宇宙空間の人工衛星を「空飛ぶ基地局」として使い、手持ちのスマートフォン(スマホ)をどこでも使えるようにする通信サービスが注目されています。
空が見える所なら山間部や離島、海上などの通信圏外でもスマホが使用できる「圏外ゼロ構想」を進めるAT&Tを中心に各社の動向をご紹介します。
通信大手3社、「圏外ゼロ構想」目指し合弁事業設立
5月、AT&T(T)とベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)、TモバイルUS(TMUS)の通信大手3社は、衛星技術を活用し、「圏外ゼロ構想」(通信圏外問題の解決)を目指す新たな合弁事業の設立で原則合意したと発表しました。
3社は、専用の大型アンテナや受信機を介さず、スマホと人工衛星を直接接続し通信を可能にする「Direct-to-Device(ダイレクト・トゥ・デバイス、D2D)」と呼ばれる技術を活用。3社が保有する周波数帯域を統合し、衛星事業者向けなどに共通の技術仕様を整備することで、米国内のあらゆる圏外エリアをゼロにすることを目指します。
激しいシェア争いを繰り広げている通信大手3社ですが、将来の衛星通信時代の到来も見据え、通信インフラや電波の領域で異例のタッグを組みます。
宇宙衛星企業、空飛ぶ基地局の整備など着々と推進
圏外ゼロ構想の推進には、宇宙衛星企業の存在は欠かせません。
ASTスペースモバイル(ASTS)は、市販のスマホを衛星通信網に接続する「宇宙ベースの携帯電話ネットワーク構築」を目指すベンチャー企業です。AT&Tやベライゾンなどが戦略的パートナーとして名を連ねています。
同社は直接、宇宙から全米に携帯ブロードバンド通信を提供する商用認可を米連邦通信委員会(FCC)から付与されています。現在、10基配備している衛星を26年中に約45基に増やす計画で、AT&Tやベライゾンなどと連携し、本格サービスへの準備を進めます。
衛星通信サービス「スターリンク」を擁するスペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(SPCX)は、ASTスペースモバイルの最大のライバル企業です。
スターリンクは携帯電話向けに世界最大の650基の衛星を配備し、6大陸にまたがる世界各国の携帯電話プロバイダーとの提携を通じてサービスを展開しています。
スペースXは5月、エコスター(ECHO)が保有する全米規模の周波数帯域の一部を買収することでFCCから承認を受けました。スターリンクのサービス強化を図ります。
同社は、米国では提携先のTモバイルUSを通じて衛星通信サービスを提供しています。通信大手3社が設立する合弁事業との関わりは現時点で不明ですが、今後の事業展開に注目が集まります。
タッグを組む米通信企業と宇宙衛星企業
・AT&T+ベライゾン+ TモバイルUS ⇒ 3社合弁事業
圏外ゼロ構想推進
・ASTスペースモバイル⇒ AT&T 、ベライゾンなどが戦略的パートナー
宇宙ベースの携帯電話ネットワーク構築目指す
・スペースX 、TモバイルUS、⇒提携
衛星通信サービス提供
・アマゾン、グローバルスター、アップル⇒連携
ASTスペースモバイルやスペースXに対抗
アマゾン、宇宙衛星企業の買収でスペースXなどに対抗
アマゾン・ドット・コム(AMZN)は、人工衛星を活用したネット通信サービス「Amazon Leo(アマゾンレオ)を展開しています。
同社は4月、アマゾンレオの強化に向け、グローバルスターを約116億ドルで買収することで合意したと発表。ASTスペースモバイルやスペースXに対抗します。
グローバルスター(GSAT)は、D2D技術の先駆者として世界中の顧客に緊急通信サービスを提供しています。アマゾンはグローバルスターが保有する周波数帯域やD2D技術を活用し、既存の衛星では通信できない地域でもサービスを展開できるようにします。
グローバルスターは現在、アップル(AAPL)向けに緊急通信サービスを提供していますが、今後はアマゾン、グローバルスター、アップルの3社が連携し事業強化を図ります。
企業や個人の通信サービスの利便性向上に向けて各社の連携と競争は活発さを増しそうです。