年初の中国によるレアアースの輸出規制は、日本の産業界に衝撃を与えました。日本は経済安全保障の観点から調達先の多角化が求められます。海外生産会社に出資し、レアアースの権益を保有する双日を中心に各社の動向をご紹介します。
「産業のビタミン」先端技術支えるレアアース
レアアースは、鉱物から抽出される金属(メタル)のうち、31鉱種(種類)あるレアメタル(希少金属)の一種で、17種類の元素(希土類)の総称です。
「産業のビタミン」とも呼ばれ、少量で強い磁力を発揮したり、高い耐熱性を持ったりする特長があり、電気自動車(EV)のモーター用磁石や電子機器などに使われ、ハイテク素材として先端技術を支えています。
レアアース(希土類)とは
・存在量が少ないなどの理由で希少とされる金属(レアメタル)の一部
・超電導や強磁性、触媒など様々な特性を持ち、「産業のビタミン」とも呼ばれる
・レアアース全体で日本の輸入に占める中国の割合が85%(2009年)から58%(2020年)に低下
双日、豪生産レアアースの輸入を開始
2025年10月、「 双日 」は豪ライナス・レア・アース社が豪州の鉱山で採掘するレアアースについて、日本国内向けに輸入を開始したと発表しました。
同社は前身の日商岩井時代の1960年代からレアアースの取り扱いを行っています。2011年には独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と共同で日豪レアアースを設立。ここを通じてライナス社に出融資を複数回実施し、数種類のレアアースに関する日本市場向け販売権を確保しました。
双日が輸入を開始したのは、EVモーターに使うネオジム磁石の材料となる「ジスプロシウム」と「テルビウム」です。これらは「重希土類」と呼ばれ、産地が中国南部に偏るなど、レアアースのなかでも中国への依存度が高いといわれています。双日は希少性の高いほかの「中重希土類」についても輸入拡大を目指しています。
国内では深海のレアアース泥に注目
海外からの輸入に頼るレアアースですが、日本国内では長年の調査で小笠原諸島の南鳥島周辺の海底にレアアース濃度の高い「レアアース泥」が堆積していると確認されています。
今年1~2月にかけて、日本の探査船「ちきゅう」が世界で初めて水深約6000メートルからレアアース泥を回収する試験に成功しました。
このレアアース泥の回収では日本企業の技術が活かされています。「 三洋貿易 」は、傘下の子会社を通じて採鉱試験用の機器や遠隔操作無人探査機などを「ちきゅう」に納入しています。
また、「 三井金属 」はレアアース泥の精製を視野に入れています。今年2月、先端材料開発および新規事業創出を目的として「九州先端材料開発センター」を福岡県に設立すると発表。レアアースなどの材料の研究開発拠点とします。
その他では、「 JX金属 」が25年6月、豪鉱山会社RZ Resources(RZリソーシズ)が所有するレアメタルの権益の一部を取得する契約を結んだと発表。注力する先端半導体材料事業の拡大につなげる狙いです。
「脱レアアース」の取り組みも
「 大同特殊鋼 」はレアアースを使用しない高性能な電磁材料を開発しました。
「 ミツバ 」は、レアアース磁石を使わずに同等性能を持った車載電装モーターを複数の企業と共同で開発しています。
コストや技術面で課題も残りますが、地政学リスクに縛られないレアアースの在り方を模索する動きは今後も加速しそうです。