日米プロジェクト始動 「対米投資リスト」関連株が上昇

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株式市場で「対米投資リスト」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は8.9%と、東証株価指数(TOPIX、1.9%上昇)を大きく上回りました(10月31日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

日米首脳会談で共同発表

「対米投資リスト」関連株が上昇したきっかけは、『日米間の投資に関する共同ファクトシート』の発表です。

10月28日、東京で高市首相とトランプ米大統領が会談。会談にあわせ、日米両政府は「日米間の投資に関する共同ファクトシート」を発表しました。

同文書は、「エネルギー」、「AI(人工知能)向け電源開発」、「AIインフラの強化」、「重要鉱物等」の4つの投資分野を列挙したもので、事業規模は総額約4000億ドル(約60兆円)にのぼります。

示された投資分野は、地政学的なリスクが高まる中、経済安全保障とサプライチェーンの強靱化を目指す上で、いずれも戦略的に極めて重要性の高い領域です。同時に、日米の連携強化を目指した”対米投資リスト”とも位置付けられます。

「日本企業の8社がプロジェクト組成に関心」と報道され、同文書に掲載された企業を中心に買いが集まりました。

AI需要拡大を見込み新工場稼働【フジクラ】

上昇率首位は電線大手のフジクラ 」です。『共同ファクトシート』の「AIインフラの強化」の分野で、光ファイバーケーブルを供給すると掲載されました。生成AI市場の拡大に伴ってデータセンター向けに同社の光ファイバーケーブルの需要が増加しており、8月に約450億円を投じて千葉県に光ファイバーの工場を新設すると発表しています。

2025年4~6月期決算では、主力である情報通信事業の売上高が58%増の1438億円、営業利益は2.3倍の340億円と大幅増収増益で、営業利益率は23.6%(前年同期は16.6%)に高まりました。生成AIの普及・拡大を背景にデータセンター向け需要の伸長が寄与したとしており、対米投資の拡大は業績拡大につながりそうです。

次世代原子炉を建設へ【日立】

上昇率2位は日立製作所です。『共同ファクトシート』の「エネルギー」分野で、米GEベルノバと日立の共同出資会社である「GEベルノバ日立ニュークリアエナジー」が次世代原子炉である「SMR(小型モジュール炉)」を建設すると掲載されました。事業規模は最大1000億ドルとなっています。

SMRは既存の原発と比べて建設コストを低く抑えられるのが特徴で、AIで増加する電力需要への対応策として普及への期待が高まっています。

電力インフラ構築、MLCC、データセンター向け発電システム提供

ソフトバンクグループは『共同ファクトシート』の「エネルギー」分野で、大規模電力インフラ構築のための仕様や調達、組立、統合、運用、メンテナンスの設計・開発を担うと掲載されました。事業規模は最大 250億ドルとなっています。

同社が参画する米国のAI向けインフラ投資計画「スターゲート」に関しては、9月下旬に総額5000億ドルの投資先にめどをつけたと発表しており、今後も対米投資関連の中核銘柄として関心を集めそうです。

村田製作所は「AIインフラの強化」として、高品質な多層セラミックコンデンサ(MLCC)やインダクタ、EMI(電磁両立性)抑制フィルターなど先進的な電子部品を提供する方針です。MLCCは、AIサーバーなどの動作に欠かせない極めて重要な電子部品とされます。事業規模は最大150億ドルとなっています。

三菱電機は「AIインフラの強化」として、データセンター向け発電に関するシステムやデータセンター機器の供給に加え、米国におけるサプライチェーンを強化すると掲載されました。事業規模は最大300億ドルとなっています。

1500億ドル分の追加プロジェクト発表の可能性も

今回の『共同ファクトシート』の事業規模である総額約4000億ドル(約60兆円)は、7月の日米関税合意で締結した対米投資5500億ドル(約84兆円)の実現に向けた具体的な第一歩となります。

両者間には約1500億ドル(約24兆円)の差額があります。今後何らかの形で、その差額分のプロジェクトが明らかとなる可能性があり、その際に対米投資リスト関連銘柄が再び脚光を浴びる可能性がありそうです。