株式市場で「ゼネコン」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は4.7%と、東証株価指数(TOPIX、3.1%高)を上回りました(10月24日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
新政権下での副首都構想や造船インフラ強化など材料豊富
ゼネコンの関連株が上昇したきっかけは、2つのインフラ計画の実現を通じた需要拡大期待の高まりです。
1つ目は「副首都構想」。10月20日、自民党と日本維新の会は、連立政権の樹立で合意。日本維新の会が掲げる「副首都構想」では、地方分権・多極型の国家構造の実現を目指して副首都を作り、中央省庁などの首都機能の一部を移転する構想を描いています。
「副首都構想」実現に向けた期待が高まり、官公庁の移転など大型案件受注増が意識されました。
2つ目は「国内造船の建造量倍増」目標。政府は2035年に国内造船の建造量を倍増するとの目標を立てています。これに対して、23日、日本造船工業会の会長で今治造船社長の檜垣幸人氏が、自民党の会議で「民間で3500億円の設備投資をする意向を示した」と報道されました。
政府が掲げる目標達成には既存ドックの回転率を引き上げる設備投資が必要です。業界の前向きな姿勢は、その実現可能性を高めるとともに、ゼネコンへの需要拡大期待が膨らみました。

通期業績見通しの上方修正や大幅な増配【大末建設】
上昇率首位の「 大末建設 」はマンションや一般建築、既存建物の増築・改修などを手掛けています。
24日に26年3月期の業績見通しを上方修正し、併せて大幅な増配を発表。受注高が会社計画を上回っているほか、手持ち工事の利益改善や販管費の抑制などが収益を押し上げています。26年3月期の中間配当と期末配当を引き上げています。
受注実績には庁舎もあり、本社は大阪市にあるため副首都構想の大型案件の一部を受注できれば、さらなる業績拡大が見込めそうです。
深海からレアアース回収も【東亜建設工業】
上昇率2位の「 東亜建設工業 」は港湾や海岸、鉄道などの土木工事のほか、庁舎の建築も手掛けているマリコン(マリンコントラクター)です。
国内だけでなくアジアを中心とした海外でも海洋土木工事を展開し、防潮堤の建設や岸壁の強化、延伸などの海上工事全般に関わっている実績があります。造船業への設備投資の増加に伴い、海岸工事の案件が増えた場合は恩恵を受けるとの見方があります。
レアアース泥を水深6000メートルの海底から回収するシステムの技術開発にも携わっており、レアアース関連銘柄の側面もあります。
海洋土木のほか、防衛関連も
「 五洋建設 」は完全子会社の警固屋船渠(けごやせんきょ)が造船業を手掛けているほか、「大阪副首都構想」で再開発が注目される夢洲地区の土地造成工事を担った実績があります。自衛隊基地の土木工事も手掛け、防衛関連としても注目されています。
「 不動テトラ 」は港湾や岸壁の工事に強みを持ちます。
「 日本国土開発 」も官公庁の施設や道路、港湾の工事などを幅広く手掛けています。
採算改善の進捗にも注目
ゼネコンは工事の選別受注などにより採算改善が進んでおり、上昇率首位だった大末建設を含めて業績見通しの上方修正や配当の積み増しなどでも注目を浴びています(『価格転嫁で採算改善 「ゼネコン」関連株が上昇』)。
上昇率上位の銘柄にはマリコンが目立ちましたが、副首都構想に進捗があった場合に大型案件を受注するとみられる大手ゼネコンも上昇しています。まだ高市早苗政権は発足したばかりで、副首都構想に大きな進展はみられませんが、他にも防衛体制の強化や国土強靱化基本計画などの政策が立案される可能性があります。いずれの政策が打ち出された場合にもゼネコンには追い風となりそうです。
副首都構想や造船インフラの強化、防衛関連、レアアース関連など、ゼネコンには材料が豊富です。各社の事業内容や強みを分析したうえで、これからの政策や業績の動向を日々チェックし、投資判断に役立てたいですね。