海外インフラ需要を取り込み 「建設機械」関連株が上昇

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株式市場で「建設機械」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は1.5%と、東証株価指数(TOPIX、2.7%安)に対して逆行高となりました(10月17日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

海外好調で業績は上向きへ

建設機械関連株が買われたきっかけは、収益回復を示す企業の決算や業績予想修正の発表です。

技研製作所が10日に発表した2025年8月期連結決算は前年同期比で減収減益だったものの、同時に示した26年8月期の業績予想は増収増益の見込みとなりました。同日には、竹内製作所も26年2月期の連結業績予想の修正を発表。減収減益見通しから一転して増収増益になる見込みを示しました。

両社の見通しに共通するのは堅調な海外建設市場です。米国関税政策による影響の不透明感が次第に払拭されつつあるうえ、インフラ投資の拡大を見込む欧州やアジア市場などでの販売が各社の収益を下支えする見込みです。

海外市場がけん引して収益が回復するとの期待が、建設機械関連株への物色に波及したとみられます。

アジア圏で事業拡大を加速【技研製作所】

上昇率首位の技研製作所 」は振動や騒音を発生させずに高精度に杭を地中に押し込む「圧入工法」に強みを持つ会社です。この技術を世界に先駆けて実用化した圧入機を製造販売し、世界中に展開しています。

16日には、圧入機に回転機能を付加した「ジャイロパイラー」を用いる「ジャイロプレス工法」がシンガポールで継続的に採用されていると発表しました。現地の会員企業にノウハウを提供しながら案件獲得や製品販売を手掛ける「GTOSS(ジトス)」システムを活用しながら、アジア圏での事業拡大の加速を目指しています。

北米や欧州でも堅調な売り上げが見込まれ、26年8月期業績予想の海外の建設機械事業の売上高は過去最高水準だった前期を上回るとしています。

北米での販売が復調【竹内製作所】

上昇率2位の竹内製作所は世界中で生産・販売されている「ミニショベル」を初めて開発した建機の完成品メーカーです。同社の「ミニショベル」はEU(欧州連合)で第2位、北米で第5位のシェアを占めています。

10日には、26年2月期の業績予想を上方修正しました。米関税政策の影響を受け、25年3~8月期の北米での販売台数は落ち込んだものの、レンタル向けから販売が回復した米国建設市場は堅調に推移する見通しで、関税コストの価格を転嫁しても25年9~26年2月期の販売台数は前回予想を上回る見込みとしています。

顧客から製品仕様やオプションについての指定を受けてから生産する「受注生産方式」を強みとし、世界の幅広い顧客から支持を受けています。

光る分野横断の技術力

日本車輌製造は杭打機などの建機や新幹線などの鉄道車利用を手掛ける老舗企業です。特に大型杭打機「三点式パイルドライバ」は国内でのトップシェアを誇っています。10日、JR東海から新幹線車両「N700S」計192両の生産を受注したと発表しました。鉄道車両製造で培った技術力を建機などの製造にも生かしています。

クボタはコンバインや田植え機などの農業機械の分野でも世界有数のシェアを誇る企業です。建機分野では、ミニバックホーなどの小型建機に特化しています。8日にノーベル化学賞を受賞した北川進特別教授が関わる京都大学発ベンチャー「Atomis(アトミス)」と協業関係にあることから注目を集めました。

メタルアートは金属素材の加工に強みを持ち、建機や自動車などの金属部品を手掛けています。

いずれの企業も多彩な分野を横断した確かな技術力を持っており、海外市場での需要の高まりが成長に追い風となりそうです。

インフラ投資急務で26年度海外需要は『増加』見通し企業増

調査会社のIMARCは建機の世界市場について、24年の2500億ドルから33年には3499億ドルに拡大すると予測しています。アメリカでは21年に当時のバイデン大統領が、総額1兆2000億ドル規模のインフラ投資法案に署名、成立しました。イギリスでも25年以後10年で、総額7250億ポンドを投じるとするインフラ戦略を政府が発表するなど、インフラへの投資は途上国のみならず、老朽化が進む先進国でも急務となっています。

日本建設機械工業会が会員の建機メーカーに取った建設機械需要予測に関するアンケートでは、北米や欧州などの海外市場での需要予測について、25年度は「減少」との見方が多かったものの、26年度については「増加」と答えた企業が大きく増えました。国内市場の成長に頭打ち感が強まるなか、海外に成長機会を求める建機メーカーは少なくありません(『中国インフラ投資に回復期待 「建設機械」関連株が上昇)。関連株への投資を検討する際には、各社が参入している市場や技術などを吟味することが重要になってきそうです。