投資や資産形成をもっと楽しくするためにピッタリの書籍を、著者の方とともにご紹介する本連載。つばめ投資顧問代表で投資系YouTuberでもある栫井駿介さんの『年率10%を達成する! プロの「株」勉強法』を紹介していますが、2回目となる今回は、長期投資で買うべき企業をどう選ぶのかについて見ていきます。[PR]
長期投資で買うべき企業のポイント
前回の記事で、株式投資は「長い目で見る」ことが重要だとお話ししました。では実際に長期投資するとして、どんな企業の株を買えばいいのでしょうか。それぞれの指標がどのような状態なら買いなのか、よく整理する必要があります。もっとも、例えば「ROE(自己資本利益率)が8%以上なら買い!」というような単純な指標は決してなく、あらゆる情報を総動員してなお、絶対の正解に辿り着くことはありません。ある程度の知識がある投資家でも、どんな企業を買えばよいのかということは永遠のテーマなのです。
例えば、いくら業績がよい企業でも、株価が割高すぎては下落する可能性が高いですし、成長企業が突如ダメになってしまうこともあります。こればかりは未来のことなので、何も確かなことなどないのです。
ただ、正解がない中でも、次のようなチェックポイントをクリアした企業は長期的に業績を伸ばし、それにしたがって株価も伸びる可能性が高いものです。
業績が伸びていること
成長意欲があること
ビジネスの強み(堀)があること
財務的に無理がないこと
割高すぎないこと
これらのポイントを、順番に見ていきましょう。
業績が伸びていること
長期投資は、原則として企業の成長に賭ける投資です。したがって業績が伸びる見込みのない企業に投資しても、時間を無駄にする可能性があります。相場変動により一時的に株価が上がることもあるのですが、長くは続きません。相場変動を読むことは極めて難しく、ギャンブル的な投資になってしまいがちです。一方で、業績は正確には予想できないまでも、ある程度の方向性を見出すことは可能です。
業績の方向性を探るために最も有効なのが、過去数年の業績推移です。少なくとも、ここ数年ずっと右肩下がりになっている企業が急成長することは多くありません。戦略の転換などにより復活を遂げるケースもありますが、初心者がその兆候を見極めるのは至難の業です。結局は、素直に業績が伸びている企業を買う方が、成功確率が高いのです。
成長を確認する上で最も大切なのは、純利益の推移です。売上が伸びていても、利益率が下がり続けていれば、それは「成長」ではなく単なる「肥大化」の可能性があります。最終的に株主のものとなるのは純利益ですから、これを確認することが近道です。ただし、純利益が増えていても、増資によって1株あたりの価値が薄まっている可能性があるので、1株あたり利益(EPS)もあわせて見るのが望ましいと言えます。
成長意欲があること
過去の業績がよくても、そこからさらに成長する意欲がなければ、成長は持続できません。とくにIPO直後の会社では注意が必要です。IPOをするためには業績を伸ばさなければなりませんし、社内体制の準備など大変な手間がかかります。しかし、いったん上場すると創業者には多額の資産が舞い込み、従業員も「祭りの後」といった感じでだらけてしまう場合が多いのです。株で多額の資産を手にした幹部社員も退職し、上場前の勢いがまったく続かないケースを何度となく見てきました。これがいわゆる「上場ゴール」と呼ばれる状態です。
そのため、経営者の意欲や戦略を見極める必要があります。有効なのが「経営計画」です。ここでは経営者が、今後数年、場合によっては数十年にわたる経営の方向性や会社のポリシーを示しています。有価証券報告書で言えば、「2 事業の状況」における「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載されています。
多くの企業が中期経営計画をパワーポイントの資料で作成し、輝かしい未来を多くの図表を交えて語っていますが、よく見ると中身があまりないというケースが珍しくありません。それに対し、有価証券報告書は基本的に文字情報のみなので、中身の濃さは一目瞭然です。
中には、経営者自ら書いたと思える魂の入った文章を目にすることがあり、そのような会社には信頼感を持てます。最近では経営者自らのプレゼンテーション動画を観ることもたやすくなってきました。これらを総合的に見て、成長戦略とその意欲を推し量ることが、企業の将来を見極めるために確かに役立ちます。
ビジネスの強み(堀)があること
業績が伸びていて経営者に意欲があっても、時に「気合と根性」で業績を無理やり伸ばしている企業も散見されます。このような企業は社員に厳しい営業ノルマを課していたり、一時的なブームに乗っていたりするだけの場合があります。
例えば、「いきなりステーキ」で一気に業績を伸ばしたペッパーフードサービスはその後、ブームの終焉とライバル店が多く登場したことであっという間に経営危機に陥ってしまいました。無理な出店計画はもとより、「赤身肉を焼いて立ち食いする」というビジネスモデルに競争優位性がなかったことが衰退の要因と考えられます。経済学の法則でも、誰でも真似できるビジネスはやがて収益性が下がってしまう傾向があるのです。
この点を重視しているのがウォーレン・バフェットです。彼はビジネスの競争優位性のことを、お城を守る「堀」にたとえました。「堀」を持つ企業なら、他社に真似される心配が少なくなります。
バフェットが保有する銘柄に「コカ・コーラ」があります。世界最大のソフトドリンクメーカーであるコカ・コーラは、世界中でビジネスを行っていて、誰もが一度は口にしたことがあるでしょう。今さらこれに対抗して新たなコーラを開発しても、ほとんどの人から見向きもされないと思われます。それほどコカ・コーラは「堀」に守られている企業であり、株価も長期にわたって伸びています。
買うべき企業を探す際には「この企業のビジネスには堀があるか」をよく考えるようにしてください。
財務的に無理がないこと
日本では「無借金経営」「自己資本比率80%」など、財務の安定性を重視する企業が多く見られますが、守りに入りすぎて成長の機会を逃している企業もあります。企業が成長を目指すなら、時には借入を駆使してでも業績を伸ばすことを考えてほしいものです。適切な借り入れを成長につなげている企業はROEが高く、株主にとって魅力的と言えます。
逆に、無理な財務状況で拡大を目指す企業も存在します。新興企業の中には営業キャッシュ・フローがマイナスなのに借入や増資によって資金調達を繰り返すところも存在しますが、この状態が続くとやがて資金が枯渇します。また、自社の規模に匹敵する、またはそれ以上の買収を行う企業にも注意が必要です。
財務的な危険性を見極めることは簡単ではありませんが、初心者は以下の点をチェックするとよいでしょう。
・営業(フリー)キャッシュ・フロー:マイナスでないか
・借入金:売上の規模に対して増え続けていないか
・のれん(企業を買収した時に生じるもの):自己資本より大きくないか
大切なのは「何かおかしい」と思った企業は避けることです。財務的に無理をしている企業は、なんの前触れもなく突然窮地に陥ることがあるのです。
割高すぎないこと
精いっぱい企業分析して、やっとのことでよい銘柄を見つけたとしましょう。ここまでしたらすぐにでも株を買いたくなってしまいますが、最後にもう一度、我に返って注目してほしいポイントがあります。それがPER(株価収益率)などの「バリュエーション」です。
どんなによい企業で、どんなに成長していても、高すぎるバリュエーションの株が上がり続けることはなく、むしろ下がる確率が圧倒的に高いものです。なぜなら、長期的な株価は、最終的には業績の水準に収束するからです。割安に評価されている銘柄なら上がる余地がありますが、割高すぎる銘柄もこの法則にしたがい、実力どおりの水準にまで戻ってくることになるからです。
例えば、2000年前後のITバブルでは、IT関連銘柄であればPERなど無視して上がり続けました。日本を代表するIT銘柄といえば当時もソフトバンク(現・ソフトバンクグループ)でしたが、ピーク時の同社のPERは何と1000倍あったのです! 平均が15倍とされる中で、あまりに高い数字と言わざるを得ません。
その後、ITバブル崩壊により、ソフトバンクの株価は一時100分の1にまで下がりました。多くの投資家が痛い目を見たはずですが、現在でも同じような水準で取引される銘柄は存在します。すなわち、歴史は繰り返すのです。このような銘柄の特徴として、経営者がカリスマ的で、時流に乗ったビジネスを行っていることなどが挙げられます。
企業や経営者が悪いということではありません。ソフトバンクもITバブル崩壊を乗り越えて高値を更新しましたから、当時の投資家の「期待」を実現したと言えます。しかし、株価が割高な時に買った投資家にとっては、いかに長い間、報われない投資が続いていたことでしょう。このようなことになりたくなければ、初心者はPER50倍を超えるような銘柄には手を出さないことをお勧めします。
ここまで、長期投資の銘柄選びのポイント5つを見てきました。ぜひこれらを意識して、「よい企業」を探してみてください。

