米航空宇宙局(NASA)が進める有人飛行計画「アルテミス」。1962~72年のアポロ計画以来、約60年ぶりとなる2028年の月面着陸を目指しています。アルテミス計画では、新興の宇宙関連企業が重要な役割を担っています。実業家イーロン・マスク氏が創業したスペースXを通じて宇宙事業に関与するテスラを中心に各社の動向をご紹介します。
オリオン宇宙船、有人飛行を完了
NASAは4月、宇宙船「オリオン」が約10日間にわたり有人飛行で月を周回し、地球に帰還したと発表しました。
今後、宇宙船同士のドッキング試験などを経て、28年に月面着陸の成功を目指します。月面着陸船としてNASAが選定した1つがスペースX(宇宙船名:スターシップ)で、実現に向けて飛行実験を進めています。
アルテミス計画とは?
・1962~72年のアポロ計画以来となる月面着陸を目指す有人飛行計画
・2022年にオリオン宇宙船の飛行試験、26年に有人月周回ミッションを完了
・27年にオリオンと月着陸船のドッキング試験、28年に有人の月面着陸を目指す
・国家主導で進められたアポロ計画と違い、アルテミス計画はイーロン・マスク氏率いるスペースXなど新興企業などが技術開発に深く関わるなど官民連携で進めるのが特徴
テスラとスペースX、AI半導体工場「テラファブ」建設へ
マスク氏は宇宙事業とAI(人工知能)技術の統合に本格的に乗り出しています。
テスラ(TSLA)とスペースXは3月、テキサス州にAI向け半導体を生産する工場「テラファブ」を建設する計画を明らかにしました。
この工場では、自動運転車やヒト型ロボットに加え、宇宙データセンター向けの先端半導体を生産する予定です。マスク氏は「年間1テラワット(1兆ワット)規模のAI計算能力を量産し、その8割を宇宙向けに充てる」などと述べました。
スターシップの開発を加速させ、月面着陸船の準備を進めると同時に、テスラとスペースXが共同で最先端工場を建設。宇宙開発の次のビジネスを見据えた布石として、経営戦略を着々と進めます。
ブルーオリジンも参戦、開発競争激化
アマゾン・ドット・コム(AMZN)創業者ジェフ・ベゾス氏が率いるブルーオリジン(宇宙船名:ブルームーン)も、スペースXに続きNASAから月面着陸船の開発業者の1つに選ばれています。
同社は1月、有人宇宙船「ニューシェパード」の飛行を一時停止し、経営資源を月面有人飛行プログラムに集中させると発表しました。
現時点でNASAは月面着陸船の機種を確定していません。この先、スペースXとブルーオリジンの選定争いを巡る開発競争は激しさを増しそうです。
宇宙開発の裾野はさらに広がる
月面着陸船の開発のほか、月面輸送や宇宙通信サービス、衛星分離システムなど様々な分野で新興の宇宙企業がアルテミス計画に関わっています。
ロケット・ラブUSA(RKLB)は、超小型衛星をロケットから宇宙空間へ安全に放出するための「キャニスター型衛星ディスペンサー(CSD)」と呼ばれる独自の衛星分離システムを提供するほか、電力供給源として同社開発の宇宙ミッション向け太陽電池がアルテミス計画で使われています。
インテュイティブ・マシーンズ(LUNR)は、月周回軌道で発信される電波の追跡支援サービスなどを提供しています。
レッドワイヤー(RDW)は、同社が持つ先進的な光学画像処理や太陽センサー技術がアルテミス計画の任務の一環として活用され、オリオン宇宙船に搭載されています。
28年の月面着陸成功に向けて、新興宇宙企業の総力を結集した開発は今後もスピード感をもって進んでいきそうです。