世界的に水資源の確保が課題となるなか、海水を淡水(真水)化する技術が注目されています。主流となっているのが「逆浸透膜(RO膜)」と呼ばれるフィルターを通して塩分や不純物を除去する手法です。RO膜で世界トップシェアを持つ東レを中心に各社の動向をご紹介します。
海水淡水化とは
・海水から塩分や不純物を取り除き、飲料水や工業用水に変える技術
・淡水資源の少ない中東などを中心に重要な生活用水の確保手段
・従来は海水を蒸発させて塩分を除去する方式が多数も排出量が課題
・足元は海水に圧力をかけRO膜と呼ぶ膜を通すろ過方式が主流に
・生活用水だけでなく産業用水確保の観点でも注目
RO膜と日本企業が支える淡水化
「 東レ 」は2025年11月、サウジアラビアで海水淡水化用RO膜の新工場を増設し、稼働を開始したと発表しました。
新工場ではRO膜のほか、膜を円筒状にした最終製品までを一貫生産していて、東レはRO膜の製膜工程から組み立てまで手がける同国初の企業となりました。
雨がほとんど降らないサウジアラビアでは、都市部で使われる水の多くが海水の淡水化によってまかなわれています。そのため、世界でも淡水化技術への需要が高い地域です。
サウジアラビアでは、以前淡水化するのに海水を沸騰・蒸発させて塩分を取り除く方法(蒸発法)がとられていましたが、この方式では二酸化炭素(CO2)の排出量が増えることが課題の1つとされていました。
一方、非常に細かい穴があいているRO膜を使うと、圧力をかけることでろ過し、海水を淡水に変えることができます。蒸発法と比べてエネルギー効率が高いため、RO膜を使った淡水化は環境負荷が小さいことも強みです。
東レは、世界におけるRO膜を使った淡水化大型プラントで多数の納入実績を誇ります。膜の高性能化で真水を造る能力を向上させているほか、現地化により顧客対応力も強化して実績を積み上げています。
「
カナデビア
」(旧:日立造船)は、オーストラリア子会社を通じて海水の淡水化プラントの事業を世界展開しています。
25年には南太平洋の島国キリバスで淡水化プラントが稼働しました。キリバスも淡水資源が限られ、水供給の課題を抱えていました。プラント稼働により、高品質の飲料水を地域社会に継続的に供給することを可能にしました。
「 栗田工業 」は水処理装置を手がけていますが、半導体などの電子部品の製造に欠かせない「超純水」を作る装置にもRO膜の技術を活用しています。
様々な産業で水確保の重要性は拡大
RO膜以外でも淡水化の分野では日本企業の活躍が目立ちます。
「 酉島製作所 」は発電所や水道施設向けのポンプを手がけているほか、海水淡水化に使うポンプでも40年にわたる実績があります。ポンプは海の水を汲み上げたり、RO膜に超高圧で水を送ったりする役目を担います。
「 丸紅 」は、これまで排熱を利用して海水を蒸発させ、淡水化するプラントを中東地域で手がけてきました。
近年はRO膜を使った淡水化プラントも展開しており、チリでは国営の銅公社向けの造水・送水事業に参画しています。銅鉱山の開発では大量の水を使用しますが、地域住民が日常的に利用する地下水に依存しない水資源の確保が課題となっていました。
丸紅は湾岸部から海水をくみ上げて淡水化するプラントの建設に加え、貯水施設まで水を運ぶポンプや配管を整備していて、地域社会への貢献や環境負荷の低減にも貢献しています。
海水の淡水化を巡っては今後も技術の進化が続きそうです。