40年ぶりの大改正 激変の労働基準法で働き方が変わる!?

フロッギー版 お金で得するオタク会計士チャンネル/ 山田真哉

みなさんこんにちは! 公認会計士兼税理士の山田真哉です。

今回は、40年ぶりに大改正を控えている労働基準法について解説します。まさに今、最終調整がされていて、来年の国会で審議される予定です。厚生労働省の労働政策審議会や分科会などで、労働組合と経営者、そして学者の方々が相当熱く議論をしています。一体どういう改正になるのか。全部で20項目あるので、ご自分が関係しそうなところをぜひチェックしてください。

お送りする内容は、以下の通りです。

・フリーランスも労基法⁉
・残業時間が短くなる!
・管理職の定義が変わる!
・出勤時間が変わる!
・休日に連絡はアウト!
・副業・兼業はしやすくなりそう

フリーランスも労基法適用⁉

①まず1つ目は、労働者の範囲拡大です。もともと雇用契約なら労働者、業務委託契約なら労働者ではない(フリーランス)という大前提がありました。しかし、業務委託契約だったとしても、実態は労働者というケースがあります。例えば、週5日出社で机もあり、上司もいるとなると、これは実質労働者といえます。また、Uberの配達員なども、命令を受けて仕事をしている労働者ではないかという議論があります。現在、このようなケースは労働基準法が適用されていませんが、労働基準法の範囲の判断基準を明確にする方向で、改正の議論が行われています。もう少し詳しく説明すると、労働基準法上の「労働者性」とは、「指揮監督下の労働であるか」と、時給等の「報酬の労務対象性があるか」の2つの「使用従属性」が要件になっています。この2つに当てはまっているフリーランスの方は、改正すると労働基準法の適用を受けることになるでしょう。

②2つ目は、家事使用人・家政婦(夫)についてです。今でも長時間労働をNGとするガイドラインはあるものの、労働基準法が適用されていません。時代に合わせて労働基準法を適用させる改正になりそうです

③そして3つ目、これまで事業場ごとの単位だった労使協定や就業規則の作成を企業単位にする。現状でも、ある一定の要件を満たせば本社が一括して就業規則を決めても良いのですが、それを他のケースでも適用しようという改正です。

④4つ目、労使の交渉などでは、「労働組合」、もしくは労働組合がないと「過半数の代表者(労働者の過半数を代表する個人)」が労働者の代表になります。この「過半数の代表者」の位置づけや役割を明確化しようという改正です。同時に、代表者の負担を軽減するために、複数人の選出や任期制といった検討もされています(※現状も要件を満たせば可能)。

残業時間が短くなる

5つ目からは、「時間」についての項目です。

⑤現在、時間外や休日労働の上限は、月45時間・年間360時間以内と決められていますが、特別の事情がある場合は月100時間・年720時間未満という特例があります。今回の改正でこの特例を廃止すべきという議論が起きています。ただ、中小企業は慢性的な人手不足で、やっていけなくなるのではないかという懸念があります。ですので、あらゆる企業の残業がただちに月45時間までになるとは思いませんが、徐々に上限は下がっていくと思われます。

⑥6つ目、そんな残業時間ですが、時間外や休日労働の情報開示をすべきという話になってます。これは社外に対してのアピールや、長時間労働しにくい雰囲気を作るためです。また、社内に対しても、残業時間数の情報を開示すべきだという検討もなされています。

⑦7つ目、小売店や飲食店、旅館、理美容、病院、薬局などで常時10人未満の労働者が働いている事業所の場合、例外で週44時間労働が認められています。それを他の会社と同じように週40時間労働にする改正です。おそらく労働者保護の観点から、廃止されるでしょう。ただし、家族経営や地域密着型企業にとってはかなり厳しい内容なので、段階的に週40時間になるかと思われます。

⑧8つ目はフレックスタイム制についてです。テレワークと通常勤務を併用する場合、フレックスタイム制は非常に使いにくいです。というのも、フレックスタイム制はコアタイムがあり、その前後はいつ出社しても良いという勤務です。テレワークの時は使いやすいですが、通常勤務時には8時から17時の勤務にしたくても、フレックスにするなら全部フレックス、フレックスにしないなら全部ダメという法律になっています。

今の状況に合っていないので、部分適用もOKにする改正が検討されています。こちらはあまり反対意見もないので、実現するでしょう。

管理職の定義が変わる!
連続勤務の日数が変わる!

ここからは連続勤務に関する項目です。

⑨管理監督者(いわゆる管理職)は残業代がつかない、という話を聞いたことがあるでしょうか。労働基準法では、管理監督者は労働時間や休日などの上限規制は適用外です。監督する側であれば、勤務時間は自由にできるという理由です。

管理監督者というのは、部長などの役職ではなく、それぞれの職務内容や権限によって決められています。例えば、管理監督者になりやすい店長という役職でも、長時間労働で裁判になると、「名ばかり店長で、実情は管理監督者ではないから残業代払いなさい」といった判例もあります。

そこで今回の改正では、まず管理監督者の要件を明確化する。管理監督者であっても、健康・福祉確保義務によって健康管理をしっかりする。休日の確保や、長時間労働になった場合の産業医との面談が義務化される方向で話が進んでいます。

⑩今の労働基準法では、4週間で4日休みがあればいいというルール(4週4休)もあります。ですので、第1週に4日間の休日を取り、その後働き続けて第8週に4日間休日を取ることも可能です。つまり、制度上48日間連続勤務できるわけです。繁忙期、システムトラブルや大事故など連続勤務が必要になることもあるので最大48日になっているのですが、それを2週間で2日は休み(2週2休)に改正しようとしています。さらに、健康面を考慮して、連続勤務は最大13日までにするという話にもなっています。

ちなみに、法定休日は4週間のうちに4日あればいいので、毎週日曜日と決めている会社が多いと思います。それは通達で指導されているだけなので、きちんと法律にも書きましょうという改正です。ですので、改正は間違いないですし、すでに法定休日が決まっている会社にとっては、実務上の影響もないです。

休憩時間・勤務時間が変わる!

⑪そして11番目。労働時間が6時間を超えると少なくとも45分間、8時間を超えると少なくとも1時間の休憩が必須になっています。この休憩は一斉に付与しなければいけないというルールになっていますが、改正が検討されています。

なぜなら、フレックス制や裁量労働制の場合、労働の実働時間が関係ない働き方なのに、その場合でも必ず1時間付与しないと罰則なのはおかしいという声が出ているからです。

⑫また、「勤務間インターバル」という新しい用語が出てきました。これは、終業してから翌日の始業までに一定の休憩時間を設ける話です。すでに、医師やトラックの運転手などは、仕事と仕事の間は最低9時間空けることになっています。

僕自身、大きな会計事務所に勤めていた頃、繁忙期は毎日24時まで働いて、翌朝9時に出社していました。これだと9時間しか勤務間インターバルがなかったわけです。これをヨーロッパ等の諸外国に合わせて、11時間で導入しようとしています。つまり、24時まで残業したら翌日の11時以降じゃないと働いてはいけないという改正です。

ただ、さまざまな業種がありますし、トラブル対応や突発的な仕事が舞い込んできた場合も、11時間というインターバルでやっていけるかという問題があるので、すんなり導入されるかどうかはちょっと疑問です。

休日に連絡はアウト!

次に、休日に関する項目を見ていきましょう。

⑬休日にメールが来て、対応しなくてはいけないこともあると思います。しかし、ヨーロッパでは、休日に労働者が働いてはいけない、つながらない権利ということで、法制化が進んでいます。休みの日まで、連絡があるかもしれない状態は、安心して労働から解放できないというわけです。

日本でもこの導入が検討されています。社外の顧客からの連絡も対応しなくていいのかと思ってしまいますが、だからこそきちんと法制化して、顧客側も連絡してはいけないとすることが検討されています。当面はガイドラインで規制されると思いますが、将来的な法制化はあり得るかと思われます。

⑭14個目は有給休暇の時季指定義務についてです。おそらく多くの方は20日間程度の有給休暇を持っているかと思いますが、そのうちの5日間は時季指定義務があり、会社側が5日間は休ませる義務があります。とはいえ、育児休業から復帰したばかりの人や退職予定の人も対象なのかという疑問が生じているので、改正が検討されています。

⑮次は時間単位の有給休暇です。今でも4時間や2時間、時間単位で5日間分の有給を使うことができるのですが、この日数を増やすという検討です。個人的には時間単位で、有給が使えると使いやすい気もするのですが、労働組合的には1日単位で休暇を確保することが大事という主張もされているので、どうなるかわかりません。労使が合意すれば、10日間分でもいいとなるのかもしれません。

⑯現在、有給休暇の付与の要件としては、全労働日の8割以上出勤が必須です。諸外国にはない要件なので廃止が検討されています。とはいえ、経営者側は、そもそも出勤していないのに、なぜ有給が必要なのかという反論をしています。

割増賃金の引き上げ?
副業・兼業がしやすくなりそう

⑰17番目は割増賃金の引き上げです。長時間労働を規制するため、割増賃金を上げれば、会社側が残業をさせないのではないかというわけです。特に夜10時以降の深夜割増をさらに上げるという話もあります。経営者側からは、いろんな働き方や人がいるので、引き上げは慎重にした方がいいのではないかと議論されています。

⑱18番目は副業・兼業時の労働時間通算や割増賃金についてです。もし8時間労働だとすると、9時間になれば割増賃金が支払われます。勤務先が1社であれば計算しやすいですが、2社で働いていると、2社が話し合って計算し、どちらかが割増賃金をつけることになります。しかし、実務上煩雑なので、労働者側が「副業で他の会社で働いたことを言わない」といったことが横行しています。これでは国が掲げている「副業推進」が進まないということで、副業の場合は「労働時間を通算しない」、「割増賃金なし」という改正が検討されています。

労働組合側からは、働き方改革で長時間労働の是正をやってきたのに、割増賃金なしは時代に逆行していると猛反対されています。一方、経営者側としては、労働時間の通算が難しいからといって副業しないのも変な話だし、そもそも副業は労働者本人の希望で、会社から命令されて残業するのとはわけが違うといった感じで、話し合いが平行線です。ただ、こちらについては何かしらの決定が近々されるかと思われます。

⑲19番目は裁量労働制についてです。裁量労働制とは、みなしで働く時間数は決まっていて、それに応じた給料だけれど、実際に働く時間は自由という制度です。適用されるのは、システムエンジニアやデザイナー、研究者など特定の業種20業種に絞られています。また、企画や立案の業務であれば裁量労働制でもいいのですが、複数業務をやっていると適用されないといったように使い勝手が悪いです。この裁量労働制の適用を拡大しようという改正が検討されているのですが、労働組合側は長時間労働を助長すると反対しています。どうなるかは現在不明です。

⑳そして最後ですが、農業や畜産業や水産業などは、労働時間の規制は適用除外です。ですが、労働者保護を考えたらある程度の管理は必要ということで、少なくとも健康・福祉確保措置といった規制は入れる方向で話が進んでおります。

注意すべき会社は?

というわけで、ダイジェストで20個解説しましたが、みなさんに関係しそうなものはあったでしょうか。特に残業時間が多い会社は要注意です。残業時間の上限が低くなるだけではなく、情報開示もしなければいけなくなり、さらに11時間の勤務間インターバルとなると、様々な制約が出てくると思われます。また、休日にどこまで業務対応するかについても、今のうちから考えておいた方が良いでしょう。

一方で高市内閣に変わり、労働時間の緩和が行われる可能性もあります。さて、一体これからどうなるのか、新しい情報が出てきましたら、いち早くお届けしようと思います。

というわけで2025年11月24日時点の情報でした。
よかったら今後ともごひいきに。ば~い、ば~い!