株式市場で「生成AI」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は9.1%と、東証株価指数(TOPIX、1.8%下落)に対して逆行高となりました(10月3日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
AIや半導体関連のニュースが相次ぐ
生成AI関連株が買われたきっかけは、半導体やAIを巡りニュースが相次いだことや、AI需要を背景に関連銘柄に対して証券会社からポジティブな見方が示されたことなどです。
9月30日、半導体メモリー大手のキオクシアホールディングスと米サンディスクコーポレーションが、岩手県北上工場の稼働開始を公表。
また、10月1日に、対話型AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」を運営するオープンAIが、韓国サムスン電子やSKハイニックスからAI向けデータセンターに使う半導体メモリーであるDRAMを調達すると発表。
同2日には、米インテルが受託生産(ファウンドリー)の顧客として米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)を加える方向で協議していると伝わりました。
それぞれのニュースや動きは生成AI需要の高まりとそれに伴う半導体生産の強化を示唆しており、関連銘柄が軒並み高となりました。

AI需要拡大を見込み新工場稼働【キオクシアHD】
上昇率首位の「 キオクシアHD 」は、スマートフォンやパソコン、データセンターなどで使われる長期記憶向けのNAND型フラッシュメモリーの生産を手掛けています。
同社は、米サンディスクコーポレーションと共同で、四日市工場(三重県四日市市)と北上工場(岩手県北上市)の2工場を運営。北上工場の稼働開始により、中長期でAI向けの需要拡大を見込み、第8世代となる最先端メモリーの量産を開始して2026年前半にも本格的な出荷を開始する方針です。
インテル向けに供給拡大の思惑【SUMCO】
上昇率2位はシリコンウエハー大手の「 SUMCO 」です。インテルが顧客にAMDの追加を検討する報道を受けて、同社がインテル向けにシリコンウエハーを供給しているとみられることが好感されました。インテルは米政府、ソフトバンクグループ、エヌビディアなどが相次いで出資したことで経営再建期待が高まっており、今回の報道はその延長線上にあるとみられます。
アナリスト高評価、オープンAIと提携
「 日東紡績 」はガラス繊維大手で特殊組成の「スペシャルガラス」をデータセンター向けに供給しています。証券会社から、生成AI向け半導体パッケージ需要などを背景にスペシャルガラスが伸び、中期的な業績拡大が続くとの見方が示されました。
「 ディスコ 」は証券会社がHBM(AIのデータ高速処理に不可欠な広帯域メモリー)などのAI関連需要により、後工程が複雑化することで数量以上の業績拡大を遂げていると指摘。
「 日立製作所 」は2日にオープンAIと戦略的パートナーシップを締結し、AI向けデータセンターの電力関連技術などで提携すると発表しました。日立はデータセンターの省エネ化につながる技術を保有しており、オープンAIは日立の技術を用いてコストを抑えながら電力を安定確保し生成AIの開発を急ぐ方針です。
動画生成AIアプリが爆発的な人気
AIを巡っては9月23日、米オープンAIがソフトバンクグループや米オラクルと進める米国のAIインフラ整備計画「スターゲート」について、南部テキサス州など5カ所でデータセンターを新設すると発表しました。
着工済みの拠点を含む投資額は今後3年で4000億ドルになる見通しです。年初にトランプ米大統領との共同会見において4年で5000億ドルを投じる計画を発表した後、立地の選定などが遅れ不透明感も漂っていましたが、今回の発表で計画が本格的に始動したとの見方が広がっています。年初に『スターゲート』事業で脚光として「データセンター」関連株を取り上げましたが、理想買いから現実買いの局面に移行しつつあると言えそうです(『『スターゲート』事業で脚光 「データセンター」関連株が上昇』)。
また、同社は、9月30日に動画・音声生成モデルの最新版「Sora 2」を発表。2024年2月にリリースされた従来モデルの「Sora」が「GPT-1」だとするなら、「Sora 2」は「GPT-3.5」に相当するといいます。物理法則に正確で制御性において飛躍的に進歩したほか、汎用の動画音声生成システムとしてリアルな背景音やスピーチ、効果音なども作成可能となったことが話題となりました。
「Sora 2」を搭載したiOS向けの動画生成AIアプリ「Sora」は米国・カナダ限定の招待制にもかかわらずリリース直後から爆発的な人気を集め、10月3日には米App Storeの総合ランキングで首位に立ちました。
今後も革新的な生成AIサービスが相次いで登場するとみられ、生成AI関連銘柄に対する期待感も高まりそうです。関連銘柄は折に触れて物色される場面がありそうです。