データ通信量が激増 先端技術「CPO」で処理能力アップ

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人工知能(AI)の台頭などでデータ通信量は爆発的に増え、消費電力の増大やデータ転送の遅延といった課題が浮き彫りになっています。こうした問題の解決策として期待される新技術「CPO(Co-Packaged Optics)」向けに製品を開発するAGCを中心に各社の動向をご紹介します。

エヌビディアがCPO製品発表

今年3月、米画像処理半導体大手のエヌビディア(NVDA)が、CPOを使った製品を発表して話題を集めました。

CPOは、「光電融合」の分野で開発が進んでいる技術です。

通信ネットワークでは光ファイバーが広く利用されていますが、コンピューター内でデータを処理する回路は電気信号が主流です。

光電融合は、電気を光に置き換えることで消費電力を減らし、高速で大容量の通信を可能とすることから、AIやビッグデータの処理に欠かせない存在となっています。

CPOは、通常、半導体パッケージの外側にある光学部品を半導体チップと同じパッケージ内に組み込みます。コンピューターに取り入れる光電融合の先端技術の一つとして開発の動きが加速しています。

CPO(Co-Packaged Optics)とは

・光をデータの送受信に使う。
・半導体チップと光学部品を一体実装。
・データセンターなどのデータ転送速度の向上と電力消費削減などが期待できる

AIデータセンター建設が拡大するなか、ブロードコム(AVGO)台湾積体電路製造(TSM)などもCPOの開発を強化しており、本格的に商用化が進もうとしています。

AGCはパッケージ基板を開発

日本企業ではCPO向けの材料や部品の開発が盛んです。

AGCはCPO向けパッケージ基板の開発を進めています。CPOでは、これまで半導体チップの保護やプリント基板との電気接続を担っていたパッケージ基板に、新たに光信号の通り道となる「光導波路」という役目が増えることになります。同社は光学部材で培った精密加工技術を応用し、ガラスやポリマー(樹脂)を使った光導波路を開発しています。

加工のしやすさではポリマー製が先行しているものの、耐熱性や伝送損失回避の観点ではガラスに優位性があるといわれています。CPO導入期はポリマーが主流となるものの、次世代技術ではガラス光導波路が本格的に実用化されると期待されています。

日本企業は部材や部品の開発を加速

大日本印刷は7月、海外初となる研究開発拠点をオランダに開設すると発表。オランダ応用科学研究機構と契約を締結し、最初のテーマとしてCPOの研究開発を推進する予定です。

レゾナック・ホールディングスは、光電融合用の接着剤を開発しています。従来よりも高い精度の接着剤の実現が求められるなかで商機を模索しています。

住友電気工業もCPO向けに光接続部品などを開発しています。高速データ通信の中核装置となるCPOスイッチは限られたスペースで光ファイバーを結合することが求められます。同社は小径に曲げた光ファイバーを実装した光接続部品を試作したと2023年に報告しています。

NTTは10月に開催した機関投資家向け説明会で、次世代通信基盤の構想「IOWN(アイオン)」などについて説明しました。そのなかで米ブロードコムなどパートナー企業と開発している光電融合スイッチについて、26年にも商用サンプルの提供を始める計画を明らかにしました。データセンター向けの採用を目指し、スイッチ単体のみで最大50%の電力削減が可能になるとみられています。(『生成AIの成長を後押しする先端技術「IOWN」)

素材や部品などに関わる技術の裾野が広いCPOへの注目度は今後一段と高まっていきそうです。