投資歴40年のかんちさん。不動産バブルやその崩壊、ITバブルにリーマン・ショック、コロナショックもすべて経験してきた超ベテラン投資家です。40年の間に築いた資産は9.5億円で、年間の配当金は2000万円超。そんなかんちさんが自身のポートフォリオのなかから有望な銘柄を教えてくれました。優待や配当に期待できる銘柄や成長性のある割安銘柄など、興味深い銘柄ばかり。ぜひ自分の投資の参考にしてみましょう。
インフレは「資産加速器」である
「インフレはいわば『資産加速器』です。株だろうが不動産だろうが金だろうが、持っていればインフレとともに値上がりしてくれる。現金だけではダメだと思います。年2%のインフレなら現金は1年で2%、価値が目減りすることになるからです。『投資しているかどうか』で貧富の差が拡大してしまう社会になりつつあります」
と警告してくれたのは祖父から続く投資家のDNAを受け継いだ熟練投資家のかんちさん。その言葉通り、日本ではインフレとともに株高が進んでいる。
フロッギーがかんちさんへ投資歴などを取材した2018年当時の資産は5億円。「資産加速器」で資産はいくらまで増えたのだろうか?
「9.5億円です。あと一歩で大台ですが、今年(取材当時は2025年)は皆さん調子がいいですから。銘柄でいえば銀行株が寄与してくれていますが、ただ個々の動向はあまり細かくは見ていません。なにしろ、これだけの銘柄に分散しているので」
と言って、かんちさんが見せてくれたのは保有株の一覧表。A4用紙にして10枚以上。1枚1枚に細かく銘柄名が書かれており、保有銘柄数の合計は圧倒的な量となりそうだ。
「600銘柄ほどになります。そのうち約450銘柄が最低単元だけ持っている優待株。優待の新設や廃止、拡充などがあるので適時開示情報は毎日見ていますが、なにしろ数が多いので見落としてしまうこともあります。『あの会社の優待、今年は来ないな』と思ったら優待が廃止されていた、なんてことも」
3つのタイプから12銘柄を紹介!
今回の取材の趣旨は、かんちさんが長期的に良いと考えている銘柄を教えてもらうことだ。「600銘柄のなかには『主力』『準主力』と位置づけ、値上がりに期待しながら資金を多めに傾けている銘柄があります。主力は20銘柄、準主力は120銘柄程度です。主力銘柄については決算発表や突発的な悪材料などにも目を配りながら値動きを追っています」
主力、準主力銘柄のなかから、かんちさんが特に注目している銘柄を3つのタイプに分けて教えてくれた。
②魅力的な優待があり、節約との相性がいい銘柄
③売上、利益、配当金が増えている銘柄
前編の本記事では、かんちさんが①・②の観点から保有している銘柄を見ていこう。
優待&残存者利益【フジオーゼックス】
「①~③のタイプは明確に分かれるわけではなく、複合的な銘柄もあります。たとえば「 フジオーゼックス 」は①の配当銘柄であり、②の優待銘柄でもあります。株主優待では100株で2000円分のVISAギフトカードがもらえて、しかも100株増えるごとに2000円分ずつ増えていく。上限の1000株以上なら2万円分です」
フジオーゼックスの優待は1年以上の継続保有が条件で、権利確定日は3月末です。
会社予想配当利回りは2.71%だが、今後の業績にも期待が持てるという(2026年1月5日時点)。
「エンジンバルブではトップクラスのシェアがあります。EV(電気自動車)の普及でガソリン車は世界的に減少傾向ですが、それ以上にエンジンバルブを作る会社が減っているのか、残存者利益で稼いでいる。四季報でも毎号のように『残存者利益』という言葉が載っているほどで、2024年3月期から利益が増えています。トランプ関税の逆風は吹いていますが、今後も残存者利益で稼いでくれるのでは」
残存者利益がある限り、配当と優待を受け取りながら持っていられそう。
ファッション優待券と配当の二刀流【ワールド】
次の銘柄も、かんちさんが優待と配当に着目している銘柄だ。
「優待ではアパレルの『 ワールド 』が魅力的です。100株で1500円分の株主優待券が年に2回もらえますが※、7月に内容の拡充を発表しました。1000株以上の保有区分が新設され、1000株以上かつ3年以上の保有で5万円分(年間では10万円)もらえるようになり、私も思わず買い増してしまいました」
アンタイトルやインディヴィ、タケオキクチなどのブランドを展開するワールド。5万円は使い出がありそうだ。
ワールドは11月にも株主優待の拡充と株式分割を発表しています。分割は2月28日を基準日として1:2で行う予定です。分割後は100 株以上200株未満(分割前50株以上100株未満)の株主も半年以上の保有で500円分、3年以上の保有で1000円分の株主優待券を年に2回もらえる予定ですよ。
「最近ではM&Aも進めていて、使えるお店も増えています。しかも株主優待券はファミリーセールでも使えるし、会社予想配当利回りも3.57%と悪くない水準なので、妻や子どもにも勧めています(2026年1月5日時点)」

かんちさんが優待券を管理しているクリアファイル
長期で持てる高配当【INPEX】
配当面に着目した銘柄として教えてくれたのは石油やガスなどの資源を開発する「 INPEX 」だ。
「日本政府がINPEXの『黄金株』(買収など重要な議案に対して拒否権を与えられた株)を持っていることからもわかるように、資源の乏しい日本にはなくてはならない会社。INPEXの利益は原油価格次第でブレやすいですが、配当面は安定的です」
INPEXは、2025年度から2027年度の中期経営計画期間中は、1株当たり年間90円を起点とする累進配当を実施する見込みです。2026年1月5日終値時点での会社予想配当利回りは3.20%です。
INPEXにも優待がある。400株以上の保有で1000円分、800株以上の保有で2000円分のオリジナルQUOカードがもらえる。いずれも1年間の継続保有が条件で、保有期間が2年以上、3年以上と長くなるほど増額される。
「PERやPBRは割安な水準にありますし、原油がいらなくなる未来は想像できないので、INPEXは長期でずっと持っていてもいい銘柄だと思います」
利上げ期待でホールド一択【三菱UFJフィナンシャルグループ】
次は配当と成長性に期待できる銘柄だ。
「インフレ時代の本命は金融。日本銀行はインフレを抑えるため政策金利を上げざるをえません。大手地銀もいいですが、今回は『 三菱UFJフィナンシャルグループ 』。中間決算の説明会資料によると、政策金利が0.25%上がるごとに、上がってから3年目の利益が1800億円増える、と三菱UFJは試算しています」
日本の政策金利は0.75%(2026年1月時点)。コアCPIは前年同月比3%の上昇だ(2025年11月分)。
「インフレを考えると政策金利は本来、もっと高い。0.75%の低金利だとインフレは止まらないでしょうし、日銀は利上げせざるをえないのでは。政策金利は2%を超えてくるのではと考えています」
「バランスシート構造が各利上げのタイミングから変わらず、市場金利の上昇幅が利上げ幅と同じ」という前提のもと、0.25%の利上げで3年後の利益が1800億円増える、と同社は試算している。この前提が変わらないとすると、金利の上昇は大きな収益をもたらすことが予想される。
「会社予想配当利回りは2.90%ですが、増益とともに増配も進めていくでしょうから、金利上昇局面ではホールド一択(2026年1月5日終値時点)。ただ、期待先行で買われてもいて、ここから買うとなると発射台が高いのが気がかりではあります」
下げたところで買えればベスト、か。
「ずっと持っているなら安い値段で買えた方がいいですよね。ただ、株数がゼロだと『早く買わなければ』と焦ってしまう。買いたい株数の半分くらいはすぐに買ってしまって、残り半分は暴落や調整を待つ、くらいのスタンスでいいかもしれません」
「累進配当」を採用する高配当銘柄【UBE】
次の銘柄も配当利回りが高い銘柄だ。
「かつての宇部興産が社名変更し『 UBE(ユービーイー) 』になりました。化学製品の会社です。あまり株価が上がらない銘柄が多い化学セクターですが、UBEも割安。PERは約9倍、PBRは0.6倍台と、これ以上割安な銘柄を見つけるのが難しいくらいのバリュー株だと思います」
下値不安が少ないとも言えそう。
「配当をもらうにはいい株です。会社予想配当利回りは4.28%と高いし、2025~2030年度の間、減配を避けて増配していく『累進配当』を目指すと公表しているので、今後の配当にも期待できる(2026年1月5日時点)。材料面でも、関連会社2社の上場準備を進めているので、株価の面でもはずみがつくかもしれません」
優待や配当が魅力的な5銘柄を教えてくれたかんちさん。どれもポートフォリオに加えたくなる銘柄ばかり!
後編では、割安感や成長性があると考える7銘柄を挙げてもらいました。なぜその銘柄を選んだのか? ベテラン投資家のかんちさんに教えてもらいましょう。