AIロボット実用期待 「産業用ロボット」関連株が上昇

直近の値動きから見るテーマ株/ QUICK

株式市場で「産業用ロボット」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は10.2%と、東証株価指数(TOPIX、2.2%高)を上回りました(10月10日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

2つのニュースで物色進む

産業用ロボット関連株が上昇したきっかけは、企業の決算と買収に関する発表です。

10月3日、安川電機が26年2月期の純利益を従来の330億円(前期比42%減)から370億円(同35%減)に上方修正。

ロボット事業を中心に足元の需要が改善し、売上高にあたる売上収益や営業利益も従来予想から上振れする見込みです。同社のほか、産業用ロボットを手掛ける銘柄の一角にも好業績が期待できるとして、物色が広がりました。

8日には、ソフトバンクグループ(SBG)が、スイス重電大手ABBの産業用ロボット事業の買収を発表。

ABBは安川電機やファナック、ドイツのKUKAと並ぶ産業用ロボットの世界4強の一角です。孫正義会長兼社長は「ASI(人工超知能)とロボティクスを融合させることで、人類の未来を切り拓く画期的な進化を実現していく」と宣言しています。

米国や中国を中心に自律的にロボットを制御する「フィジカルAI」を活用したロボット開発が加速しています。国内でも産業分野などでAIロボットの市場拡大が進むとの期待感も関連銘柄への買いを誘いました。

エヌビディアとも協業【安川電機】

上昇率首位の安川電機 」は米半導体大手のエヌビディアや富士通と協業し、フィジカルAIを搭載したロボットの開発を目指すと伝わっています。同社はエヌビディアの画像処理半導体(GPU)を搭載したロボットを開発した実績があります。ロボット事業は3~8月期の売上収益が上期として過去最高を更新するなど足元の業績も堅調です。AIロボットが実現すれば、一段の成長が期待できそうです。

ヒト型ロボットに注目【ハーモニック・ドライブ・システムズ】

2位のハーモニック・ドライブ・システムズ 」は産業用ロボットに使用される精密減速機などを製造・販売しています。新たな成長ドライバーとして、AIロボットやヒト型ロボット市場に注力する構えです。AIロボットの開発が過熱する米中にも進出しており、将来的な業績拡大が見込まれます。

多様な関連銘柄がランクイン

ファナックは産業用ロボットのほか工作機械の頭脳となる数値制御(NC)装置に強く、NC装置は世界トップのシェアを誇ります。

SMCは産業用ロボット向けの製品を手掛け、配管や方向制御などさまざまな用途で使われています。

THKは物流現場などで使われるピッキング向けロボットハンドや搬送ロボットなどを手掛けています。

日本企業が米中に食い込めるか

AIを活用し、人間の操作なしにリアルタイムで学習・行動する汎用ロボットの市場規模は40年までに約3700億ドルと、さらなる拡大が見込まれています。日本はAIロボットの開発で米中に遅れを取っている一方、産業用ロボットではいまだに約7割のシェアを誇ります。

安川電機の事例のように、エヌビディアなど世界トップクラスのAI企業との協業などで、先行する海外企業の「頭脳」を搭載した日本の産業用ロボットが世界で活躍する日が来るかもしれません。今後の戦略次第で産業用ロボット関連銘柄には一段の成長が期待できそうです。