50万円を50億円にした、末期がんの医師によるバリュー株投資の決定版。割安株の見分け方から勝率をあげる「投資レポート」の書き方まで、投資の再現性を意識した一冊です。
資産50億を築いた投資法、全部入りです
本書は読者ターゲットを絞っていません。初心者でも読みやすく、数十年後に上級者になってもまだ読むところがある、そんな本です。余命宣告を受けた著者が娘たちに「自分の力でお金を増やす方法」を伝えたい一心で執筆したものだからなのかもしれません。内容は「テンバガー」を何度も達成した投資法全部入り。ファンダメンタルズ分析への執念は凄まじく、ページあたりの情報量も半端ではないです。
著者の投資手法はバリュー(割安)株を「安く買って高く売る」です。そもそもバリュー株投資とは何か、そこから解説してくれるのが本書の良いところ。実は、巷で人気のグロース株よりもバリュー株の平均リターンの方が高く、前者を7%上回る14.5%だそう(1000万円を7%で30年運用すると7500万円になります。著者の総資産からその威力を推して知るべし)。そんなバリュー株を目的やタイプに分け、探し方から売り時までを手取り足取り教えてくれます。
たとえば、長期ほったらかし前提の「資産バリュー株」は老舗企業に多く、財務はよし、けれど業績の伸びはイマイチな企業から探す(スクリーニングではPBR0・5倍以下、自己資本率60%以上を推奨)。著者がオススメする片倉工業はさいたま市大宮のコクーンシティを保有していますが、帳簿価額では4200万円、けれど現在の地価では2633億円以上になっているとのこと! はるか昔に購入した土地や有価証券が爆上がりしている企業はねらい目、と語ります。
このほか、業績は安定しているけど株価が安い「収益バリュー株」や、著者のメインの投資手法であり、景気の循環に合わせて黒字と赤字を周期的に繰り返す「シクリカルバリュー株」についても、それぞれ多くのページ数を割いて解説します。
著者は、投資の精度を上げる方法として「企業分析レポート」の作成を推奨しますが、15ページに渡る渾身の自作レポートも掲載。全編通して抽象論はゼロ、具体論しかありません。資産を1万倍にした著者の背中を見て「もっと学んで大儲けしよう」という意欲を刺激される一冊でもあります。