2025年プレイバック! 日本株を動かした3つの変化

カエル先生の株式相場プレイバック/ 日興フロッギー編集部平松 慶

マーケットの「温度感」がわかる連載「カエル先生の株式相場プレイバック」。今年も残すところあとわずか。今回は、2025年の相場を振り返り、2026年を展望してみましょう。

カエル先生の一言

2025年前半の日本株市場は、トランプ関税の先行き不透明感や、景気悪化懸念などを背景に軟調に推移しました。しかし、中盤には日米交渉の決着などを受け不透明感は後退。後半は、世界的なAI・半導体相場の流れに加え、高市早苗自民党総裁誕生、高市政権の樹立などを受け、日本の先行き変化への期待から日本株は未曽有の大幅上昇となりました。2026年は内外景気や企業業績の拡大・成長を確認しつつ、中期的な上昇トレンドが続くことが期待されます。

2025年の日本株市場振り返り

11月28日の日経平均株価は5万253円、昨年末比10359円高となりました。

昨年末比の数値に誤りがありましたので修正しました。

2025年前半の日本株市場を左右したのは、2月に就任した米トランプ大統領が発動した「トランプ関税」でした。日本経済や企業業績に及ぼす影響の不透明感に加え、米国で浮上したスタグフレーション(物価上昇と景気減速が同時進行すること)懸念などを背景に、日本株は軟調に推移。日経平均は年初の4万円から3万1000円台に下落しました。

しかし、中盤には、米関税発動後の執行停止や、米国と各国間での交渉進捗、日米間での交渉決着などを受け不透明感は徐々に後退。日本株は底打ちから反転上昇に転じました。

後半は、米半導体大手エヌビディアを中心とする世界的なAI・半導体相場の流れに加え、高市早苗自民党総裁の誕生、続いて高市首相の選出による新政権の樹立などを受け、日本の先行き変化への期待から日本株は大幅に上昇。日経平均は5万2000円台に乗せました。

日本株市場を動かした3つの変化

2025年日本株市場は劇的な上昇を遂げましたが、その背景には「3つの変化」が挙げられそうです。

①トランプ関税の発動と交渉決着
②高市政権誕生と政策期待
③AI・半導体関連の注目度上昇

①トランプ関税の発動と交渉決着
1つ目の変化は、トランプ関税の発動と交渉決着へ向けた動きです。

2月に立て続けに各国へ発動された追加関税。それに対する各国の報復関税による貿易戦争への突入や、スタグフレーション懸念など、日本株市場のみならず世界の株式市場に不安を招きました。

しかし、「関税執行90日間の停止」発表とそれに続く各国との交渉、日米交渉の決着などにより、不安や不透明感が後退、株式市場反転を後押ししました。

日本に対するトランプ関税では、自動車に対して当初25%の課税を賦課、交渉の結果15%に引き下げられました。これを受け貿易統計に見る日本の対米自動車輸出のデータからは、対前年比の減少率の縮小傾向が鮮明となってきており、マイナス影響が薄れてきていることがうかがえます。自動車株へのポジティブな材料と言えるでしょう。

②高市政権誕生と政策期待
2つ目の変化は、高市政権発足と日本の成長期待高まりの動きです。

石破前首相の辞意表明を受け大幅上昇で幕を開けた2025年秋の「政権選択相場」。自民党総裁選で「日本列島を強く、豊かに。」と訴えた高市早苗氏が勝利、続いて首相指名選挙を勝ち取り高市政権がスタートしました。日本の成長期待の高まりを背景に、日経平均が4万円台から5万円台に上昇したことは記憶に新しいところです。

高市首相は、10月の所信表明演説に続き、11月に総合経済対策を発表しました。「生活の安全保障・物価高への対応」、「危機管理投資・成長投資による強い経済の実現」、そして「防衛力と外交力の強化」の3本を柱とするものです。

特に、「危機管理投資・成長投資による強い経済の実現」は、成長戦略の肝として、戦略的な財政出動を通じて対応を強化することを掲げており、日本の産業の高度化に加え、株式市場での話題・テーマとしても引き続き脚光を浴びそうです。

③AI・半導体関連の影響上昇
3つ目の変化は、AI・半導体関連の産業や株式市場への影響の高まりです。

2025年1月、トランプ米大統領は、「スターゲート」と名付けた事業を発表。今後4年間で米国内のデータセンターなどAI関連のインフラ整備に5000億ドル(約78兆円)を投資する方針です。国内でも、データセンター向け送電網強化のための大型投資や、生成AI需要の高まりとそれに伴う半導体生産の強化の動きが鮮明になりました。

株式市場では、米半導体大手エヌビディアに対する注目度が更に上昇。同企業の決算を巡って、しばしば株式市場が一喜一憂しました。

エヌビディアの株価を巡っては、日本株では半導体製造装置大手「 アドバンテスト 」の連動性が高まっています。アドバンテストは、「 東京エレクトロン 」や「 ソフトバンクG 」同様、日経平均株価の変動に対する寄与度が大きく、株価指数への影響が大きいという点は念頭に置く必要がありそうです。

指標面に垣間見える2つの“外れた動き”

2025年の日本株市場は上記の3つの大きな変化をドライバーに、日経平均など市場全体の動きを示す指数は大きく上昇しました。そのなか、指標面では“外れた動き”も一部で垣間見えます。

①NT倍率急上昇
②日米金利差とドル円相場の乖離拡大

①NT倍率急上昇
NT倍率とは日経平均株価指数(N)と東証株価指数(T)の対比(N/T)を表した指標です。NT倍率の上昇は、相対的に日経平均株価指数が買われている状況を、反対に同倍率の低下は東証株価指数が買われている状況を示唆しています。

日経平均株価は前述のアドバンテスト、東京エレクトロン、ソフトバンクGなど値がさ株(株価水準が高い銘柄)の影響をより強く受けます。また、東証株価指数は銀行など時価総額の大きい大型株の影響を受けやすいと言えます。

2025年は年後半にNT倍率が急上昇し、2020年来の平均約14.2倍から外れて2021年以来の15倍超となりました。中長期的には、日経平均株価指数と東証株価指数は収れんして推移する傾向があるため、2026年を見据えては、東証株価指数を構成する大型株が買われやすい展開となる局面も想定されます。

②日米金利差とドル円相場の乖離拡大
金利と為替の推移を見ると、日米長期金利差(米金利ー国内金利)の拡大は為替相場でドル高円安、縮小はドル安円高となる傾向が窺えます。

2025年、米国では利下げ期待を背景に長期金利は低下傾向が強まり、日本では利上げ観測、高市政権の積極財政を背景に長期金利は上昇基調が鮮明となっています。

そのなか、2025年後半以降、日米長期金利差は縮小する一方、為替相場ではドル高円安傾向となっており、中長期の推移からはやや外れた展開となっています。2026年を見通す上で、金利差を受けドル安円高に収れんする局面も想定されそうです。

自社株買いが期待される銘柄

2025年の日本株市場は3つの変化を背景に大きく上昇する一方、平均的な展開より外れた動きも見受けられ、2026年にはその揺り戻しが起きる局面も想定されます。

こうした局面では、相場の変動に相対的に左右されにくい好業績を裏付けとする「株主還元」などの切り口があらためてフォーカスされる場面が予想されます。

以下は、過去10年間を通して自社株買いの実施回数が多く、また12月~翌3月の間にも頻繁に実施している企業です。

株主還元に積極的な企業は株価パフォーマンスも良好に推移しやすい傾向があります。自社株買いが期待される「株主還元積極銘柄」として注目してみてはいかがでしょうか。

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