7つのステップでビジネスモデルを可視化する決算分析の技術

今日からお金賢者になれる「1分書評」/ 日興フロッギー編集部

決算書はビジネスモデルの宝庫! 会計知識ゼロでも「企業の稼ぎ方」が見えてくる。金融インフルエンサーが教える、投資にもビジネス戦略にも効く――決算分析の実践バイブルです。

物語のように決算書を読み、狙い目企業を発掘する方法

やや硬めのタイトルよりも、著者名の「妄想する決算」の方が本書の魅力をよく表しています。本書は「決算書の読み方を教える本」ではありません。「決算書は難しいと構えなくて大丈夫。読めば自然とわかる」と気づかせてくれる本です。著者の手にかかると、平板に見える数字の羅列が立体的に動き出し、企業の思惑や戦略まで浮かび上がってくる。企業ドキュメンタリーを追体験するような筆致からは、扱う素材が決算書とは思えないほど。「分析7ステップを自分でもやってみたくなる」のが、また美味しい。

ケーススタディも豊富です。オリエンタルランドや日立製作所、日産自動車など話題の企業の決算を紐解きながら「どんな仕組みで利益を生み出しているのか」「どの事業が本当の稼ぎ頭なのか」など探ります。「円安やインバウンドの影響を高島屋から読み解く」「紅麹問題発覚後の小林製薬を読み解く」などテーマ選びも秀逸で、ニュースの“裏側”を理解するトレーニングにもなりそうです。

また、ビジネスモデル比較として面白いのが、YouTuber事務所の「UUUM」(※2025年2月に上場廃止)とVTuber事務所の「ANYCOLOR」。この2社、似た業態に見えますが前者の業績は停滞し、後者の利益はその10倍。いったい、どうして? 違いは収益構造にありました。YouTubeは「広告収入頼りでグッズ販売に弱い」「権利関係はクリエイター本人にあるため、退社しやすい」のに対し、VTuberは「広告に依存せず、投げ銭やグッズなどのコマースが主軸」「権利を事務所が持つため、タレント離脱のリスクが少ない」といった対比が鮮やかに。ビジネスモデル研究にも役立ちそうです。

数字の背後にあるのは、人と仕組みのドラマ、といったところでしょうか。その姿を“妄想”しながら読み解くうちに、決算書が経営の物語へと変わっていくーー。投資家にもビジネスマンにも、決算の面白さを再発見させてくれます。著者の分析対象への愛情を感じられて、読むうちに不思議と優しい気持ちになる、というオマケ付きです。

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