「ワット・ビット連携」で 電力と情報通信のインフラ一体整備

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AI(人工知能)の台頭でデータセンター(DC)向けの電力需要が急増し、電力と通信インフラ構築の両面で対応が課題となっています。九州全域で小規模DCの連携プロジェクトを進める九州電力を中心に各社の取り組みをご紹介します。

政府が電力・情報通信インフラの一体整備を推進

2025年3月、政府が「ワット・ビット連携官民懇談会」を立ち上げました。「ワット・ビット連携」とは、電力(ワット)と情報通信(ビット)のインフラを一体整備するものです。

官民懇談会では、太陽光発電や風力発電など脱炭素電源が豊富な地方へのDCの誘導を推進。これにより、AI活用と脱炭素、地域振興を同時に実現することを目指します。

「ワット・ビット」連携とは

・電力と情報通信インフラの一体整備
・大量の電力を消費するデータセンターを電力インフラの近くに立地誘導する
・電力にゆとりのある地方へデータセンターを立地することで地域振興につなげる
・余っている地方の再生可能エネルギーの有効活用につなげる

九州電力、「九州版ワット・ビット連携」の実現目指す

これを受け、「 九州電力 」は同年10月、九州各地の複数拠点に小規模なDCを設置、実証プロジェクトを開始しました。

プロジェクトでは、「 インターネットイニシアティブ(IIJ) 」などと協力して、1つの大きなシステムとして機能させるデジタルインフラの構築や検証を行います。

九州エリアは日照条件がよく、太陽光発電の導入量が全国でも高いなど、再生可能エネルギーの活用が進んでいます。ただ、太陽光で発電した電力を需給要因で使い切れないケースもあるため、その余剰電力をワット・ビット連携により有効活用する狙いがあります。

また、複数のDCに分散保存されたデータにアクセスして処理する「分散データベース技術」の検証も進める計画です。

この計画では、発電状況が異なる各地域の複数のDCを柔軟に使い分けるため、AI処理に特化したGPU(画像処理半導体)サーバーを各DCに配置します。

DC間の通信には、従来の電気信号による通信ではなく、光信号で接続し分散DCを直結する世界初の試みに挑戦しています。光信号を直結することでネットワーク装置を減らし、省電力化を図ります。

同社は、これらの技術と九州の地産エネルギーを組み合わせ、「九州版ワット・ビット連携」の実現を目指します。

他電力や他業態でも展開

東北電力 」は25年11月、「 日立製作所 」などと共同でAI向けDCの構築プロジェクトの検討を始めると発表しました。同社は再生可能エネルギー由来の電力供給で脱炭素化や地域振興の役割を担います。

東急不動産ホールディングス 」傘下の東急不動産は、再生可能エネルギー100%で運用するDCとして、北海道石狩市で「石狩再エネデータセンター第1号」の事業化を進めています。26年8月には、NTTの次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」を使って石狩市と大手町を結ぶ予定です。

データセンターと発電所併設の動きも

電力確保のためDCと発電所を併設する動きも出ています。

豊田通商は1月、同社子会社で再生可能エネルギー開発大手のユーラスエナジーホールディングス(東京・千代田)と北海道稚内市でDCを開発すると発表しました。

開発するDCは、隣接する陸上風力発電所から電気供給を受けるのが特徴で、風力発電所に併設して直接電力供給を受けるDCとして国内で初の取り組みです。

さくらインターネット 」は25年6月、火力発電大手のJERA(東京・中央)と火力発電所構内にDCの新設を検討することで基本合意書を締結しました。JERAのクリーンな電力を活用したデジタルインフラをさくらインターネット経由で提供することを目指します。

地方におけるワット・ビット連携の取り組みは今後も進みそうです。