「この人たちを大事にしよう」と決めた瞬間、全てが一変した

お金を語るのはカッコいい・河村真木子さんに聞く/ 河村 真木子

外資系金融機関で20年にわたりキャリアを築き、現在は日本最大級のオンラインコミュニティを主宰する河村真木子さん。河村さんが最新刊『外資系金融ママがわが子に伝えたい 人生とお金の本質』で説くのは、単なる蓄財のテクニックではない。「人生の主役」を自分自身に取り戻すためのマインドセットとは何か。そして、なぜ今「環境」への投資が、お金以上に人生を劇的に変えるのか。レールなき世界を軽やかに、たくましく生き抜くための哲学を聞いた。

貯金より大事な、「オーナーシップ」を持つこと

――昨日は韓国、そして明日からアブダビへ行かれると伺いました。(取材は2月初旬でした。)かなりハードな印象ですが、渡航の目的はなんですか?

視察です。私が主宰するオンラインコミュニティ「Holland Village Member’s Club」には海外在住のメンバーさんや、仕事やバカンスで海外に行く機会が多い国内メンバーさんが多いので、福利厚生として使える拠点を世界中に増やしているんです。

今アブダビがすごくホットで世界中の富裕層が集まっているらしいと聞いたので、プロパティ(物件)をちょっと見に行こうと思って。

――「ちょっと見に行く」ために、わざわざアブダビまで?

情報収集は常にやっていますが、世の中の風景はどんどん変わっていくし、やっぱり自分の目で見ないと「今、本当に起きていること」は分からないので。

アブダビの後も、ニューヨーク、ボストン、LAに行く予定です。韓国は美容ツアーでした(笑)。

――最新刊『外資系金融ママがわが子に伝えたい 人生とお金の本質』は、発売前から大変な反響でしたね。特に次世代を育てる親世代に向けて非常にクリアなメッセージを発信されていますが、執筆にあたってこのテーマを選んだ動機を教えてください。

最近、フォロワーさんやコミュニティのメンバーさんから「自分の子どもたちにも金融経済の知識を持ってほしい」「どうやって教えたらいいの?」と聞かれることがすごく多くなったんですよ。

今はインフレになったり、AIが台頭したり、政治も情勢も変わったりと、まさに時代の大転換期ですよね。親世代が生きてきた時代の“常識”が通用しなくなっていることを肌で実感している人が多いのだと思います。

ライフプランを見据えたお金の備えに関しても「貯金だけではどうにもならない」という危機感が広がっている。時代の常識が変わっているのに、自分の考えを固定したままでは勝てないじゃないですか。「新しい考え方に自分をアジャスト(適応)させなきゃいけない。でもどうしたらいいの?」という不安に応える気持ちで本を書いたんです。

――独自のお小遣い制度など、ご自身の子育てでの実践例も豊富に紹介されていますね。

私自身も娘を持つ母親ですが、自分が知っていた常識と、これから子どもたちに伝えるべきものが全然違うと感じながら子育てをしてきました。単なる蓄財の術ではなく、自分の人生をどうアジャストさせるかという「考え方」を書き換えるための本にしたいという気持ちが大きかったですね。

1冊を通じて強調したかったのは、自分の人生を自分で切り開いていくオーナーシップを持つことの大切さ。お金を味方にする方法として「稼ぐ・増やす・使う」という3つのアプローチを軸にまとめました。
たとえば「稼ぐ」に関していうと、私は「使われる側の労働者」から「事業家」「オーナー」に転換していく重要性を伝えています。

かつては「大学に行って就職して結婚すれば安泰」という時代もありましたが、全員に敷かれていたはずのレールはもうない。そんな「レールなき世界」をいかに生き抜くか、読んでくださった方にとってマインドチェンジのきっかけになるとうれしいですね。

人生を変えるのは簡単。ちょっと考え方を変えてみる、だけ

――日本は長く「1億2000万人総レール社会」だったとも言えますが、それが崩壊した今、私たちは何を指針にすべきでしょうか。

日本って本当に、全員のレールが敷かれているような社会でしたよね(笑)。女性だけでなく男性も、自分の頭を抱えて考えなくても、なんとなく流れに乗ればやっていけた時代だった。でも、そのレールがいきなり途絶えた現代において、正解はどこにもありません。

一方で、私が20年間いた外資系金融機関という世界は、まさに「レールなき世界」でした。いつでもクビになるし、数字しか自分を助けてくれない弱肉強食のサバイバル社会。就職する前に経験したアメリカでの大学生活も同じでした。そうしたサバイバル環境では、常に自問自答しながら、自分の道を模索する力が磨かれたと思います。

一般的な日本社会の中では私のような生き方は少数派なのかもしれませんが、常識なき世界で育ってきたからこそ、皆さんに提示できる一つのオプションがあると思っています。誰かの指示に従うのではなく、自分の人生に責任を持つ「事業家精神」を持つこと。いつでも自分の人生のハンドルを自分で握れるように、環境とマインドを整えておくことが大切なんです。

――「考え方を変える」のは難しいことではないのでしょうか?

全然、難しくないと思いますよ。考え方をいきなり大きく変えようと思う必要はなくて、ちょっと変えてみるだけで日常は変わっていくんです。考え方をちょっと変えるために必要なのは、行動をちょっと変えてみること。具体的には、「出会い」ですね。

私が運営するコミュニティのメンバーさんの中にも新しい環境での出会いがきっかけになって、「今までの自分は何だったんだろう」というくらい劇的に人生を変えている人が大勢いますから。「考え方が根本から変わりました」「自分でも驚くくらいリスクを取って挑戦できるようになった」という声が本当に多く聞かれるんです。

――なぜ、出会いによってそこまで変われるのでしょうか。

人間は環境に非常に影響を受ける動物だからです。私自身も、外資系金融という厳しい環境が今の私をつくったと思っています。自分を変えたいなら、意思の力で頑張るのではなく、身を置く場所を変えるのが最短ルートです。そこには年齢の制限もありません。

私たちのコミュニティには10代の高校生から70代まで幅広い年齢層のメンバーさんが集ってくれているのですが、専業主婦歴の長かった60代の女性が、若い仲間と出会って新しい趣味やSNSを覚えて、「仕事もしてみようかな」と人生を変えている例もあります。

環境さえ整えば、誰でもいつからでも人生を切り拓けるんだなと、素敵なお手本をたくさん見せてもらっています。

まずは「自分から」メッセージを送ってみる

――自分を変えるために、どうやって環境を選べばいいのでしょうか?

「同質性の罠」を突破することが大事だと思います。放っておくと、人間はずっと同じような居心地のいい環境にいちゃうんですよ。

私もかつて、気づいたら最初の旦那も金融マン、2回目の結婚で一緒になった旦那も金融マン、妹も金融だし、妹の旦那も金融、友達も全員金融だらけで、めちゃくちゃ同質性の高い環境に身を置いていた時期があったんです。

でも、同質性が高いところにいても新しいエネルギーは生まれないし、新しいアイディアも出てこない。30代のあるとき、「今まで接点のなかった場所に、あえて自分を突っ込んでみよう」と行動を起こしたんです。

――具体的にどういう行動を起こしたんですか?

あえてひと回り近く年下の友達をつくったり、SNSで話題になっているキャバクラ嬢のインフルエンサーに会いに行ったり、それまでの自分なら絶対に交わらなかった世界に突っ込んでいきました。

ゴールドマン時代にも会食やパーティーといった華やかな交流の機会がよくありましたし、実は“異質な世界”と出会うチャンス自体は結構あったんですね。けれど大切なのは、「また会おうよ」と自分からメッセージを送るかどうか。連絡先を交換しても、次に行かない人が多いじゃないですか。あえて自分からDMしてみて、踏み込んでいくと、どんどん世界が広がっていき、ついに「自分で事業をつくる」という生き方に転換するまでになった。そして今の私になりました、というわけです。

――心理的なハードルはなかったのでしょうか。

もちろんありましたよ! 向こうから「おばさん」と思われてバカにされてそうだな……とか勝手に引け目を感じちゃうことも多かったです。でも、自分の世界を広げたいと思ったから、自ら突っ込んでいきました。

私は自力でそれをやりましたが、今はもっと簡単に多様な仲間と出会ってつながれる場所として皆さんにコミュニティを使ってほしいなという気持ちでやっています。ここに来れば、医者も弁護士も金融のプロもいろんな人がいて、その日から友達になれるし、いつでも会える約束ができるし、めちゃめちゃラクですよね。

もう、30代の頃の私が入りたかったです(笑)。

180度変わった、コミュニティへの考え方

――そのコミュニティも、開設5年で1万7000人が参加する日本最大級の規模に。どのような場になっているのでしょうか。

実を言うと、開設した当初は、もうちょっと“上から目線”だったんです。「私が金融経済のことを教えてあげる学校」みたいな場所にするつもりでした。

でも蓋を開けてみたら、初月で3000人も集まって、しかもその顔ぶれを見たら、多彩な分野で活躍するプロフェッショナルな女性たちばかりで。聡明でアクティブな女性たちがこんなに日本にいたんだと分かって、「普通に私のリア友になってほしい!」って感動したんです。

――集まったのは「生徒」ではなく「仲間」だったというわけですね。

おっしゃるとおりです。当初の想定を超えて、魅力的な人たちが集まってくれたので、「私が先生役になって教える」という方針から転換して、もっとフラットな交流の場にしようと決めました。「この人たちを大事にしていこう」と強く感じたことを覚えています。

今、コミュニティの中で起きている活動の中で熱いのは起業家ワークショップ。自分でビジネスを始めたい人同士でアイディアの壁打ちをしたり、一緒に事業を立ち上げるパートナーを探したり。1万7000人の中には、優秀な会計士や税理士も入ってくれているので、起業に必要なプロフェッショナルとのネットワークも完全にまかなえる。すごいことが起きているんです。

メンバー限定カフェでは無添加オーガニック食材にこだわったフードを提供

ただ、ここまで大きな規模に育てることを最初から狙って計画していたかというと決してそうではなくて、メンバーさんの「起業の相談できるイベントをやってほしい」とか「もっと仲良くなるために、オフラインで集まってみたい」といったリクエストに一つひとつ応え続けていたら、自然とグロースしていったという感じですね。

私自身もビジネスパートナーをクラブのメンバーさんから見つけているんですよ。以前はゴールドマン・サックスの後輩女子が一番優秀だと思い込んでいたんですけど、「あれ? メンバーのほうが多様性があって、インスタや動画制作にも詳しい若い子もいるし、ゴールドマンの“おばさん”より良くない?」って気づいちゃったんですよね(笑)。

Agree to disagree

――メンバー同士が活発に議論できる空気をつくるために、河村さんが心がけていることはありますか?

一番大切にしているモットーが、「アグリー to ディスアグリー(Agree to disagree)」、つまり「同意しないことに同意する」ことです。同調圧力を排して、お互いの多様な意見を認め合おうよ、という姿勢です。だからこそ、私に対しても平気でアンチコメントが活発に飛び交ったりしますし、会費を払ってまで叩きにくる「課金アンチ」もいたりします(笑)。

コミュニティに詳しい方によると、お金を払ってまでわざわざ批判をするのは「それだけ愛着を持っていただいている証拠」らしいのですが……、さすがにアンチコメントが1000件くらい集中したときは参っちゃいそうになりました。

――1000件ですか! 向き合うのも相当なエネルギーが必要なのでは?

正直、あまりのフルボッコ(編集部註:全カ(Full)でボコボコに叩きのめすの略)ぶりに参ってしまって、カフェに顔を出すことすら怖くなってしまったときもありました。でも、アンチコメントすべてに目を通して、しっかり対話して、自分の考えを説明したいと思ったんです。
誤解されている部分はきちんと説明して誤解を解き、自分が悪かった点は素直に認めて改善策を示し、でも譲れない部分は「私はこれでいきます」と言い切る。誠実に向き合った結果、離れてしまう人がいたとしても、それはそれで健全な形だと思っています。

――今、ご自身の時間のうち何割くらいをコミュニティ運営に使っている感覚ですか?

えー、めっちゃ使っていますよ。感覚的には1日中(笑)。これは大袈裟ではなくて、最近、自宅にメンバーさんがお泊まりにくる「ホームステイ」の受け入れを私もやっているんです。

――ご自宅にですか?

はい。最近、コミュニティの中で海外ホームステイプログラムというのが走っていて、海外在住のメンバーさんが「日本からこちらに来るときがあれば、どうぞうちに泊まってください」とほかのメンバーさんを受け入れているんです。富裕層の方々なので、プール付きのお手伝いさんも常駐している邸宅ばかりです。「どうせ部屋が余っているので」と無償で提供してくださっているから、みんな大喜びで。

だったら、うちも地方のメンバーさんが東京に出張に来たときのホテル代わりに使ってもらったらいいなと思って、我が家でもホームステイ受け入れを始めました。

事務局からは「頭おかしくなったんですか?」ってドン引きされましたけれど(笑)。でも、みんながやってくれているのに私がやらない理由もないなと思って。実際にやってみると、昨日も初対面の金融女子と弁護士さんが泊まりに来て一緒にシャンパンを開けて楽しく過ごしたんですよ。

私、一人でいるほうが寂しくて疲れるタイプだから、全然苦じゃないんです。

人生は変えられる、と信じられる場所

――通常なら「お金」が発生するサービスが、善意の無償提供で自然と差し出される。新しい「経済圏」と言えそうです。

まさに「経済圏」だと思います。「ここに集まる人たちなら大丈夫」という信頼をベースに、それぞれができることを提供し合う価値交換が生まれています。それも決して自己犠牲的ではなくて、私も含めて皆さん、喜んで提供している感じです。オフ会も200近く立ち上がっていて、全部、私はノータッチ。完全に自走しています。

――運営者として河村さんが担っている役割は何ですか?

私はもう、みんなが喜びそうな企画を考える「プロデューサー業」に徹しています。私自身が表に出て発信するのは毎朝の経済コラムくらいで、ゴールドマン時代の元同僚や知人に国際政治や金融のプロを学校のように連れてきて、上質なレクチャーを提供する“企画側”に回っています。

皆さんが輝ける場所、ここでしか学べないものを得られる場所を育てていくことがすごく楽しいんです。

ちなみに講師役の選定基準は超厳しいですよ。内容はもちろん、発信者の「声」や「滑舌」、清潔感といったビジュアルまで徹底的にこだわります。オンラインでは聞き心地が良くないと、聴いている人がサーッと離脱していくので滑舌も重要です。

見た目もしかりで、話が面白くてもブサイクはダメです(笑)。顔のつくりの美醜という意味ではなく、清潔感を与えるよう小綺麗にメンテナンスしておくことは、メンバーの貴重な時間を奪わないための、最低限のマナーだと思っています。

――「コミュニティを始めてよかったな」と思うのはどんなときですか?

職場でも家庭でもない「サードプレイス」がつくれているなと実感できるときですね。今日インタビューを受けている場所は、2年前に麻布十番にオープンしたメンバー限定のカフェなのですが、同じような拠点が全国に16ヵ所にまで広がっていて。普段はオンラインでつながっている仲間と、リアルに出会える場所として、オフ会のイベントに使ってもらったりしています。

「Holland Village Private Cafe」2号店

ふらりとカフェに立ち寄れば、誰か知り合いがいて「昨日のあの話、聞いた?」と共通の話題で盛り上がれる。まさに「社会人版・学食」みたいな場所になっていると思うんです。

私も時々店舗に立ち寄るんですけど、そこでメンバーさんたちが楽しそうに喋っている顔を見るのが、もう最高に幸せなんです。このコミュニティから新しい価値や挑戦の成果がどんどん生まれていくとうれしいなと思います。

入ってくれた人たちが、「今はサラリーマンだけど、ここで出会った仲間といずれこんな夢を実現したい」とこれからの人生に希望を持てるような場所に。人生は変えられる、と信じられる場所にしていきたいです。

お金があれば、好きな人と結婚できます(笑)

――あらためて、河村さんにとって「お金」とはどのような存在でしょうか。

お金とは、「選択肢を広げるもの」です。私自身も自由に使えるお金があったから離婚もできたし、子どもを留学させることもできた。そして、経済的自立があれば、好きでもないお金持ちと結婚しなくてすむんですよ(笑)。相手の経済力に依存せず、純粋に「この人が好きだ」という感情だけでパートナーを選べる。絶対、そっちのほうが幸せでしょう? 経済的自立は、愛に生きるためのパスポートなんですよ。
特に女性はまだまだ男性と比べて社会で活躍する上での制約が多い現実があると思うので、人生の選択肢を増やす手段として、お金を味方にすることがより重要です。そのために、できるだけ早い時期からマネーリテラシーを高める意識を持つべきだと思います。

――河村さんは稼いだお金を何に使いたいですか? 今、成し遂げたい「野望」を聞かせてください。

もう買いたいものは一通り買ったので、個人の贅沢を満たしたいという欲はもうあまりないですね。今は、コミュニティの福利厚生にお金を使いたいです。将来的には、メンバーさんが入居できるラグジュアリーな老人ホームをつくりたいと思っているんです。

実際にフロリダやアリゾナにあるリタイアメントコミュニティにある施設を見学したこともあって、ミシュランのシェフがいて、スパもレストランもあるような、自分が入っても楽しいと思える施設をつくってみたいなと構想を膨らませています。人を幸せにすることこそが、今の私のお金を使う最大の原動力ですね。

――その「人を幸せにしたい」というエネルギーの源は何でしょうか。

結局、私は「人が好き」なんだと思います。

子どもの頃から自分を売り込んで人と仲良くなるのが大好きで、「自作の名札を胸に貼って自ら『公園デビュー』をしていた」と母から聞いていますし、小学生の頃には陰キャで読書好きだった姉に代わって姉の友達を引き受けて遊んでいましたから(笑)。根っからの“営業マン”なのでしょうね。

ゴールドマンの営業時代も、相手の人生や価値観を聞くのが大好きだったから仕事に夢中になれたのだと思います。相手がどんなに”おっさん”だとしても、「そういう考え方もあるんだ」「この人のこういうところ、超面白い!」と知れるのが好きだったんです。

だから、私は今、めっちゃ楽しいんです。毎日いろんな人に会えて、出会えた人に何をしたら喜んでもらえるか考えて、そのために世界を飛び回る。1日中、考えても飽きないし、疲れ知らずで元気になる。

私は、人を幸せにしたい。まさに天職だと思っています。