AIクラウド需要急増 新興DC企業の対応急ピッチ

フォーカス!押さえておきたいテーマと企業(米株編)/ QUICK

人工知能(AI)ブームの到来を受け、AIクラウドサービスに特化した新興データセンター(DC)企業が台頭しています。

AIデータセンター向け画像処理半導体(GPU)で圧倒的シェアを誇るエヌビディア製GPUを大量に調達し、AIクラウドを提供するコアウィーブを中心に各社の動向をご紹介します。

コアウィーブ、相次ぐAIクラウド提供契約で受注残556億ドルに

コアウィーブ(CRWV)は7月、エヌビディア(NVDA)製の最先端GPU「ブラックウェル」を搭載した幅広い製品ラインアップを大規模に提供する最初の企業になったと発表しました。

同社は今年3月に上場したばかりの新興DC企業です。

新興データセンター(DC)企業の特徴

・世界的に需要が急増するAIデータセンターに特化し、AI開発企業にインターネット経由で貸し出すクラウドサービスを展開

・AI開発や大規模データ処理に使うエヌビディア製の画像処理半導体(GPU)を中核に据えたラインアップを構築

・ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)が投資負担を抑える目的で新興DCを活用する動きが追い風に

AI開発や大規模データ処理に不可欠で、いま最も競争力のあるエヌビディア製GPUに対応した最新かつ最先端のハードウエアソリューションをいち早く市場に投入することで、顧客企業への訴求力を高めてきました。

この戦略は奏功し、巨大テック企業との大規模なAIクラウド提供契約を相次いで勝ち取っています。

オープンAIとは3~9月に提供契約を結び、総額は224億ドルに達しました。メタ・プラットフォームズ(META)と最大142億ドルの契約を締結したことも9月に公表しました。

相次ぐ大口契約により、将来の売上高につながる受注残は9月末時点で556億ドルと、前年同月末(150億ドル)の3.7倍に膨らみました。「AIに不可欠なクラウドとしてのコアウィーブの地位はかつてないほど強固になっている」とマイケル・イントレーター最高経営責任者(CEO)は述べ、事業拡大に自信を深めています。

他の新興DC企業の対応も加速

他の新興DC企業もAIクラウド需要の取り込みを加速しています。

オランダを拠点とするAIインフラ企業ネビウス・グループ(NBIS)は9月、マイクロソフト(MSFT)と最大194億ドルの契約を結びました。11月にはメタに5年間で30億ドル相当の新たな契約を締結したと発表しました。

オーストラリアを拠点とするAIデータセンター運営のIREN(IREN)は11月、マイクロソフトと5年間で総額97億ドルのGPUクラウドサービスの供給契約を結びました。

IRENは顧客の旺盛な需要を背景にAIクラウドの容量拡張を急いでおり、現在稼働中・受注済み契約分を合わせて26年3月までの年換算売上高5億ドル超の達成に向けて順調に進んでいるとしています。

アプライド・デジタル(APLD)は10月、米ノースダコタ州に建設中のAIデータセンターに関して、コアウィーブを含むハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)2社と長期のリース契約を締結。AIインフラ構築企業としての地位強化を図ります 。

相次ぐデータセンター建設で、電力管理システムやサーバー冷却装置などを取り扱う企業にも大きな商機をもたらしています。

デジタルインフラ機器を提供するバーティブ・ホールディングス(VRT)は、5月にエヌビディアと戦略的業務提携を結び、共同で次世代AIファクトリーの設計に着手しています。10月には構想段階から準備段階に移行したと事業の進展を明らかにしました。

AIクラウド需要が急増するなか、自社でもデータセンターを保有する巨大テック企業が投資負担を抑える狙いから新興DCを活用する流れは続く可能性が高く、データセンター関連企業の繁忙は続きそうです。