マーケットの「温度感」がわかる連載「カエル先生の株式相場プレイバック」。今回は、日経平均が5万円を突破した動きとその背景、今後のポイントなどについて解説します。
10月の日本株市場は、日経平均が月初の4万4000円台から、月末には5万円を突破。米株市場が利下げ期待などから高値更新をする動きは追い風となったものの、それ以上に日本の新しい政権の選択と、変化への期待という日本のポジティブ要因が株価を押し上げました。
10月の日本株市場
10月31日の日経平均株価は5万2411円、前月末比7478円高でした。
月初旬は、米国で利下げ観測の高まりなどを背景にNYダウ、S&P500が揃って高値を更新した動きを受け、日本株も上昇。10月6日には、4日に行われた自民党総裁選で高市早苗前経済安全保障相が新総裁に選出されたことを好感。日経平均は2175円(約4.8%)上昇し4万7000円台乗せとなりました。
中旬は、米国でAI(人工知能)需要への期待からハイテク株や半導体関連株が上昇した流れを受け日経平均は4万8000円台に上昇。一方で、一時政権枠組みに関する不透明感が浮上すると、高値圏にあったことと相まって、軟調に推移する場面もありました。
下旬には、10月20日に、翌日の首相指名選挙で自民党の高市早苗総裁が首相に選ばれることが確実な情勢となったことから、日経平均は1603円(約3.4%)値上がりし、4万9000円台乗せ。27日には、前週末の米株市場が利下げ観測の高まりなどからNYダウ、S&P500が揃って高値を更新したことに加え、高市内閣が高い支持率を集めたとの世論調査の報道を受け、日経平均は1212円(約2.5%)値上がりし5万円台を突破しました。
石破茂前首相の退陣観測報道をきっかけに上昇してスタートした2025年後半相場。「政権選択相場」という側面もあり、“民意”を戴しダイナミックに上昇した展開は、日本株市場の歴史に残るものになると言えるかもしれません。

ハイテク・製造業が大きく上昇
日経平均など市場全体の動きを示す指数は大きく上昇しました。その間どういった業種が値上がりしたか見てみましょう。
下の図表は、9月8日以降に指数(TOPIX)を上回って上昇した業種別株価指数の推移を示したものです(9月5日終値起点)。
前日7日の石破前首相による辞意表明を受け、名実ともに「総裁選出」「首相選出」レースが始まり、各候補の政策への注目度が高まりました。また、米国で利下げ観測を受けAI、半導体関連株があらためて物色された流れを受けている面もありそうです。
上昇率トップの非鉄は、「データセンター」向けの電線・通信網関連企業、電気は、「AI」に関連する半導体関連企業、機械は「次世代革新炉」などのエネルギー技術や「防衛」に関連する企業などが含まれます。
いずれも、株式市場では既に馴染みのある投資テーマでもあり、政策や経済の流れを受け、息長く物色の中核になってきていると言えそうです。
高市政権の成長戦略は
10月21日、自ら「決断と前進の内閣」と名付けた高市政権が始動。24日、高市首相は国会で所信表明演説を行い、「強い経済」をつくることを目指しその政策の基本方針を明らかにしました。
下の図表は、首相所信表明演説から主な成長戦略を抜粋したものです。
株式市場の観点では、業種別株価指数の動きでも触れた通り、総裁選出、首相選出における候補者の政策表明の過程で、先行してテーマとして物色されている動きもあるようです。
ここからは、高市首相が演説の最後に述べた「共に、日本の新たな一歩を踏み出しましょう」との呼びかけを受け、与野党間において建設的で前向きな議論が行われ、政策が実行に移される進捗や動向が、注目ポイントとなりそうです。
「出遅れ外需銘柄」にも評価余地
日本株市場は日経平均が5万円台乗せとなったことから、一部で高値警戒感も指摘されそうです。ただし、業績面では底堅い推移が見込まれ、株式市場のバリュエーション指標やテクニカル指標では極端な割高感はうかがえないようです(『【速報】日経平均5万円突破 相場の「温度感」をチェック』)。
一方、個別では一時的に利益確定や株価が調整する銘柄が出てくることも想定されます。そういった局面では、株価が出遅れている銘柄、割高感が大きくない銘柄などが注目されることも予想されます。
以下は、米国売上高比率が相対的に高く、来期の経常増益率が2ケタ以上である一方、4月7日のトランプショック以降の株価騰落率がその属する業種の騰落率を下回っている主な銘柄です。
米利下げにより米国製造業・インフラ分野等の設備投資需要が喚起される恩恵を受ける可能性が期待される「出遅れ外需銘柄」として注目してみてはいかがでしょうか。

ルネサスエレクトロニクス
東芝テック
PHCホールディングス
LIXIL
日本精工
パナソニック ホールディングス
東邦チタニウム
ジェイテクト
東海カーボン
アルプスアルパイン