すべての仕事は株価に通じる! 元証券マンが贈る、笑いと涙のビジネスノベル。今こそ知っておきたい、日本経済の「裏側」と「歩き方」をアップデートできる一冊です。
JTCはなぜ評価されなくなったのか? 小説で読む「株価の上げ方」
1990年代のトレンディドラマを彷彿とさせるタイトルと表紙から「パロディ本?」と思いきや、しっかりアタリの投資教養書でした。
昨今揶揄されがちな「JTC(Japanese Traditional Company:伝統的な日本企業)の面々」と企業価値を問い質す「プロの投資家たち」が主要人物。「株価ってなんで下がり続けるとヤバいんですか?」と直球で投げかける主人公とともに、ROEやPERの本質を無理なく理解できる構成です。おどけたジョークの裏で、東証の市場改革に揺れる日本企業の「いま」を鮮やかに浮き彫りにしてくれます。
実録エピソードも興味深いです。例えば現在、業績絶好調の日立は以下の通り。1980~90年代の「この~木なんの木、気になる木~」で知られるCM(未見の読者はほっこりするので検索してみて!)を挙げ、グループ企業がぞろぞろ出てきたよね、なんて話が出てくるのです。「大きいことはいいことだ」張りの世界観だった日立ですが、現在、上場子会社はなんとゼロ。巨大な樹木を「選択と集中」で「稼げる事業」へと植え替えて時価総額は4~5倍以上になっています。
本作のテーマの一つも「JTCからの脱却」。テンポの良い会話ゆえ、その改善案までエンターテインメントとしてスッと落ちてくる。JTCと判定されやすい要素――「役員が50代以上、全員男性、新卒入社、転職経験なし」には苦笑する読者も多いはず。
全編通じ感じるのは、これまでの「当たり前を疑え」というトーン。かつては「乗っ取り」と毛嫌いされたM&Aやアクティビスト(物言う株主)が、今では組織の再生を後押しするパートナーへと変わってきている。そうして、株価が上がれば、国も企業も国民も豊かになれる。
「投資は未経験」と思っている人も、実はとっくに関係者。だって、私たちが納めている年金や保険料が、その巨大マネーの源泉なのだから。「なんだ、投資って全員参加のポジティブな循環じゃないか」という読後の爽快感あり。今後の銘柄選びの参考にもなりそうな一冊です。