AI時代に変わるSaaSの価値

テーマで横ぐし!世界の会社を見てみよう/ 日興フロッギー編集部

旬な投資テーマをもとに、関連する国内外の企業をまとめて紹介する本連載。今回のテーマは「AI時代のSaaS」です。AIの進化がソフトウェア業界に与える影響を見ていきます。

「バイブコーディング」で開発環境が激変

足元の約1ヵ月で、AI関連の株に対する市場の注目は「恩恵を受ける会社」から「リスクがある会社」へと変わってきました。その背景の一つが「バイブコーディング(Vibe Coding)」という技術です。

バイブコーディングとは、AIが言葉の指示だけで自動的にプログラムを作ってくれる技術のことです。この技術を使えば、開発にかかる時間を大幅に短縮できます。また、今まで必要だった専門的なプログラミング作業が不要になるため、プログラマーでなくても簡単にソフトウェアを開発できるようになります。

たとえば、フィンテック企業であるクラーナ社は2024年以降、セールスフォース(CRM)をはじめとする約1200のソフトウェアサービスの利用を停止し、AIが作ったツールに置き換えました。ほかにも、音楽ストリーミングサービス大手スポティファイ・テクノロジーは2026年2月に「2025年12月以降は当社で最も優秀なエンジニアでさえコードを書いておらず、AIが作ったコードを監督しただけだった」と明かしました。このように、人間が直接コードを書く必要性が急速に低下すると見られるほか、ソフトウェア開発がより簡単になることで、脱SaaS(クラウドソフトウェア)の可能性が注視されています。

逆風を受ける分野

現時点では、既存のSaaSが不要になるかは不明です。セールスフォースは2026年2月25日の決算発表で、AIエージェント製品の契約状況が好調であると明らかにしました。既存のSaaS企業もAIを上手く取り入れることで、業績に弾みをつけられる可能性もあります。

一方、従来型のプログラムを書く仕事や、開発に多くの時間がかかるサービスは、今後厳しくなるかもしれません。これはアメリカだけでなく、世界中で起こりうることです。例えば、開発者向けのプラットフォームやノーコード/ローコードツール、ITサービスなどが該当すると考えられます。

カエル先生の一言

ノーコード/ローコードツールとは、プログラミングの知識が豊富でなくても、アプリや業務システムを簡単に作れる開発ツールのことです。

また、SaaS企業の中でも、用途が限定的なサービスは、バイブコーディングが広がることにより、顧客が自ら開発したツールに置き換えられていく可能性が考えられます。

「落ちてくるナイフはつかむな」

SaaS企業は、これまでサブスクリプションという定期的に料金が入る仕組みによって、安定した収入や成長が続いていました。そのため、割高な株価でも許容されていました。しかし、AIの進化によって今後成長が鈍るかもしれないという不安が広がっています。このため現状では業績が悪化していなくても、これまでのような割高な株価を維持するのが難しくなってきています。

たとえ一株あたり純利益(EPS)が増えていても、市場からの評価が下がってPERが低下し、株価が下がることがあります。先述したセールスフォースの12ヵ月先予想PERは、2月25日時点で14倍台となっています。ソフトウェア企業にとっては、顧客企業の人員削減によってライセンス数が減ったり、新規顧客を獲得する際に他社AIツールとの競争がどんどん激しくなっています。さらに既存顧客の解約というリスクさえある以上、株価を楽観的に考えることはできません。今こそ投資格言「落ちてくるナイフはつかむな」を意識する必要があります。

カエル先生の一言

「落ちてくるナイフはつかむな」という投資の格言があります。急激に値下がりしている株を無理に買うと、まるで落ちてくるナイフを素手でつかんでケガをするように、さらに値下がりして大きな損失を抱えてしまう可能性がある、という意味です。

また、ソフトウェア企業の評価が下がると、それらの企業に出資・投資する金融機関など他セクターの企業へ影響が広がる可能性もあるため、しばらくは注意して見ていくことが大切です。

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