マーケットの「温度感」がわかる連載「カエル先生の株式相場プレイバック」。今回は、前月に続き最高値を更新した日本株市場の動きとその背景、今後のポイントなどについて解説します。
9月の日本株市場は、日経平均が初の4万5000円を突破、前月に続き最高値を更新しました。石破首相の辞意表明による次期政権への期待、米利下げ観測と利下げへの踏切などから、投資マネーのリスク許容度が更に高まり、株価上昇を後押ししました。
9月の日本株市場
9月30日の日経平均株価は4万4932円、前月末比2214円高でした。
月初は、AI(人工知能)半導体の開発競争を巡り米中間で競争が激化するとの懸念や、米金利上昇を嫌気し米株市場で半導体関連株が売られる流れを受け軟調に推移。日経平均は4万2000円を下回る場面がありました。
その後、米株市場でハイテク株が買われる動きや利下げ観測によるS&P500の最高値更新を受け日本株も上昇。8日には、前日に石破首相が辞意を表明したことを受け次期政権では財政拡張的な政策を執るとの思惑から大幅高。日経平均は4万3000円台を回復しました。
中旬になると、米国で労働市場の減速を示した米雇用統計に続いて、PPI(卸売物価指数)やCPI(消費者物価指数)が市場予想を下回る、あるいは市場予想に沿った数値となり景気の落ち着きを示唆。
これを受けて米株市場は、FOMC(連邦公開市場委員会)での利下げ再開を織り込み、NYダウやS&P500が連日の最高値を更新。日本株市場も、その流れを受け日経平均は4営業日連続で最高値を更新し、18日には4万5000円を突破しました。
次期政権への政策期待が株価を押し上げ
9月7日に石破首相が辞意を表明し、週明け8日から週末にかけて日経平均は4万3000円台、4万4000円台と高値を更新、前週末から4.1%上昇しました。
その間の個別銘柄の動きを、物色の流れを見る「投資テーマ」で見てみましょう。半導体株や値嵩株が上昇する中、「核融合発電」関連株なども日経平均の上昇率を上回りました。
助川電気工業
浜松ホトニクス
三菱重工業
フジクラ
三菱電機
核融合発電は、原子核同士を融合させ、その際に発生するエネルギーを利用した発電方法です。ウランやプルトニウムを使用する従来の原子力発電とは異なり、燃料となる重水素や三重水素は海水中に豊富に存在するうえ、放射能漏れを伴う深刻な事故のリスクが低く、安全性が高いとされています。
核融合発電に関しては、高市早苗前経済安全保障相が国家戦略の策定に関わり、実用化に向けた政策推進の旗振り役を担っています。
昨年の総裁選の決選投票で石破首相と接戦を演じた高市氏は、石破首相辞意表明の前後に実施された「次の首相」を問う世論調査でも他候補を抑えてトップに立つ例が目立ちます。高市氏が自民党総裁に選ばれれば、核融合発電の実現が国策として加速していくという期待から関連銘柄が物色されました(詳細は『「夢のエネルギー」にスポットライト 「核融合発電」関連株が上昇』)。
自民党総裁選は、9月22日の告示時点で、5人の候補者が名乗りを挙げ、10月4日(土)に投開票される予定です。投開票結果により物色の流れに改めて動きが出ることが想定されます。
株式市場の視線は来年度の業績動向にシフト
想定通り米利下げが行われ、突然だった日銀による保有ETF(上場投資信託)の市場売却の発表も消化。目先の重要イベントである自民党総裁選も終えると日本株市場の視線は、再びファンダメンタルズ(企業業績)にシフトする場面が想定されます。
10月は中旬から2月期、下旬から3月期決算企業の中間決算発表がスタートする予定。1年も半分が経過したことで、今年度とともに来年度の業績動向が気になってくるところです。
図表は、企業の経常利益の伸び率を、NIKKO250(市場全体)、製造業、非製造業ごとに、2024年度実績、2025年度予想、2026年度予想で見たものです。
「NIKKO250」はSMBC日興証券株式調査部が業績予想を集計するために選定した250銘柄です。幅広い代表的な大型株を中心としており、全上場銘柄の時価総額の約75%をカバーするユニバースです。

2025年度は、日米関税交渉が決着したものの、関税賦課の影響により減速感が残り、経常利益は低い伸び率にとどまりそうです。一方、2026年度には市場全体、製造業ともに2ケタの経常利益の伸び率が予想されます。AI関連機器の需要拡大が期待される電気機器や、2025年度は冴えなかったものの回復が見込まれる輸送用機器が業績を牽引する見込みであることなどが背景です。
決算発表などを通じ、今年度の進捗度合いが順調であることや、来年度業績の増益に対する確度が高まる場面では、日本株の更なる上昇が期待されます。
米国マクロ環境の好転の恩恵が期待される銘柄
米国では、利下げにより設備投資需要の回復をドライバーに景気の再加速が期待されます。以下では、来期業績が今期予想比で堅調で米国売上高比率の高い米国関連銘柄をご紹介します。
米国のマクロ環境の好転に伴い、次第に業績見通しが切り上がっていくことが期待される銘柄として注目してみてはいかがでしょうか。
やまびこ
大阪チタニウムテクノロジーズ
協和キリン
小松製作所
オリンパス
東芝テック
エーザイ
タダノ
太平洋セメント
カゴメ