AIデータセンターの高速化と電力削減 「光部品」で解決

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AI(人工知能)の台頭でデータ通信量が急増するなか、AIデータセンターの高速化と電力削減が課題となっています。

これを受け、伝送容量や省電力化が十分でない従来の電気配線に代わり、データ伝送の一部を光配線に置き換える「光電融合」関連技術に注目が集まっています。

光電融合に欠かせない光部品を手掛ける住友電気工業を中心に各社の動向をご紹介します。

TSMC、光電融合関連技術「COUPE」を年内量産へ

今年4月、半導体の受託生産大手の台湾積体電路製造(以下TSMC)が光電融合関連技術「COUPE」の量産を2026年中にも開始することを明らかにしました。

「COUPE」は“クーペ”と読み、「Compact Universal Photonic Engine(コンパクト・ユニバーサル・フォトニック・エンジン)」を略したもので、「小型で・汎用性が高く・光技術を用いた・駆動装置」を意味します。

COUPEそのものは製品ではなく、部品や部材をまとめる(パッケージする)、“パッケージング技術”と位置づけられます。

「COUPE」量産で「CPO技術」が実用段階へ

冒頭でご紹介した光電融合は、コンピュータやデータセンターなどで、従来は電気信号でやり取りしていたデータを、より省エネ・高速・大容量で伝送できる「光信号」に置き換える仕組み・技術。電子回路と光回路を組み合わせ、一体化することで実現します。

この光電融合を具体的に実現する代表的な方法・構造の一つが「CPO」です。「CPO」は「Co-Packaged Optics(コー・パッケージド・オプティクス)」を略したもので、「共同封装光学」と訳されますが、そのまま“シーピーオー”と読むのが一般的です。

CPOは、電子回路と光信号をやりとりする「光エンジン」を“同じまとめ構造(パッケージ)内に”超近距離で組み合わせることで、消費電力や遅延を大幅に削減し、超高速のデータ通信を可能にします。

今回、TSMCが量産を発表したCOUPEは、このCPOを実現するための中核技術です。COUPEは電子回路と光回路を縦に重ねて一体化し、電気信号と光信号のやりとりを最短距離・最低消費電力・最高速度で行えます。これにより、CPO構造の性能が大きく向上することが期待されます。

米エヌビディア(NVDA)は次世代AIサーバー向け通信基盤に、既にCOUPEを採用しています。今回のTSMCのCOUPE量産化により、CPO技術はいよいよ実用化段階を迎えようとしています。

光電融合・CPO・COUPE・光部品の関係

・光電融合(概念・方向性)=電子と光を組み合わせて省エネ・高速化

・CPO(具体的な設計・構造)=電子回路と光エンジンを同じ構造で組合わせる方法

・COUPE(CPOに必要な技術)=電子と光のチップを直接重ねて一体化する仕組み

・光部品(CPOやCOUPEで使われる部品)=光信号の一連の処理をするための部品

 

光部品とは

・電気信号を光信号に変換して高速・大容量通信を実現する部品
・AIデータセンターでは消費電力や発熱を抑える次世代技術を担う
・レーザーや光ファイバー、光コネクター、変調器などがある
・CPOの登場でパッケージ基盤近くに配置。小型化・高性能化進む

 CPO技術に欠かせない住友電工の光部

住友電気工業 」は、CPO技術に深く関わっており、海外ではエヌビディアが進めるCPO技術の重要なパートナー企業の1社として参画しています。

CPOでは電気信号を光信号に変換して高速・低消費電力でデータを伝送するため、その光源として半導体レーザーが重要な役割を担います。そこで注目を集めているのが、住友電のInP(インジウムリン)基板を使った化合物半導体レーザーです。

InPレーザーは従来の半導体材料のシリコン基板では難しい効率的な発光が可能で、耐熱性などにも優れるため、AIデータセンター向けに相性がいいとされ、その重要性が増しています。

同社はInPレーザーの世界トップメーカーとして、InP結晶の合成から基板の製造・加工、光部品の開発に至るまで一貫して手掛けることで技術力を蓄積してきました。

同社は28年までにInPレーザーなどの光部品の生産能力を23年比で12倍に拡大させるほか、InP基板の生産能力も同2.4倍に引き上げる方針で、製品と材料の双方で需要急増に対応し、収益機会を取り込む考えです。

化合物半導体を微細加工する企業にも存在感

半導体レーザーなどの光部品の製造には、化合物半導体を高精度に微細加工する必要があり、こうした技術に強みのある企業の存在感も高まっています。

化合物半導体向けの製造装置を手掛ける「 サムコ 」は、足元でデータセンターの通信高速化や省電力化に寄与する光デバイスの製造工程向けの受注高が急拡大しています。今後、光部品を支える「黒子」として存在感が増してきそうです。

高性能な光部品の開発を推進する各社

CPOの登場でより高性能な光部品が必要とされており、各社は自社の強みを活かした商品開発を推進しています。

レーザーなど光源からの光を信号に変える変調器では、「 三菱電機 」が高出力化が可能なInPを使った光変調器を開発しています。一方、「 TDK 」は、信号が崩れにくい特徴を持つニオブ酸リチウム(LN)など変調器向け部材を開発しています。 

また、CPOでは、小さな基板の上に複数の部品や光ファイバーを配置するため、密度が高くなる位置ずれしにくく熱にも強い接着剤が必要とされています。

レゾナック・ホールディングス 」は、CPO向けに光ファイバーと光学部品を接続するための接着剤の開発を進めています。

光部品や周辺技術は、AI関連の中核テーマの1つとして関心が高まっています。