再評価が進む! 原子力発電を手がける企業

テーマで横ぐし!世界の会社を見てみよう/ 日興フロッギー編集部スタジヲ タケウマ

旬な投資テーマをもとに、関連する国内外の企業をまとめて紹介する連載がスタート! 「そんな企業あるんだ!」と初めて目にする海外企業でも、なじみのある日本企業と合わせて知ることで、グッと身近に感じられるはず。初回のテーマは「原子力発電」です。日本でなじみ深いのが東京電力や関西電力といった企業ですが、海外では原発関連にどのような企業があるのか、ご紹介していきます。

電力需要の拡大を背景に原子力発電の再評価が進む

AIの普及や輸送・建物の電動化による電力需要の拡大を背景に、ベースロード電源として原子力発電が注目されています。

カエル先生の一言

ベースロード電源とは、天候・時間帯を問わず安定的に発電できる電源のこと。原子力のほか、石炭火力や水力発電などが該当します。

日本では原発の再稼働や新設に向けた取り組み、米国ではデータセンター向け電力の需要拡大やSMR(小型モジュール炉)の開発などの動きもあり、世界中で原子力発電に対する再評価が進んでいます。

【日本】再稼働や新設の動きも

日本では、2011年の東日本大震災後に全ての原発の稼働が停止しましたが、徐々に再稼働が進んでいます。2025年8月時点で再稼働した原発は14基、新規制基準をクリアしたと認められる「設置変更許可」を受けた原発は4基、「審査中」の原発は8基となっています。

東京電力HD 」は、世界最大級の原発である柏崎刈羽原発の6~7号基で設置変更許可を受けていて、再稼働に向けて調整を進めています。同社によると、1基稼働させれば1000億円の収支改善効果が見込まれるとのことです。

また、2025年2月に閣議決定された「エネルギー基本計画」では、将来再生可能エネルギーを最大の電源とする一方で、原子力発電も最大限活用していくことが盛り込まれました。同計画によると、2040年時点で電源構成に占める原発の割合は2割程度が目安ですが、これをまかなうには既存の原発をほぼすべて運転することが必要です。ただ、既存の原発はほとんどが運転開始から30年以上経過していて、中長期的には老朽化で減少が見込まれるため、新たに原発を建設する動きも進みそうです。

関西電力 」は2025年7月、福井県の美浜原子力発電所で原発の建て替えに向けた地質調査などを再開すると発表しました。調査開始から稼働までは20年程度かかるとされていますが、今後原発の新設は重要になっていくと見られます。

【米国】アマゾンやグーグルもSMRに注目

米国では、AI活用に伴うデータセンターの電力需要が急増し、原子力発電が注目されています。米国で最大の原子力発電容量を誇るコンステレーション・エナジーは、2028年にスリーマイル島原発の再稼働を目指していて、マイクロソフトはそこから発電全量を20年間購入する契約を結びました。

また、小型で設置場所の柔軟性が高いSMRの導入に向けた動きも進んでいます。アマゾン・ドット・コムアルファベット傘下のグーグルはSMRからの電力供給に向けて電力会社と契約を締結。商用導入されるのは2030年以降になると見られますが、小型で安全性を確保しやすいSMRへの注目度は高まりそうです。

カエル先生の一言

SMR(小型モジュール炉)は、次世代の原子力発電の1つ。従来の大型原子炉と異なり、格納容器や蒸気発電設備などをモジュール部品として工場で量産でき、コストや建設期間を大幅に抑えることができます。また出力も比較的小さく、仮に事故が起きた際にも外部電力なしで自然に炉心の冷却が可能になるなど、安全性も高まると期待されています。

電力会社や資本財メーカーに成長期待

原発の再稼働や新設による恩恵が期待できる電力会社は、日本では東京電力HDや関西電力、米国では再生可能エネルギーのリーダー企業であり、原発も運営するネクステラ・エナジーなどが挙げられます。

また、原発関連設備を提供する資本財メーカーも原発需要の高まりや新技術の普及などにより、事業成長が期待されます。日本では原発の開発や製造、運転、保守を一貫して手掛ける「 三菱重工業 」。米国では原子炉やSMRを手掛けるGEベルノバや、英国ではロールス・ロイス・ホールディングスが挙げられます。

GEベルノバはゼネラル・エレクトリックが2社に分割して2024年3月に上場した電力会社。ロールス・ロイス・ホールディングスは、BMW傘下で自動車を手がけるロールス・ロイスとは別会社で、航空エンジンの分野で世界的な地位を築き、最新の小型モジュール炉にも取り組んでいます。石油や石炭に比べてCO2排出量が格段に少なく、大気汚染・酸性雨の原因となる硫黄酸化物や窒素酸化物も出さないといった特徴から、脱炭素社会の実現を目指す上でも注目されている原子力発電。今後も各国関連企業の動向はチェックしておきたいところです。

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