株式市場で「防衛」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は2.1%と、東証株価指数(TOPIX、0.5%安)に対して逆行高となりました(12月5日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
装備品輸出の全面解禁や財源確保へ期待高まる
防衛関連株が上昇したきっかけは、12月2日に、「防衛装備品の輸出を全面解禁へ」と報道されたことです。
現在、輸出できる防衛装備品は、殺傷性が低い「救難」「輸送」「警戒」「監視」「掃海」の5つの目的に限られています。
2026年前半に装備品の輸出が全面解禁されれば、海外販路の拡大を通じ、業績の追い風になるとの見方があります。
また、自民党の税制調査会は12月4~5日にかけて26年度の税制改正で防衛財源の確保のために所得税を1%引き上げる案を議論しており、5日、自民党の小野寺五典税制調査会長は「(党内で)異論は特に出ていなかった」と発言したと伝わっています。
防衛装備品を巡る規制緩和や財源確保による需要増加への期待などから、防衛関連株が物色を集めました。

群馬にロケットモーターの新工場建設【IHI】
上昇率首位の「 IHI 」はロケット弾システムや誘導弾ロケットモーターを開発・生産しています。
24年度、防衛装備庁による調達品契約金額は578億円にのぼりました。契約金額では13位で、同社は次期戦闘機や次期戦闘機用エンジンシステムを納入しました。
4日には群馬県富岡市に固体ロケットモーターの新工場棟を建設し、防衛向けミサイルの推進システムの生産を増強するとの報道がありました。子会社のIHIエアロスペースの売上を25年3月期の700億円弱から今後数年で2倍に増やす計画のようです。
決算説明会資料(2025年度第2四半期)によると、民間エンジンと防衛に経営資源を優先的に配分し、30年度代前半に航空・宇宙・防衛事業の売上収益を1兆円にする計画を掲げています。
ヘリコプターや哨戒機など【川崎重工業】
上昇率2位の「 川崎重工業 」は24年度の防衛装備庁による調達品契約金額が6383億円となり、全体で2位でした。
輸送ヘリコプター「CH-47JA」や「P-1固定翼哨戒機」などの開発・生産を手掛け、陸上自衛隊や海上自衛隊などと契約している実績があります。他にも、誘導弾システムなどの量産装備品、航空機の翼下に取り付けるパイロンやランチャー、訓練用の標的システムなど幅広く防衛装備品を手掛けています。
直近の2025年4~9月期決算では防衛関連が含まれる航空宇宙システム事業の売上高に当たる売上収益は全体の24%を占める主力事業となっているため、海外への販売が増加すれば同社の収益拡大が見込めます。
火器や発煙筒などにも需要
「 豊和工業 」は防衛向けのライフル銃や迫撃砲を手掛けています。猟銃も手掛けており、熊対策関連銘柄としても注目されています。
「 三菱重工業 」は特殊車両や艦艇、戦闘機など幅広い防衛装備品を開発・生産しています。
「 細谷火工 」は発煙筒や信号弾、救命胴衣などに使われるガス発生装置(インフレータ)を手掛けています。
いずれの企業も海外への防衛装備品の輸出解禁が、成長の追い風となるでしょう。
軍民両用もテーマ、世界的に防衛費は増加
防衛装備品の販路拡大や防衛費増加などは、直接の目的として歓迎されるものではありません。一方、防衛関連の技術を民生分野に応用するデュアルユース(軍民両用)は大きなテーマとなっています。
海外との取引を通じて防衛分野への投資が増えれば、日本の機械技術の維持・発展や先端IT(情報技術)の開発などにつながるでしょう。
世界的に防衛意識が高まるなか(『世界的に防衛意識高まる 「防衛」関連株が上昇』)、日本でも総合経済対策として「防衛と外交力の強化」に補正予算の一般会計から1兆7000億円を計上しています。
防衛装備品各社で今後進むとみられる海外への営業強化の動向が投資判断の1つの材料となりそうです。