ニュースでよく耳にするものの、よくわかっていないインデックスについてお伝えする本連載。今回は、投資家心理を表すと言われる「VIX指数」についてご紹介します。
VIX指数とは
「VIX指数」は「びっくすしすう」と読むのが一般的です。株式市場では「恐怖指数」とも呼ばれ、よく知られる指標です。「え? 怖い指数なの? 株式市場の何が怖いの?」と思われたでしょうか。
「VIX指数」の正式名称はCBOE Volatility Index(シカゴ・オプション取引所ボラティリティ指数)で、米国の代表的な株価指数であるS&P500のオプション価格から算出されます。「ボラティリティ」は価格変動のことで、VIX指数は「投資家が今後30日間でS&P500がどれくらい激しく上下すると予想しているか」を数値化したものです。
この値が高いほど、市場参加者が将来の価格変動を大きく見込んでおり、不安・警戒・恐怖感が強い状態であることを示します。逆に低い場合は、市場が落ち着いていてリスクをあまり意識していない状態を表します。
VIXは、S&P500の特に近月・次月限月コールオプション(買う権利)とプットオプション(売る権利)の価格をもとに、市場が織り込んでいるインプライド・ボラティリティ(予想変動率)を抽出して計算されます。オプションは金融派生商品の一つで、S&P500をxxxxドルで買う権利、yyyyドルで売る権利それぞれを売買するものです。オプションについてはそれだけで本が1冊ぐらいになる程度の深い話になるので、ここではこの程度にとどめます。
VIX指数の数値の意味と目安
VIX指数は「今から30日後までにS&P500がどれだけ動くか」という期待値を年率換算した数値で表示されます。
→ 年率換算で約15%の変動を予想
→ 1ヵ月(約1/12年)だと√(15²/12) ≈ ±4.3%程度の変動を市場が織り込んでいる
→ 1ヵ月で約±8.7%程度の変動を予想(かなり荒れ模様)
このように、VIXの数値自体がほぼそのまま「市場が予想する30日間の変動幅(目安)」として使えるのが特徴です。つまり数字が大きくなれば、今後30日間のS&P500の数値の変化が非常に大きいと考えられるわけです。
VIXの特徴と株式市場の関係をひとことで説明すると、「株価と逆相関が強い」になります。VIX指数が示すS&P500の変動は上にも下にも動くことを意味しますが、過去の経緯ではS&P500が下落するとVIXは急上昇する傾向があります。一方で、株価が長期的に上昇していると低下しやすく、稀にですが10を割ることもあります。一般的な数値の目安は以下の通りです。
過去の例で確認しましょう。こちらのチャートは2008年8月から12月末までのVIX指数の推移です。2008/9/15に30を超え、12月末までに80を2回超えました。2008/9/15に起きたのは忘れもしないリーマン・ショックです。アメリカの大手投資銀行リーマン・ブラザーズ・ホールディングスが連邦破産法第11章(Chapter11と呼ばれる)の適用を申請し、経営破綻した日です。その後の世界金融危機の引き金になった日とも言えます。以降、世界の金融市場では信用収縮が起き、世界中で株安が起きました。
VIX指数が80ということは、今後30日でS&P500が±23%変動することを示唆する数字です。では同期間にS&P500がどのように推移したかを確認しましょう。
2008/10/27にS&P500は前日比で大きく下げて848.92で引け、VIXが80を超えました。その後1ヵ月以内でS&P500が最も下がったのは11/20の747.78です。リターン(騰落率)は約−12%でした。±23%の半分程度の範囲に収まりはしましたが、大きな下落を記録したことは事実です。このような歴史を踏まえて、現在でも投資家はVIX指数の値が大きくなると、株式市場の大きな下落局面を想定するわけです。「恐怖指数」と呼ばれる所以はそのあたりにあるのでしょう。
VIX指数との付き合い方
近年は日本に暮らしていてもS&P500が身近になりました。S&P500に連動するETFや投資信託を保有している人は非常に増えましたし、米国株市場の動きは少なからず日本株市場にも影響をもたらしますから、その値の変化をウォッチしている方が少なくないはずです。VIX指数がS&P500の変化予想を示すものならば、VIX指数もウォッチしておきたくなりますね。
では、ウォッチしたVIX指数との付き合い方を挙げてみます。一つは、「市場の体温計」として使うことです。「20を超えたら警戒、30を超えたら少し売っておこうかな、40を超えたらそろそろ買いを出動する人が増えるかな」といった感じで自分が保有するポジションと照らし合わせながら意思決定するための情報として使うのです。
もう一つは「逆張りのシグナル」として使うことです。40を超えるような水準はいったん底をつけることが少なくなく、振り返ると買い場だったことがしばしばあるからです。直近で40を超えたのは2025年4月、いわゆる「トランプ・関税ショック」の時でした。
この局面では結果的には50を超えたあと、その後急速に低くなっています。S&P500がその後値を戻し、最高値を更新したのは記憶に新しいところですね。VIX指数が50を超えたところでS&P500はいわゆる「底打ち」したわけです。
ただし、VIX指数はあくまでも予想にすぎません。ですからVIX指数が80を着けたら、想定される30日以内の変動は±23%ですが、リーマン・ショック時はその半分程度の変化で収まったのがいい例で、必ずしもVIX指数通りの変化をするわけではないことは理解しておきましょう。ですから、40を超える水準はレアではあっても、80まで上昇することもありますし、実際過去にはあったわけです。
VIX指数についてもう一つお伝えしたいのが、いきなり上昇することが多い点です。VIX指数の動きはS&P500の動きと逆相関の傾向があるため、いきなりVIX指数が上昇するときは大きくS&P500が下落します。ですから、できればVIX指数が大きく上昇する前にいったん利益を確定したい、とお考えになるかもしれませんが、それはなかなか難しいわけです。ただ、VIX指数が上昇し続けるマーケットはありません。いつかは恐怖指数が上昇して株価がそれなりに大きな程度の下落することはあるものだと理解したうえで、当面使う予定がないお金で投資するべきであることを忘れてはいけません。