巨大AIテック企業 活発なロビー活動で影響力高める

フォーカス!押さえておきたいテーマと企業(米株編)/ QUICK

11月の米中間選挙を控え、企業や業界団体による政治活動が活発化しています。AI(人工知能)関連で積極的な活動をしているマイクロソフトを中心に各社の動向をご紹介します。

AI業界で初の1億ドル規模のロビー団体設立

企業や業界団体による政治活動は、自らの利益につながるよう議員や政府高官に政策実現を働きかける目的で行われ、「ロビー活動」と言われます。

産業界にとどまらず、国家安全保障にも影響を及ぼすAI関連で積極的なロビー活動が行われています。

昨年8月、大手AI企業とイノベーター(革新者)の連合体が、政治団体「Leading the Future(LTF)」を設立すると発表しました。

この団体は、AIの規制強化に反対する政治家を支援することを目的としており、1億ドル以上の資金が拠出されています。

LTFにはシリコンバレーの有力投資会社やオープンAIの共同創業者グレッグ・ブロックマン氏らが参画。1億ドル規模のロビー団体はAI業界では初めてで、政策立案者への積極関与を通じてAI開発や普及促進に向けた政策を推し進める動きとして話題を集めました。

米国では従来、政府の規制や予算、許認可に依存するヘルスケアや防衛、通信企業のロビー活動が活発ですが、ここにきてAI関連などテック企業の台頭が目立っています。

米国のロビー活動とは?

・企業や業界団体が自らに有利な政策や法律を実現するため、議員や政府高官に働きかける「合法的」な政治活動

・ロビー活動の透明性確保のため制定された「ロビー開示法(Lobbying Disclosure Act=LDA)」により、米議会への報告が義務付けられている

・米政府の規制・予算・許認可に依存するヘルスケアや防衛、通信企業のロビー活動が盛ん。近年ではAI(人工知能)市場の拡大を背景にテック企業の台頭も目立っている

マイクロソフトは様々な分野で政府との関係・連携深める

オープンAIの大株主であるマイクロソフト(MSFT)は、積極的にロビー活動を行っています。

米議会に提出した報告書によると、マイクロソフトの25年のロビー活動費は約940万ドルでした。国家レベルのAI基盤整備や導入推進、安全保障、セキュリティー、プライバシー保護、AI研究所の設立支援など、様々な分野で政府との関与・連携を強めています。

多くの巨大テック企業が地位確保狙いロビー活動を活発化

オープンAIは25年にロビー活動費に約300万ドルを投じました。24年の活動費は約180万ドルで、開示を始めた23年(26万ドル)から活動費はこの2年で大きく膨れ上がりました。

メタ・プラットフォームズ(META)のロビー活動費は全米トップ級で、25年の支出額は約2600万ドルに達しました。

メタはトランプ第1次政権時に同氏のFacebookアカウントを凍結したことなどで関係が悪化していましたが、25年1月の大統領返り咲きを機にトランプ政権に急接近しています。

「表現の自由」を叫ぶトランプ大統領に歩み寄る形で、25年1月にSNSの外部団体による投稿の信頼性評価(ファクトチェック)の廃止を発表。今年1月にはトランプ米政権でイーロン・マスク氏が率いていた「米政府効率化省(DOGE)」の元幹部をロビイストとして採用。トランプ政権との関係を一段と緊密にすることで、AIプラットフォーマーとしての主導権を握る狙いがあるとみられています。

オラクル(ORCL)は25年、ロビー活動に約920万ドルを費やしました。同社はトランプ大統領が構想する巨額のAIインフラ投資計画「スターゲート」に参加。オープンAIとの提携関係を強めるなどして、AIインフラ事業の強化を図っています。

エヌビディア(NVDA)は半導体の輸出管理規制を主な活動分野に挙げ、25年に約500万ドルのロビー活動費を投じました。トランプ政権が対中貿易規制を強化するなか、対中輸出の規制撤廃や緩和に向けた動きを強め、事業リスクの低減につなげています。

パランティア・テクノロジーズ(PLTR)は25年にロビー活動費として600万ドル超を投じました。防衛分野におけるAI活用の動きが広がるなか、ロビー活動を通じて政府案件の受注獲得につなげています。

ロビー活動の強化は巨大テック企業の競争力を一段と高める要因になりそうです。