「時価総額と流動性で分かれるニューインデックスシリーズ」を読む
今回ご紹介するインデックスは東証REIT指数です。これまでこの連載で紹介してきたのは株式インデックスでしたので、対象とする資産が異なります。というわけで、まずはREITとは何なのか簡単にまとめていきましょう。
REITの仕組み
REITとは、Real Estate Investment Trustの頭文字をとったものです。Real Estateは不動産、Investment Trustは投資信託なので、くっつけると不動産投資信託です。つまりREITは、投資家から集めた資金でオフィスビル、商業施設、住宅、物流施設などの不動産を購入・運用し、賃料収入や売却益を投資家に分配する投資信託の一種です。
東証に上場するREITは税制優遇を受けるため、利益の90%以上を分配するルールがあります。よって、株式と比較すると分配利回り(株式の配当利回りに相当する)が相対的に高い銘柄が多いです。
不動産への投資を個人で手掛けようとすると、物件の選定や資金調達など、なかなか高いハードルがありますね。一方REITはそれらのプロセスを意識することなく、株式のように証券取引所で売買でき、少額から不動産投資に参加できるのが特徴です。2025年9月19日現在、東証には58銘柄が上場しています。なおREITのプライスは「投資口価格」と呼びます。豆知識として知っておいてくださいね。
東証REIT指数とは
東証REIT指数は、REIT市場全体の価格動向やパフォーマンスを把握するためのベンチマークの役割として、2003年3月31日から算出開始されているものです。このインデックスは東証に上場するすべてのREITの投資口価格をもとに時価総額加重平均型で算出されています。わかりやすく言えばREIT版TOPIXといったところです。
東証REIT指数チャートで歴史を振り返る
東証REIT指数は算出開始から約22年半が経過していますが、きりよく20年チャートを見てみましょう。何かと比較した方がわかりやすいので、TOPIXと比較します。TOPIXは2025年に入ってから史上最高値を更新しました。一方、東証REIT指数の高値のピークは2007年5月31日(終値ベース)です。それから約1年3ヵ月後の2008年10月28日に底値を付けています。高値から約74%、約1,900ポイント下落しました。
日本でREITが初めて上場したのは2001年です。個人投資家の場合、REITの分配金には所得税(15%)+住民税(5%)=20%の源泉徴収税率が適用されていました。2000年代中盤、日本経済がデフレ脱却に向けた回復局面にあり、企業業績の向上や消費の活性化がオフィス・商業施設などの不動産需要を押し上げました。これにより、REITの賃料収入が増加し、分配金利回りの魅力が高まりました。
加えて、2007年4月~2008年3月の期間限定でREITの分配金に対する個人投資家への課税が所得税7.147%+住民税2.853%=10%に軽減されました。これにより個人投資家の資金がREITにたくさん入った結果、東証REIT指数が史上最高値を付けたのです。また、前年の2006年からMSCIの標準指数に東証REITの一部の銘柄が採用されたことも、東証REIT指数には追い風になりました。指数連動資金の買い需要が生まれたということです。
2007年夏以降の急落は、サブプライムローン危機(米住宅バブル崩壊)の影響によるものです。2008年のリーマン・ショックでさらに深刻化しました。この時はREITに限らず世界中の株式等が激しく売られました。今では飛ぶ鳥を落とす勢いのS&P500も大きく下げたのです。
リーマン・ショック後はTOPIXの方が厳しい時期が続いたことがチャートからわかりますね。東証REIT指数は対TOPIXではやや善戦しました。株式市場が低迷するときはインカムに魅力を感じる投資家が増える傾向があります。分配金利回りが相対的に高いREITの方が資金を向けやすかったのでしょう。
直近の約10年を振り返ると、TOPIXと東証REIT指数は逆相関の傾向があるように見えます。東証REIT指数が好調な時はTOPIXが冴えない、逆もまたしかりということです。2023年以降はTOPIXが圧勝していますね。これは2023年3月末に東京証券取引所が「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」と題して上場企業に資本コストを意識した経営を求め、株価向上のための具体策(例: ROE向上策、成長投資計画、自社株買い、増配、事業再編)を投資家向けに開示するよう促したことがトリガーになっているでしょう。東証REIT指数は2022年から2024年まで、リモートワーク普及によるオフィス需要の回復遅れや、円金利の上昇等が理由でだらだらと下落が続きました。
続いて、直近1年チャートを確認しましょう。2025年以降の東証REIT指数は緩やかな上昇が続いています。TOPIXには劣後していますが、2025年4月のいわゆる「トランプ関税ショック」時にはREITは底堅さを見せました。
東証REIT指数に連動するETF
2025年に入ってからは堅調な動きを見せている東証REIT指数に魅力を感じた、という読者もいらっしゃるのではないでしょうか。そのような方におすすめなのが、東証REIT指数に連動するETFです。REITそのものに投資することはもちろん可能ですが、それぞれのREITの投資対象がオフィスなのか住宅なのか物流施設なのか、あるいはどのような場所にある不動産なのかを把握するのは、なじみがない方にとってはなかなか手間がかかります。また、1口の投資口価格が数万円以上である場合が多く、プライス的な敷居の高さも感じるかもしれません。
一方、東証REIT指数に連動するETFであれば、何を選べばいいか銘柄に悩む必要はありませんし、2000円程度から投資することが可能な商品があります。もちろん、それらをフロッギーで100円から投資することも可能です。アセット(資産)の分散をもくろむなどの理由で、不動産投資に興味はあるけど、何から始めていいかわからないという方に東証REIT指数連動商品は入り口になってくれるでしょう。

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