建設用3Dプリンター 短工期と省人化で低コスト実現

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人手不足や技術承継の課題が台頭する建設業界で、巨大な3次元(3D)プリンターで家や建物を造る建設用3Dプリンティングが注目されています。鋼鉄の材料を造形する技術を開発した大林組を中心に各社の動向をご紹介します。

大林組、金属3Dプリンター技術を開発

大林組 」は2025年5月、炭素鋼やステンレス鋼など金属の材料を造形できる金属3Dプリンター技術を開発したと発表しました。

建築物は、場所などによって金属や樹脂など材料の使い分けが必要になります。特に手すりやベンチなどの金属部材はデザイン性にこだわった特殊な形のものを作るのに労力やコストが大きくかかる課題があり、低コスト・短工期を実現する手法として3Dプリンター技術の導入が期待されています。

建設用3Dプリンティング

・コンピュータで作成した3次元データをベースに、実際の建築物などを立体的に造形する技術
・省人化や工期短縮による低コスト化、複雑なデザインの実現などが可能
・実用化には使用材料や構造耐力、耐震性などの基準を満たす必要がある

3Dプリンターで鋼鉄材料を造形、複雑な形も自由自在

金属3Dプリンターの造形では、金属同士をつなぎ合わせる「アーク溶接」の手法を応用し、溶接中に凝固した金属を積層していく「WAAM(Wire-Arc Additive Manufacturing)」と呼ぶ方式があります。

大林組は今回、この一般的な溶接の方式を使い、建設工事において多用される炭素鋼の造形で課題となっていた効率的なスラグ(不純物)の除去や造形精度を高められる金属3Dプリンターの開発にこぎつけました。

同社はこの金属3Dプリンターを使って大型モックアップ(構造物)「ザ・ブレンチ」を製造。枝が複雑に組み合わさったような装飾を持つデザイン性の高い構造物となっていますが、従来の鋳造による製造方法と比較してコストや工期が大きく抑えられることが確認できました。

この知見を活かして今後、大林組は特殊な形や多品種・少量生産の金属部材のニーズを取り込もうとしています。

技術の多様化で課題も克服

清水建設 」は、材料を吹き付ける「噴射型」の3Dプリンティング技術を開発しました。

一般的な「押出型」と言われる材料を積層していくプリンターでは造形物の内部に鉄筋を組み込めない課題がありますが、噴射型ではロボットアーム型の3Dプリンターで鉄筋の外周からコンクリート材料を吹き付けるため、鉄筋入りの建築物を作ることができるのが特徴です。

また、建設用3Dプリンティング技術の課題として構造物の耐久性の問題がありますが、同社の開発した噴射型3Dプリンティング技術では、鉄筋コンクリートで作ったものと同等以上の耐久性を持つことが確認できました。実際の製鉄設備の建設工事でも鉄筋コンクリート柱2本の施工に適用し、従来工法と比べて施工期間を約4割短縮できました。

住宅建設では外壁などで3Dプリンター活用

住宅建設でも3Dプリンターの活用が進んでいます。

大和ハウス工業 」は25年12月、傘下のファンドを通じて建設用3Dプリンターを開発するベンチャー企業「Polyuse(ポリウス)」に出資すると発表しました。同社は出資を通じて自社の技術向上などにつなげる方針です。

Lib Work 」は、土を主原料にした材料で壁を3Dプリンターで印刷する住宅「Lib Earth House(リブアースハウス)」を手掛けています。自由な形状やデザインが可能で日本の耐震基準もクリアし、住宅用建物の最高等級である耐震等級3相当の性能がある設計になっています。

西日本旅客鉄道(JR西日本) 」は駅舎建設への適用を目的にグループ会社が3Dプリンター住宅を手掛けるセレンディクスと資本業務提携。25年3月に和歌山県にあるJR初島駅で世界初となる3Dプリンター技術を用いた駅舎の建設を完了し、同年7月から新駅舎として活躍しています。

鉄筋コンクリート造駅舎の建設工事には通常1~2カ月かかりますが、3Dプリンター技術を用いた工法ではパーツ製造に7日間、組み立て工程そのものは2時間ほどで終えることができました。

建設や住宅現場で3Dプリンティング技術が活躍するのが当たり前になる日も近そうです。