米中の生産強化は追い風 「半導体製造装置」関連株が上昇

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株式市場で「半導体製造装置」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は5.3%と、東証株価指数(TOPIX、横ばい)を大幅に上回りました(9月19日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

半導体関連で材料が相次ぐ

半導体製造装置関連株が買われた背景は需要拡大への思惑です。9月の初旬から中旬にかけてイベントや材料が相次ぎました。

9月10~12日、半導体業界で世界最大級の国際展示会である「セミコン台湾」が開催。

15日には、中国国家市場監督管理総局が2020年に行われたエヌビディアによるイスラエル企業の買収を独占禁止法違反と公表。

続いて17日、中国国家インターネット情報弁公室がネット通販のアリババ集団や動画投稿アプリのバイトダンスなど自国のテクノロジー大手企業に対して、エヌビディアの全てのAI(人工知能)半導体の購入を禁止し、既存の注文をキャンセルするよう指示したと英紙フィナンシャル・タイムズが報道。

そして18日には、エヌビディアが経営再建中のインテルに対して50億ドルを出資することで合意したと発表しました。

中国当局によるエヌビディアに対する処置は、中国の米半導体依存からの脱却姿勢が窺えます。また、エヌビディアによるインテルへの出資は救済色が強いとみられています。

いずれも、米中における半導体生産の強化を通じて、半導体製造装置の需要が拡大するとの思惑を誘いました。

主要顧客が中国半導体メーカー【KOKUSAI】

上昇率首位は半導体製造装置のKOKUSAI ELECTRIC 」です。半導体製造の前工程における成膜工程に注力しており、バッチ成膜装置とトリートメント(膜質改善)装置で世界トップシェアを誇ります。

2025年3月期通期の売上高にあたる連結売上収益(国際会計基準)に占める比率は、中国の半導体メーカーCXMTが20%、韓国サムスン電子と台湾TSMCが各13%と、上位3社で全体の約半分を占めました。

主要顧客の投資計画変更が業績に大きな影響を及ぼす可能性があり、米国依存脱却に伴う中国によるサプライチェーン(供給網)構築が恩恵になるとの見方が広がりました。

下方修正要因に改善の兆し【東京エレクトロン】

上昇率2位は半導体製造装置最大手の東京エレクトロンです。2025年4~6月期決算発表時に、半導体メーカーによる設備投資計画の調整を踏まえて、2026年3月期通期業績予想の下方修正を余儀なくされました。

具体的なメーカー名の言及はありませんでしたが、業績不振に陥っているインテルの影響が大きかったのではないかとみられていました。インテルは、最先端半導体の量産化で台湾積体電路製造(TSMC)などに出遅れ業績低迷が続いており、エヌビディアから調達した資金で設備投資に踏み切れば、業績回復に寄与すると期待されそうです。

中国需要で業績好調、インテル比率3割の企業も

東京精密は半導体製造装置と計測機器の2事業を展開し、半導体チップの良品・不良品を検査するウェーハプロービングマシンで世界トップレベルのシェアを誇っています。2025年4~6月期決算は、半導体デバイスや電子部品の国産化を進める中国需要を背景に増収増益となるなど業績好調です。

日本マイクロニクスは半導体検査器具の「プローブカード」で世界トップのシェアを誇っています。既存工場の一部設備に不具合が生じた影響で、2025年1~9月期業績見通しを下方修正しましたが、すでに再発防止策も講じており影響は限定的とみられます。

レーザーテックは最先端の光応用技術を用いた半導体関連検査装置が主力で、インテルは売上高全体の約3割を占める主要取引先となっており、インテルの経営再建はポジティブ要因となります。

中国の半導体国産化推進、日本企業には追い風か

半導体を巡る米中間の対立が激化するなか、中国は米国に依存しない国産中心のサプライチェーン構築を急ぐ姿勢を強めており、エヌビディア製品購入の禁止もその流れの一環とみられています。

中国がすべて自給自足できるとなれば日本企業にとっても脅威となりそうです。ただ、日本が世界的に高いシェアを持つ半導体材料、製造装置などの分野において、中国がすぐに自給自足を達成するハードルは高いとみられます。中国の国産化推進は、日本の半導体製造装置関連企業にとってしばらく追い風になりそうです。

半導体製造装置関連株は海外の半導体関連企業の好調な業績発表を受け、業績拡大期待から物色される場面が目立ちます(『ホンハイ・サムスン好決算で期待 「半導体製造装置」関連株が上昇)。今後は中国のサプライチェーン構築に向けた動向にも注目していきたいですね。