株式市場で「マンション開発」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は3.8%と、東証株価指数(1.8%)を上回りました(11月7日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
好調な決算発表を好感
マンション開発関連株が買われたきっかけは、好調な決算の発表です。
11月7日、日神グループホールディングスが2025年4~9月期連結決算を発表。26年3月期業績予想を上方修正しました。11日には、タスキホールディングスが2025年9月期の連結決算を発表。売上高や営業利益などが過去最高となりました。いずれも良好で活況な不動産市況が追い風となったようです。
「住宅ローン減税」適用基準変更の動きも株価にプラス
12日に住宅ローン減税の適用基準変更を国土交通省が検討していると伝わったことも株価にプラスとなりました。
国土交通省は、10年ごとの住宅政策の指針を示す「住生活基本計画」を策定しています。その5年に一度の見直しの中で、住宅ローン減税の適用基準としていた居住面積の目安をこれまでの「50平方メートル」から「40平方メートル」程度に引き下げる方針とのことです。
「住宅ローン減税」とは、住宅ローンを活用して住宅を新築・購入・増改築した居住者の負担を減らすための税優遇制度です。年末時点の住宅ローン残高に応じて、所得税や住民税から控除されます。
これまでの計画では、控除の適用を受けることができるのは原則として居住面積が50平方メートル以上の住宅をローンで購入した場合などのみでした。合計所得金額が1000万円以下の世帯が新築住宅で借り入れる際には、40平方メートル以上でも控除を受けられる特例措置がありましたが、今回の基準変更によりすべての場合に適用されることになります。
方針変更が実施されれば、従来に比べ狭いマンションや戸建て住宅にも住宅ローン減税が適用可能になります。居住面積以外の条件を満たす必要もあるものの、不動産購入希望者の裾野の広がりが見込まれます。

不動産×ITで成長【タスキHD】
上昇率首位の「 タスキホールディングス 」は、IT(情報技術)を活用したレジデンスの企画・開発に強みを持つ不動産デベロッパーです。東京23区内、駅近の好立地に新築投資用のレジデンス「タスキsmart」などのブランドを展開しています。
また、不動産業者向けのSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)型クラウドサービスを展開するなど、クラウドベンダー企業としても事業を拡大しています。
東京都の人口増加などに伴い都内の不動産投資ビジネスは活況を呈しており、同社はIT分野での強みと不動産デベロッパーとして開発力を併せ持つ企業として注目されています。
2025年9月期の連結決算では、良好な不動産市況を背景に、投資用レジデンスなどを扱うLife Platform事業が好調で大幅な増収増益となりました。
トータルサポート体制に定評【日神グループHD】
上昇率2位の「 日神グループホールディングス 」は、首都圏を中心に分譲マンションの企画・販売を展開しています。前身となる会社は1975年創業の老舗企業です。
マンションの用地取得から施工、販売、アフターメンテナンスに至るまで、一貫したトータルサポート体制に定評があり、「パレステージ」などのマンションブランドを展開しています。
大規模マンションのみならず、「デュオステージ」シリーズなど居住面積が比較的小さな集合住宅の開発も手掛けていて、減税適用基準の変更は事業に有利に働きそうです。
上方修正した26年3月期は、マンション建設事業などでの利益率向上が寄与し、営業利益と純利益が、従来予想から30%以上伸びるなど、好調な業績を見込んでいます。
各社独自のビジネスモデル・事業展開に強み
上昇率3位の「 東京建物 」は、マンションのほか、オフィスビルや商業施設、宿泊施設などを手掛ける総合開発デベロッパーです。不動産開発のみならず、空いたスペースを時間貸しする「スペースシェアリング」や「カーシェアリング」など、不動産業以外の事業も積極的に手掛けているのが特徴です。
4位の「 長谷工コーポレーション 」は主にマンション建設を手掛ける準大手ゼネコンです。自ら仕入れた土地情報を事業者に持ち込み、プランと共に提案営業する独自のビジネスモデルを強みとしています。
5位の「 ケイアイスター不動産 」は、首都圏を中心に分譲住宅や注文住宅を提供しています 。
いずれの企業も住宅ローン減税の範囲拡大による、不動産購入希望者の拡大が追い風となりそうです。
都市部の不動産価格は上昇傾向 投機マネーの流入指摘も
近年、東京や大阪などの都市部では不動産価格が上昇しています。不動産経済研究所が10月21日に発表した25年4~9月の東京23区の新築マンションの平均価格は1億3309万円と、前年同期に比べ20.4%伸びました。
外国人や投資家による投機マネーの流入も指摘され、一般的な収入の人たちが都市部でマンションや戸建てを購入することは年々難しくなっています。地価上昇も全国的な動きとなっており、過去にも不動産関連株に注目が集まったことがありました(『アクティビストが株式取得 「総合不動産」関連株が上昇』)。
「住生活基本計画」の変更を受けた住宅ローン減税は、年末にかけて与党の税制調査会を中心に議論されるようです。マンションなどの購入希望者の負担を和らげる住宅ローン減税の適用規模拡大の動きは、関連銘柄にとって追い風となるでしょう。