独自開発のPB商品 低価格だけでなく高単価でも魅力 

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物価高により消費者の財布の紐が固くなるなか、小売企業では、独自商品の提供によって集客増を図る動きが強まっています。今回は、「トップバリュ」を展開するイオンを中心に、各社の取り組みをご紹介します。

イオンはPB商品「トップバリュ」を値下げ

今年10月、「 イオン 」は「トップバリュ」商品60品目の値下げしました。値下げは4月(75品目)に続く今年2回目となります。物価高の影響で、食料品を中心にメーカーの値上げが相次ぐなか、イオンの値下げ発表は大きな話題となりました。

「トップバリュ」は同社が独自に企画・開発しているプライベートブランド(PB)商品です。

PB商品の魅力のひとつは「低価格」であり、一括での原料調達や包装の簡素化など、商品に関わるコストを削減することで、低価格でも利益を確保しています。一般的に、大手メーカーが全国展開するナショナルブランド商品と比べて、高い利ざやを得やすいといわれています。

プライベートブランド(PB)のメリット

・自社の顧客に合った商品の提供が可能

・独自色の強い商品で集客の武器に

・利益率が相対的に高いため柔軟な価格戦略がとれる

・宣伝費や中間物流の削減でコストを抑制

顧客層に合った商品を提供できるのもPB商品の強みです。消費者と直接接点を持つ小売企業は、顧客のニーズをよく把握できるという利点があります。

「トップバリュ」ブランドでは主力の「トップバリュ」、価格競争力を重視した「トップバリュベストプライス」、オーガニック素材を使うなど環境に配慮した「トップバリュ グリーンアイ」という3つのテーマでPB商品を展開し、独自商品の魅力向上に努めています。

同社はドラッグストアなどのグループ企業でも独自にPB商品を展開しており、中期経営計画で2025年度にグループ全体のPB商品売り上げ規模を2兆円とし、2019年度比で倍増させる目標を掲げています。

12月1日には傘下のウエルシアホールディングスとツルハホールディングが経営統合しました。今後はPB商品を含めたシナジー(相乗効果)の創出が期待されます。

PB商品開発と連携で競争力を強化

西日本を地盤にスーパーなどを運営する「 イズミ 」は、今年9月に「最後発のPBだから、最高のPBを目指します。」と宣言し、PB市場に参入しました。これまで「 セブン&アイ・ホールディングス 」のPB商品「セブンプレミアム」など、他社PB商品を導入・販売してきましたが、今後は自社主導の商品開発体制を本格的に始動させます。地域密着型を強みとする同社ならではのPB商品によって、集客力の向上を目指しています。

九州発のディスカウント店「 トライアルホールディングス 」は、買収した西友のPB商品「みなさまのお墨付き」をトライアルの店舗に順次投入しています。一方、西友の店舗では自社PB商品を展開するなど、両社のPB商品を相互に取り扱い、連携を強化しています。独自色の高い売り場づくりや商品の供給先拡大により、競争力の向上を図っています。

低価格だけでなく、機能性重視で高単価PB商品も

「PB=低価格」のイメージを覆す、あえて高単価のPB商品を投入する動きも出てきました。ドラッグストアの「 マツキヨココカラ&カンパニー 」は高機能成分を高濃度で配合したヘアケア商品「CONCRED(コンクレッド)」シリーズなどを展開しています。他では手に入らない品質を目指してメーカーと共同開発し、一般的なナショナルブランドよりも高単価な商品を積極的に販売しています。

食品スーパーの「 ライフコーポレーション 」は健康や自然志向に対応したPB「BIO-RAL(ビオラル)」を展開しています。同名のオーガニック商品を集めたスーパーも運営しており、2030年度には50店舗・売り上げ規模400億円を目指しています。

PB商品は「安さ」だけでなく、小売企業の「顔」としての役割を担うようになっています。