原発再稼働への動き進む 「原発向け製品」関連株が上昇

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株式市場で「原発向け製品」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は4.1%と、東証株価指数(TOPIX、2.4%)を大きく上回りました。(11月28日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

自治体で原発再稼働「容認」相次ぐ 総合経済対策も追い風

「原発向け製品」関連銘柄が買われたきっかけは、11月下旬に入り各自治体で相次いだ、原子力発電所の再稼働を容認する動きです。

21日、新潟県の花角英世知事が東京電力柏崎刈羽原発6・7号機を巡り、「地元の同意が得られた」として再稼働を容認する意向を示しました。知事は自身の判断について、12月の県議会定例会で信任、不信任を問う考えを示していますが、信任を得られる公算は大きく、近く再稼働すると見られます。

北海道でも、鈴木直道知事が北海道電力泊原発3号機の再稼働の是非を巡り、「原発活用は、当面取りうる現実的な選択と考えている」と表明しました。

2011年3月の東京電力福島第一原発事故以降、全国で54基稼働していた原発は全てが稼働を停止しました。以降、各電力会社は安全対策などを進め、徐々に再稼働をする原発も増えてきましたが、14基に留まっています。特に東日本では事故の余波が大きく、再稼働していたのは宮城県の東北電力女川原発2号機のみとなっていました。

生成AI(人工知能)の普及による電力需要の増加が見込まれる中でも、温室効果ガスを排出しない脱炭素電源が求められています。相次ぐ再稼働容認の判断は、他の原発でも再稼働に向けた動きに弾みがつくと期待が寄せられています。

また、高市早苗政権が示した総合経済対策では、柏崎刈羽原発再稼働の重要性が明記されるなど、原子力発電を国策として活用していくという意欲が感じられる内容となっていました。

こうした政府の動きも追い風となり、再稼働によってポンプやバルブ、試験装置などの原発向け製品を製造している企業の業績向上につながるとの思惑から、関連銘柄が物色されました。

高速増殖炉「もんじゅ」関連などで実績【助川電気工業】

上昇率首位の助川電気工業 」は「熱と計測のシステムエンジニアリング」を事業の核とする研究開発型企業です。熱機器や温度センサー、試験装置など原発運転に欠かせない製品を製造しています。

すでに廃炉作業中の高速増殖原型炉「もんじゅ」関連の受注などで実績を積み上げてきました。次世代原子炉の冷却材などで利用される溶融金属の試験設備などで、独自の技術を蓄積しています。

25日に「核融合発電の研究開発を加速するため、政府が総額1千億円超を投じる方針を固めた」と報じられたことも追い風となりました。

原発向けバルブアクチュエータで高シェア【日本ギア工業】

上昇率2位の日本ギア工業は、その名前の通り歯車製品や減速機といった製品を販売している、 創業80年を超える老舗メーカーです。

原発向けでは、流体や気体の流れを制御する装置「バルブアクチュエータ」の開発・製造を手掛け、その国内シェアはなんと90%以上を占めています。海外市場でもシェア拡大を目指し新製品開発に力を入れているほか、火力発電や水道などインフラ向けにも強みを持ち、安定した収益基盤を築いています。

各社ニッチ部材に強み

岡野バルブ製造は、1932年に日本企業で初めて発電所向け高温高圧バルブを国産化しました。63年から原子力用バルブの本格生産を開始し、これまで世界60カ国の発電所に100万台以上のバルブを導入した実績のあるグローバルニッチトップメーカーです。

イーグル工業は原発や火力発電所向けのポンプやタービンなどに用いられるメカニカルシール(機械軸部分から流体が漏れるのを防ぐ部品)などの製造を手掛けています 。

木村化工機は核燃料輸送容器、MOX燃料製造設備、放射性廃棄物処理装置など、幅広い原子力向け製品を製造しています。

いずれの企業も原発の稼働になくてはならない技術力を保持しています。

再稼働のみならず新設も視野に

25年2月に閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」で、40年度の発電電力量は最大で1.1兆~1.2兆キロワット時と見込んでおり、22年度実績と比較して約1~2割の増加となります。

同計画では、発電電力量の2割を原発でまかなう見込みです。現状の原発発電量を15年間で2.5~3倍に増やす必要があり、発電量の大幅な拡大が見込まれます。

そのため、再稼働のみならず、「革新軽水炉」や「小型モジュール炉(SMR)」といった新型原子炉の新設の動きも将来的な投資の判断材料となりそうです。

海外でも「小型モジュール炉」などの新型原子炉への投資の動きは進んでいて、グーグルが米新興企業と電力の購買契約を結んだ際にも、国内の関連銘柄の物色を誘いました(『電力確保の手段として存在感高まる 「原子力発電」関連株が上昇)

一方、放射性事故のリスクや使用済み核燃料の増加などへの懸念から、市民の抗議や稼働差し止めを求める提訴といった動きも出てくるでしょう。

関連銘柄に投資する際には、こういった動きにも注意が必要となってきそうです。