、免税を除いた国内客による売上高は、販促効果などによって約25.3%増と7月実績(7%減)からプラスに転換したのも寄与しました。
9月以降は、免税売上高についても、さらなる復調が期待できるとの見通しを示しています。
特殊要因を除けば回復顕著【三越伊勢丹】
上昇率2位は大手百貨店の「 三越伊勢丹ホールディングス 」です。9月1日に発表した8月の国内百貨店事業の売上速報で、三越伊勢丹合計は前年同月比0.9%減と4ヵ月連続の減少ながら、7月実績(5.2%減)から改善しました。
三越伊勢丹の店舗別では、三越日本橋本店、三越銀座店、伊勢丹立川店、伊勢丹浦和店がプラスに転じました。主力の伊勢丹新宿本店は7.9%減と数値上の低迷が続いてますが、得意先招待イベント「丹青会」の会期ずれ(24年は8月30日~9月1日開催、25年は9月5~7日開催)の影響を除くと実質6.0%増、三越伊勢丹合計では実質6.5%増と回復が顕著です。
インバウンド顧客に改善の兆候、万博効果も
関西地盤の「 エイチ・ツー・オー リテイリング 」が9月1日に発表した8月度の売上速報は全店売上高が前年同月比5.0%増となりました。阪神梅田本店が18.3%増と7月実績(6.6%増)から伸びが加速したうえ、阪急本店は大型改装に伴う売場閉鎖のマイナスの影響を克服してプラスへ転じました。
大手百貨店の「 高島屋 」が9月1日に発表した8月の売上速報で国内百貨店売上高は前年同月比6.6%増と、7月実績(6.7%減)からプラスに転じました。免税売上高が9.8%減で7月実績(33.0%減)から改善しました。新規催事の開催で国内顧客の来店数が増加したほか、インバウンド顧客は化粧品や婦人服、スポーツ用品などがプラスに転じるなど改善の兆候がみられます。
近鉄グループの「 近鉄百貨店 」が9月1日に発表した8月の売上速報は、全店合計が前年同月比12.1%増となり、7月実績(3.2%増)から伸びが加速しました。大阪・関西万博オフィシャルストアの好調などが寄与しました。
実質賃金が7カ月ぶりのプラス、個人の消費意欲高まるか
厚生労働省が9月5日に発表した7月の毎月勤労統計調査によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比0.5%増と、7ヵ月ぶりのプラスになりました。今年の春闘で基本給を底上げするベースアップと定期昇給を合わせた賃上げ率が平均5.25%と2年連続で5%超となったうえ、ボーナスなどの増加が反映されました。
百貨店各社の8月売上高はインバウンドによる免税売上高の減少率が縮小するとともに、免税売上高の落ち込みを国内客による売上高の伸びが補いました。今後も実質賃金がプラスで推移すれば個人の消費意欲が高まるとみられ、百貨店各社が「インバウンド頼み」(『インバウンド売上高過去最高 「百貨店」関連株が上昇』)から脱却できるかどうかに注目です。