TOPIXニューインデックスシリーズの「クラス替え」

あなたの知らない「インデックスの世界」/ さかえだいくこ(おせちーず)須山 奈津希

「不動産投資を手軽にするインデックス 東証REIT指数」を読む

本連載では2ヵ月前に「TOPIXニューインデックスシリーズ」をご紹介しました。今回は10月7日に発表された「クラス替え」について詳しく見ていきたいと思います。

1年に1回の「クラス替え」

TOPIXニューインデックスシリーズは、TOPIXの構成銘柄を時価総額と流動性(売買代金)の観点から細分化し、規模別に分類した時価総額加重型の指数群です。以下の図のような区分に分かれています。
それぞれの枠の中に、個別銘柄が属しています。TOPIXを構成する銘柄は、上記の枠のいずれかに分類されています。どこに属するかは、その銘柄の時価総額と流動性によって決まります。時価総額と流動性は常に一定ではありません。市場で流通する株式数が変化しなければ、株価が上昇すると時価総額が上昇します。逆もまたしかりです。

流動性は取引量と理解していただければいいでしょう。人気がある銘柄の取引は活発ですが、そうではない銘柄もあります。このような状況を反映し、「TOPIXニューインデックスシリーズ」の区分は年に1度見直されることになっています。いわば、「能力別クラス替え」です。

「クラス替え」の基準は定義があり、基準日における流動性と時価総額を再び見直すことで入替が発生することになります。ここでは「Core30」と「TOPIX100」について確認してみましょう。なお、「定期入替基準日」は毎年8月最終営業日です(以下、東証指数算出要領より)。

Core30

①直近3年間の売買代金合計額の順位が、TOPIXの構成銘柄の中で90位以内の銘柄の中から、時価総額が大きい順に15銘柄選定する。

②それ以外の15銘柄については、以下の順番で選定する。

(a)定期入替基準日のTOPIX Core30の構成銘柄のうち、TOPIXの構成銘柄の中で直近3年間の売買代金合計額の順位が90位以内で、かつ、時価総額順位が40位以内の銘柄の中から、時価総額が大きい順に15銘柄になるまで選定する。

(b) (a)によっても、銘柄数が15に不足する場合には、不足分について、TOPIXの構成銘柄の中で直近3年間の売買代金合計額の順位が90位以内の銘柄の中から、時価総額が大きい順に15銘柄になるまで選定する。

TOPIX100

①30銘柄については、TOPIX Core30の構成銘柄を、TOPIX100の構成銘柄として選定する。

②それ以外の70銘柄については、以下の順番で選定する。

(a)定期入替基準日のTOPIX100の構成銘柄のうち、TOPIXの構成銘柄の中で直近3年間の売買代金合計額の順位が200位以内で、かつ、時価総額順位が130位以内の銘柄の中から、時価総額が大きい順に70銘柄になるまで選定する。

(b)前(a)によっても、銘柄数が70に不足する場合には、不足分について、TOPIXの構成銘柄の中で直近3年間の売買代金合計額の順位が200位以内の銘柄の中から、時価総額が大きい順に70銘柄になるまで選定する。

このように選定が進められ、他の区分についても選定基準が定められています。直近3年間の売買代金が「クラス」を分ける大きな要素になります。

「クラス替え」は毎年10月第5営業日の引け後に東京証券取引所が発表し、10月最終営業日から「新クラス」に区分されます。では、10月7日に発表された2025年の「クラス替え」の結果を確認しましょう。

Core30にアドバンテストが仲間入り

「超大型株」と呼んでいい「Core30」は「 アドバンテスト 」が仲間入りし、「 村田製作所 」が抜けました。

アドバンテストは4月以降大きく上昇し、夏以降はTOPIXをアウトパフォームしました。株価が上昇するときは取引量の増加を伴うことが多いです。ですから、売買代金が大きく増えるわけですね。一方、過去1年ずっとTOPIXをアンダーパフォームした村田製作所は、売買代金がアドバンテストより少なくなったということでしょう。
Large70は、入れ替わりが数銘柄あるので、表にしました。

野村総合研究所
フジクラ
アシックス
豊田通商
エーザイ
資生堂
シスメックス
日産自動車
ニトリHD

「Core30」から除外された村田製作所は「Large70」に所属します。TOPIX100の採用要件は満たしたということです。一方、「Core30」に昇格したアドバンテストは「Large70」からは除外されています。

「Core30」+「Large70」=「TOPIX100」で、東証規模別指数の「大型株」を構成する銘柄になります。村田製作所以外の追加5銘柄は「Mid400」から昇格して、「Large70」に採用され、「大型株」クラスに入ったということです。株価が1年で約3倍になったフジクラ(5803)は大手の電線メーカーです。生成AIを使うために必須であるデータセンターは電線なしでは仕事ができませんから、生成AI需要を吸収した2025年を象徴している銘柄の一つと言っていいでしょう。株価の上昇に伴い売買代金も増えて大型株の仲間入りをしました。
一方、「Large70」から除外された銘柄は「Core30」へ「昇格」したアドバンテストを除くと、2025年春以降、株価が軟調に推移した銘柄ばかりです。株価は「TOPIXニューインデックスシリーズ」の「クラス替え」を左右する売買代金を変化させる要素です。株価が下がると売買代金も少なくなる傾向があり、結果的に「クラス替え」される銘柄が出てくるということです。

プロの投資家は「Core30」がお好き

「クラス替え」で「Core30」という超大型株の仲間入りをすることになったアドバンテストは、「クラス替え」発表の翌営業日にその発表を好感されて、投資家の買いを呼びました。機関投資家と呼ばれるプロの投資家は取引の活発さを重視します。買う、売るを思い通りに実行するためです。
また、「Core30」に入る銘柄は、日本を代表する銘柄ともいえます。つまり多くの投資家が、「持っていなくちゃ!」と考える銘柄群にアドバンテストが加わったということです。東証に上場するETFに「Core30」に連動する商品があるのは、日本を代表する銘柄群にまとめて投資する機会を与えてくれているのだなと感じます。

筆者の願望

「Core30」に連動するETFがあるなら、「TOPIX100」に連動するETFがあってもいいのになぁと思います。「Core30」を構成する30銘柄は非常に優秀な日本株の集まりですが、やや銘柄数が少ない気がしています。「TOPIX100」なら100銘柄ですから、時価総額加重平均とはいえ適度に分散が効くように思います。適度な流動性もあるからこその「TOPIX100」ですから、非現実的ではないように思います。近い将来そんなETFが登場することを願ってやみません。