「いつ売る?」バリュー株投資で必要な売りの考え方

投資がもっと楽しくなる!日興フロッギー選書/ 栫井 駿介クロスメディア・パブリッシング

投資や資産形成をもっと楽しくするためにピッタリの書籍を、著者の方とともにご紹介する本連載。つばめ投資顧問代表で投資系YouTuberでもある栫井駿介さんの『年率10%を達成する! プロの「株」勉強法』より、最終回の4回目となる今回は、「株の売り時」について見ていきます。[PR]

売ることは考えない方がうまくいく

前回の記事ではバリュー株投資の「買い時」について紹介しましたが、買うタイミング以上に難しいのが、「売るタイミング」です。

株価が下がり出すとどこまで下がるか分からず不安になりますし、上がったら上がったで早く利益を確定させようと焦ってしまいます。しかし、売ったらすぐに大きく上がることも珍しくありません。誰かが自分の行動を監視して株価を操作しているのではないかと感じることさえあります。このようなことを繰り返すほど、売りに対して迷いが生じてしまうのです。

この迷いに対して、ひとつ答えを出すならば、「可能なかぎり売らない」という選択肢を提案します。なぜなら、あなたが本当によい企業に投資をしているなら、その企業がよい企業であり続けるかぎり、業績の成長によって株価も伸び続ける可能性が高いからです。

そもそも投資とは企業の成長に賭けるものであり、目先の株価変動によって利益を得ようとするのは機を窺う「投機」、すなわちギャンブルにすぎません。株価変動ばかりを意識していると、腰を据えた長期投資を行うのは難しくなってしまいます。

株をなるべく売らないというのは、単にこのようなポリシーだけの話ではありません。株価変動の特性として、大きく上昇するのは数十年のうちわずか数日だといいます。『敗者のゲーム』(チャールズ・エリス 日本経済新聞出版 2015)によると、過去72年間のうち、最も上昇率が高かった5日を除くと、その間の利益は半減してしまうということです。

この大きく上昇する瞬間を「稲妻が輝く瞬間」と言うのですが、この一瞬が訪れる前に株を手放してしまったら、あなたはその株を買った恩恵を受けることができず、それまでの苦労が水の泡になってしまいます。

「稲妻が輝く瞬間」のタイミングを見極められればよいのですが、それができるなら誰も苦労しません。タイミングの見極めが難しいからこそ、いっそ持ち続けたほうが、仮に時間がかかったとしても、「稲妻が輝く瞬間」の恩恵を受けられる可能性が高いのです。

ある運用会社が行った調査では、個人投資家のうちパフォーマンスがよかった人の属性を調べると、なんと一番よかったのが「すでに死んでいる人」、すなわちまったく売買をしなかった人だというのです。そしてその次に成績がよかったのが「株を持っていることを忘れていた人」だったといいます。

このように、下手な売買は投資のパフォーマンスを下げる結果になってしまいます。タイミングを読むのが難しい以上、下手に売買せず、持ち続けるというのが、個人投資家にとって最も賢明な選択なのかもしれません。

売らなければならないパターン

それでも、売らなければならない時もやってきます。そのようなタイミングには、およそ3つの場合があります。

①必要以上に割高になった時

②自分の判断が間違っていた時

③別の銘柄に入れ替える時

「➀必要以上に割高になった時」というのは、想定される成長を大きく超えて、株価だけが上昇した時です。例えば、PERが100倍になってしまったら、それを正当化できる利益になるまでは、どんなに業績が好調に推移したとしてもかなり時間がかかります。株価が下がらないにしても、合理的に考えられる上昇余地、すなわち「安全域」はなくなってしまいますから、利益確定させることが望ましいと言えるのです。

もうひとつは、「⓶自分の判断が間違っていた時」です。分析が十分ではなくて、思わぬリスクを見逃していたり、あるいは企業を見続ける中で、思ったように業績が伸びないということになると、当初想定したストーリーが間違っていた可能性があります。

もしあなたが間違っていなかったとしても、外部環境の変化によって、その企業の成長が難しくなる場合もあります。

私の事例で言えば、ソフトバンクを保有していたのですが、2020年に菅政権が誕生し、携帯料金の引き下げを目玉政策に掲げたことで、今後値上げが難しくなることから同社の業績の成長性は厳しくなったと考えて売却することにしました。このように、前提が変わった時には、それまでの考えにとらわれず、速やかに行動に移すことも投資家として必要な能力です。

「⓷銘柄の入れ替え」という判断は、そこまで重要ではないかもしれません。よい銘柄だと思えるなら、下手に売らずに持ち続けるという判断は決して間違っていないからです。それでも、あまり持っている銘柄数が多くなりすぎると、パフォーマンスはどんどんインデックスに近づきますし、管理するのも難しくなっていきます。そのため、銘柄数を絞って、その中で入れ替えを行っていくことも考えなければなりません。

私の場合、保有する銘柄は10銘柄前後に絞り、よりよい銘柄が見つかった時には、どれが自分の中で今ひとつかを考え、順次入れ替えを行うことにしています。プロサッカーで言うならば、J1とJ2の入れ替え戦のようなものです。これによって、保有銘柄を常にJ1の状態に保つのです。

あとは、株価の動きに関係なく、お金が必要な時に売って現金化すればよいのです。お金を増やすことも大切ですが、お金は使わないとその価値を発揮できません。

大きなお金が必要になった時に株を売って使うというのが、最も報われるお金の使い方だと思います。その時には、個別の銘柄の損益にはあまりこだわらなくてよいでしょう。その際に残すのは、より気に入っている銘柄という基準で十分です。株式は不動産などと異なり、クリックひとつで現金化できることが大きなメリットです。

バリュー株投資で最も大切なこと

バリュー株投資で最も大切なことは何かと聞かれれば、私は「忍耐」と答えます。

買いに関しても、下手に株価水準が高いところで慌てて買わないことが大切になりますし、一方で保有する銘柄が下がった時には慌てて売らず、じっと我慢して、その企業の将来性を冷静に見つめることが必要になります。

そしてやがて来る「稲妻が輝く瞬間」に居合わせようと思ったら、小さな利益で終わらずに、大きな利益が出るまで持ち続ける覚悟が必要なのです。

長期投資でうまくいくために大切なのは、上がった/下がったの「勝率」ではありません。むしろ、「大きく上がる少数の銘柄をどれだけ伸ばせるか?」ということが、最終的な資産額に大きく影響します。

バリュー株投資とは、なるべく安く買うことでリスクを避け、できるかぎり持ち続けることによってリスクをとり、その対価として資産を増やすものです。この考え方を身につければ、あなたも長い時間の中で必ず資産を増やすことができるでしょう。

 

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