農業経営は、担い手不足に加え、経験や天候への依存が大きく、生産性向上に課題を抱えています。また、食料自給率の維持・拡大のためにも、持続可能で効率的な農業経営のニーズが高まっています。農機の自動化(スマート農業)を進めるクボタを中心に各社の動向をご紹介します。
クボタが米スタートアップ企業に出資
4月、「 クボタ 」は米国農業テック企業Agtonomy(アグトノミー)に出資したと発表しました。
アグトノミーが事業展開するカリフォルニア州は、作業工程が複雑で付加価値の高い農作物「スペシャリティクロップ」の生産が盛んです。
アグトノミーは、フィジカルAI(人工知能)による農機の自動化技術に強みを持っており、大規模農業経営を担う顧客からもたらされるデータ学習を通じ、機械やロボットを自律的に制御・駆動させています。
クボタはアグトノミーと2024年から協業していますが、出資を機にスペシャリティクロップ向けスマートソリューションの事業化に向けた協業を加速させます。
日本でも農機の無人化・自動化が進む
日本でも農機の無人化・自動化が進んでおり、以下の3段階で捉えることができます。
第1段階は、人が農機に搭乗し、走行や作業を自動化する段階。
第2段階は、有人監視下での自動化および無人化。クボタは2024年に、有人監視のもと人が搭乗することなく自動運転でコメや麦の収穫作業ができるコンバインを世界で初めて市場に投入した実績があります。
そして第3段階は、モニターなどを用いた遠隔監視による完全無人運転です。同社は、26年をめどに遠隔監視による無人運転農機の実用化を目指し、研究開発を進めています。
国内では農機の自動化・無人化を3段階で推進
・第1段階:人が農機に搭乗し走行や作業を自動化
・第2段階:有人監視下での自動化および無人化
・第3段階:モニターなどを用いた遠隔監視による完全無人運転
クボタの農機は自律作業する機械に進化
今年1月、ラスベガスで世界最大級のテクノロジー見本市「CES2026」が開催されました。同社は、アグトノミーの自動運転システムを搭載したトラクターを出展。農機ディーラーと連携してアグトノミーのサービスの提供も進めています。
クボタは農機という「ハード(=体)」で強力なブランド力と実績を誇ります。一方、アグトノミーは、自動運転や農作業の最適化に必要な「脳」であるソフトウエアやAIに強みをもっています。
同社はアグトノミーと連携することで、農機を決まった作業をするだけの単なる機械ではなく、自律的に農作業を実施・管理する機械へと進化させようとしています。
競合も参戦、異業種も参入
他の農機メーカーも自動化を推進しています。
「 井関農機 」は25年12月、新型のコンバインなどを発表。同機には、自動操舵技術が備わっており、直進走行を維持することなどで運転者をサポートします。これにより、運転手の熟練度に関わらず作業の精度を上げ効率の向上などにつなげます。
異業種からもスマート農業を支援する動きが広がっています。
「 九州電力 」は4月、イチゴ生産者の収益向上をトータルサポートする「九電アグリラボ」を設立。同社は、オール電化によって気候変化の影響を受けにくい環境で、イチゴを安定的に生産・出荷する栽培ノウハウや知見を活かします。
「 オプティム 」は、自社の持つAIなどの技術を活用して農業の省力化支援サービスを積極的に展開。農薬の散布作業において散布地の確定や散布日の決定など防除作業全体をDX(デジタルトランスフォーメーション)化したドローンによる散布サービスを提供しています。
「 セラク 」は、農作業に関わる情報を一元管理できる「みどりクラウド」を15年から販売。水やりや土に肥料を与える施肥、換気などの遠隔操作ができる「みどりスイッチ」などのサービスを提供しています。
日本の農業は多くの課題に直面していますが、農機の自動化や無人化を通じて課題を解決すべく、農業のスマート化は日進月歩で進んでいます。