旬な投資テーマをもとに、関連する国内外の企業をまとめて紹介する本連載。今回のテーマは今後の成長分野として注目されている「フィジカルAI」です。日本では、日立製作所が「世界トップのフィジカルAIの使い手を目指す」と表明しましたが、海外にはどのような関連企業があるか、ご紹介していきます。
フィジカルAIとは?
「フィジカルAI」とは、人型ロボットや自動運転車のように、「現実世界の情報をセンサーなどで認識し、状況に応じて自律的に行動できるAI(人工知能)」のことです。
「生成フィジカルAI」と呼ばれることもあり、製造や物流、運転などの分野で高度な物理的動作を実現できます。
最近はOpenAIのGPTや、Facebookなどを運営しているメタ・プラットフォームズのLlama(ラマ)といった、大規模言語モデルによる文章や画像の生成技術(生成AI)が大きく進歩しています。それに続き、米国の半導体大手エヌビディアなどが今後の成長分野としてフィジカルAIに注目しています。
現実の物理法則を理解できるAIモデルの開発へ
これまでの大規模言語モデルは言語空間のモデルでした。すなわち、現実世界で起きている現象を言葉で理解できても、たとえばロボットや自動運転の車が現実の世界で動くためには「ものがどう動くか」、「ぶつかったらどうなるか」などの物理法則は理解できていません。
ロボットや自動運転車などの自律マシンが、物理的な空間での事象の理解、意思決定を行うにはこれまでのモデルでは限界があります。そのため、仮想環境における物理的シミュレーションによって制御の最適解を導き出すフィジカルAIが必須と言われているのです。
今後、AIモデル開発はテキスト・画像・動画から、現実世界の物理法則のモデル化にシフトしていくと考えられています。
現時点でフィジカルAIの活用によるロボットの自動化は限定的ですが、物理的空間を対象としたAIモデル開発が進めば、フィジカルAIの幕開けが期待できます。
エヌビディアCEOが日本の技術を高く評価
2024年11月にエヌビディアが主催した「AI Summit Japan」で、同社のフアンCEOは「ロボティクスAI革命をリードするのに、日本ほどふさわしい国はないと思う」と述べ、日本のロボティクス技術やこれまでの実績を高く評価しました。
2025年10月には「 日立製作所 」が自社のAI戦略について説明し、デジタル改革ビジョン「Lumada 3.0」において、現場のデータ解析を強化するエッジAI技術の開発を発表。あわせて「世界トップのフィジカルAIの使い手」を目指す方針も示しています。
さらに、「 富士通 」や「 安川電機 」もエヌビディアとフィジカルAIを含む分野で協業を発表しており、日本の技術が今後さらに真価を発揮する展開が期待されます。
世界的に開発が加速
また、世界でも名だたる企業がフィジカルAIの開発に取り組んでいます。米国では自動車メーカーのテスラがAIを搭載した人型ロボット「Optimus(オプティマス)」を開発。同社のマスクCEOは「テスラの価値の80%はオプティマスが占めるようになる」との見通しを示しています。
また、アマゾン・ドット・コムは倉庫棚から商品を取り出し、仕分け作業を人間と協力して行う物流ロボット「ブルージェイ」を公表しました。物流分野におけるロボット活用については、同社が60万人以上の雇用を代替する可能性があるとして、政治家から批判の声も上がっています。
一方、テスラのマスクCEOは、「働くことは任意になるだろう。店で野菜を買う代わりに自分で育てるようなものだ」と発言。AIとロボットがほとんどすべての仕事を代替し、人々が退屈な労働から解放される「豊かな時代」の到来をイメージしている、としています。
他にも、ドイツの総合テクノロジーメーカーのシーメンスと自動車メーカーのアウディは、製造現場の自動化を仮想化することで、自動車生産の最適化を進めています。

AI普及期における有望市場として、注目度が高まるフィジカルAI。引き続き、関連企業の動向はチェックしておきたいですね。
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