バリュー・出遅れで見直し買い 「総合不動産」関連株が上昇

直近の値動きから見るテーマ株/ QUICK

株式市場で「総合不動産」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は3.3%と、東証株価指数(TOPIX、1.7%安)に対して逆行高となりました(6月12日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

半導体関連の上昇が一服、割安株に資金流入 米長期金利の低下も追い風

「総合不動産」関連株が買われた主なきっかけは、これまで相場をけん引してきた半導体関連株の上昇一服と、米長期金利の低下です。

6月9日の米株式市場では、中東情勢の不透明感の高まりなどを背景に、半導体やAI(人工知能)関連の銘柄が急落しました。主要な半導体関連銘柄で構成されるフィラデルフィア半導体(SOX)指数は1.9%の大幅安となりました。

この動きは翌日の東京市場にも波及し、半導体・AI関連株が大きく値を下げる一方で、出遅れ感の強かったバリュー(割安)株を物色する動きが目立ちました。不動産大手は金利上昇懸念などから5月下旬~6月上旬に相次いで年初来安値を更新するなど売り込まれており、こうしたセクターローテーション(業種間での資金移動)の流れのなかで割安感の目立つ関連銘柄への資金流入が活発化しました。

また、9日のニューヨーク市場で、原油先物価格の下落に伴い米長期金利が低下し、国内の金利にも低下圧力が波及したことも追い風となりました。不動産業界は事業規模が大きく、金利上昇局面では借入コストの増加が警戒されがちです。そのため、金利低下は将来的な財務負担の軽減につながるとして、買い材料として意識されました。

物色対象の変化と、金利低下などの材料が重なり「総合不動産」関連株の株価上昇へとつながりました。

愛称は「丸の内の大家さん」 オフィス賃貸に強み【三菱地所】

上昇率首位の「 三菱地所 」は、「丸の内の大家さん」という愛称を持ち、その名の通り丸の内地区のオフィス賃貸事業で不動の地位を築いています。オフィスのみならず、商業施設やホテル開発にも積極的で、135年以上に渡って培われた「まちづくり」のノウハウが同社の強固な事業基盤となっています。

物価高や好調なオフィス市況を背景に、24年ごろから丸の内エリアのオフィスビル賃料の5~20%の値上げを実施していて、今後も積極的に賃料を値上げしていく方針を示しています。企業業績の拡大を背景に今後も都心部のオフィス需要は逼迫が見込まれ、収益拡大に期待が持てそうです。

屈指の高級ブランド「プラウドシリーズ」を展開【野村不動産HD】

上昇率2位の「 野村不動産ホールディングス 」は、高級分譲マンション「プラウド」シリーズや東京エリアに展開する中規模オフィスシリーズ「Premium Midsize Office」などで知られる総合不動産デベロッパー企業です。

25年9月には、JR東日本と4000億円を投じて共同で開発した複合商業施設「ブルーフロント芝浦」の1棟目が全面開業しました。27年3月期にはブルーフロント芝浦の賃貸収支の黒字転換を見込み、新たな成長フェーズへの突入を印象付けています。

多彩なアセット 「ららぽーと」や「渋谷サクラステージ」も

三井不動産 」は、「ららぽーと」や「三井アウトレットパーク」など知名度の高い商業施設を展開し、売上高2.7兆円超を誇る日本最大の総合デベロッパーです。オフィスや住宅にとどまらず、物流施設やデータセンターなども手掛けており、多彩なアセットクラスを保有する総合力の高さに強みがあります。

東急不動産ホールディングス 」は、渋谷駅とその周辺エリアを「広域渋谷圏」と名付けて重点的に開発しており、24年には大型の複合施設「渋谷サクラステージ」を開業しました。

東京建物 」は、都心部における大規模オフィスビルや商業施設の開発・運営で豊富な実績を有しています。

足元のオフィス市況は好調 国内の枠組みを超えて世界へ

6月11日にオフィス仲介大手の三鬼商事が発表した26年5月の東京都心5区のオフィス空室率は、前月比0.13ポイント低い2.07%でした。「オフィス空室率」とは、建物やビルなどオフィス部分の総床面積のうち、入居企業がなく、空いている面積を示す指標です。

この数値が低いほど、空いているオフィスが少なく、需要が逼迫しているという目安となります。低下は2カ月連続で、需給均衡の目安となる5%を22カ月連続で下回っていて、足元のオフィス市況は好調な状態が続いています。

ただ、中長期的な視点に立つと、日本の生産年齢人口(15~64歳)は50年には21年に比べ約29%減少すると推計されており、国内市場の縮小を見据えた新たな収益源の確保は急務です。

こうした中、各社が経営計画の柱として海外事業への積極的な進出を明確に打ち出し、具体的な数値目標とともに海外シフトを急加速させています。

日本独自の「街づくり」などで培ったノウハウを武器にグローバル展開を本格化させる総合不動産関連銘柄。今後は「国内の不動産デベロッパー」という従来の枠組みにとどまらず、世界を舞台に新たな成長を描く企業として、海外展開の動向にも注目していきたいですね。