天ぷら油で空を飛ぶ 国産SAF(サフ)でCO2削減へ

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他の乗り物に比べ二酸化炭素(CO2)の排出量が多いといわれる航空機。環境意識の高まりを背景に、CO2の削減は大きな課題です。

この解決策として注目されているのが、「SAF(サフ)」と呼ばれるジェット燃料に代わる次世代燃料です。国産SAFを利用した航空機の運航を進める日本航空を中心に各社の取り組みをご紹介します。

JAL、国産SAFで初フライト

日本航空(JAL) 」は2025年5月、国産SAFを混合した燃料を初めて旅客便に供給し、運航したと発表しました。これは「 日揮ホールディングス 」や「 コスモエネルギーホールディングス 」傘下のコスモ石油などが量産化に向け開発を進めてきたものです。

SAF(サフ)とは、「Sustainable Aviation Fuel(持続可能な航空燃料)」の略称で、天ぷらをはじめとした揚げ物の料理に用いられた使用後の植物油(廃食油)などを原料に製造された航空燃料を指します。今回、民間企業・自治体によるSAFの導入促進に向けた取り組み「Fry to Fly Project」が実を結び、SAFの量産化にこぎつけたものです。

航空業界では世界的にCO2削減への取り組みが加速し、国際民間航空機関(ICAO)では国際線の航空機によるCO2排出量を2050年までに実質ゼロとする目標を掲げています。

SAFも燃焼時にCO2を排出しますが、廃食油の主な原料となる植物は光合成を行う際に大気中のCO2を吸収する特性があります。この自然の循環を活かすことで全体のCO2排出量を増やすことなく航空機を利用できるというのがSAFの特徴です。SAFは従来の航空燃料と同じように使えるため、既存の機体やインフラを活用できるのもメリットです。

JALでは30年度までに航空燃料の10%をSAFに置き換えるという目標を掲げており、SAFの調達だけでなく全国の小売企業などと連携して廃食油の回収にも主体的に取り組んでいます。

SAFの主な利点
・航空機の二酸化炭素(CO2)排出量の削減に寄与
・既存のインフラが使える
・国産の原料で作れる

SAFの主な課題
・製造コストの低下

相次ぐSAFの製造設備計画

コスモ石油、日揮HD、レボインターナショナルの3社が設立した合同会社SAFFAIRE SKY ENERGY(サファイア スカイ エナジー)は3月、国内第一号となる国産SAF製造設備の竣工式を開催したと発表しました。いよいよ航空燃料の地産地消が進もうとしています。

生産を担うコスモ石油では、まず年間3万キロリットルのSAF供給を目指し、30年をめどに30万キロリットルに生産を拡大する計画です。すでにJALや全日本空輸(ANA)、米デルタ航空、独国際物流大手DHLエクスプレスなどと供給契約を締結しています。

今回のプロジェクトで製造設備の設計などを担当する日揮HDは、単なる設計・建設だけでなく国産SAFの普及啓発活動も主導するなど、SAFの商機拡大に積極的に取り組んでいます。

他の企業でもSAF製造設備の計画に向けた取り組みが進められています。

ENEOSホールディングス 」傘下のENEOSは「 三菱商事 」と和歌山製造所でSAF製造の事業化調査を進め、2月にSAF製造の基本設計を実施すると発表しました。廃食油などを主な原料として使う予定で、28年度以降に年間約40万キロリットルのSAFなどの製造を検討しています。

出光興産 」もSAF製造に向けて山口県の徳山事業所での事業化調査を終え、28年度から年間25万キロリットルのSAF生産を目指しています。

商用化にこぎつけたSAFには製造コストの高さといった課題も残っていますが、CO2排出削減の切り札として大きな役割を果たすかもしれません。