米ボーイング社の大型受注が追い風 「航空機部品」関連株が上昇

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株式市場で「航空機部品」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は3.6%と、東証株価指数(TOPIX、0.9%高)を大きく上回りました(9月26日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

中国との交渉は「終盤の数日か数週間に入ったとの考え」と伝わる

航空機部品の関連株が上昇したきっかけは、米航空機大手ボーイングの大型契約に関する報道です。

23日、中国を訪問している米超党派の下院議員団が、中国指導部との会談で、米ボーイングの航空機購入に関する大型契約について協議したと報道されました。

同報道によると、デービッド・パデュー駐中国米大使は交渉が終盤の数日か数週間に入ったとの考えを示したようです。8月下旬からボーイングが最大500機の航空機の販売契約の最終合意に向け交渉中だと伝わっていましたが、今回の協議で進展があったとみられます。

ボーイングの中国向け販売が決まれば、ボーイングに航空機部品を供給している企業にとっては追い風になるとの見方から物色を集めました。

航空エンジンの開発や整備【IHI】

上昇率首位のIHI 」は民間や防衛用などの航空機エンジンを手掛けています。民間航空エンジンでは大型から小型まで国際共同開発に参画し、エンジンモジュールや部品を開発、供給しています。ボーイング向けには米ゼネラルエレクトリックを中心とする開発プログラムに参画し、「787」や「747-8」、「777」向けのターボエンジンを手掛けています。

ボーイングの中国販売が再開すれば同社の業績拡大が期待できます。エンジンの整備も手掛けており、アジアでの主要な整備拠点として評価されているようです。ボーイング向けの航空エンジンの整備は手掛けていないようですが、中国に販売した機体の整備を受注できれば上振れが見込めそうです。

電源システムや地上支援機材を供給【シンフォニア テクノロジー】

上昇率2位のシンフォニア テクノロジーは国内で唯一の航空機用電源システムメーカーです。民間航空機向けには発電システムや配電制御システム、電動駆動装置システムなどの電装品を提供しています。子会社のシンフォニアエンジニアリングは航空機の地上支援機材も手掛けており、中国へのボーイング機体の販売で、パッセンジャーステップやベルトローダーなどの地上支援機材の需要も高まれば収益拡大につながりそうです。

航空機部品を手掛ける企業に追い風か

川崎重工業はボーイング777や787の胴体や主脚格納部などを手掛けています。

新明和工業はボーイング777向けには翼と胴体の継ぎ目を覆う翼胴フェアリング、787向けには主翼の骨組みであるスパーを納めています。

三菱重工業はボーイング787の複合材主翼の設計や製造を担当しているほか、777など他の機体の部品も手掛けています。

いずれの企業も航空機部品を手掛けており、ボーイングの中国での大型契約が成立すれば成長に追い風となるでしょう。

中国以外でも航空機の受注が相次ぐ

25日にはボーイングが中国のスーパルナ航空に777型貨物機を1機納入し、中国の航空会社6社で貨物機約60機がすでに運行していると伝わっています。米中の貿易摩擦によってボーイングの販売が停滞していたため、大型受注が決まれば日米の株式相場にも追い風となりそうです。

中国以外でもボーイング機の受注発表が相次いでいます。23日にはウズベキスタン航空が787を最大22機の購入契約を締結したと発表したほか、26日にはノルウェー格安航空会社(LCC)のノルウェー・エアシャトルが737MAX8を30機追加発注、トルコ航空が787を最大75機、737MAXを最大150機発注したと発表しました。

航空機は米国にとって大きな輸出品であり、トランプ米大統領の関税交渉の取引材料の1つになっている側面もあります。航空機部品関連株はコロナ禍からの生産回復局面で、半年間にわたって大きく上昇したこともありました(『2022年上半期に上昇したテーマ 「航空機部品」関連)

日本企業にとってもボーイングの販売増加は追い風となるため、日々のニュースで米国の関税交渉やボーイングの受注動向などをチェックして、投資判断に役立てたいですね。