「商品」のインデックス CRB指数

あなたの知らない「インデックスの世界」/ さかえだいくこ(おせちーず)須山 奈津希

ニュースでよく耳にするものの、よくわかっていないインデックスについてお伝えする本連載。今回は、「商品」を対象にしたインデックスをご紹介します。

原油価格に翻弄される株式マーケット

2026年2月末以降、中東情勢が緊迫しています。株式市場もその情勢に大きく動かされる日々ですが、非常に変化が大きくなっているものの一つが原油価格です。

イランが位置する中東はご存じのように産油国が多く、日本もその原油をたくさん輸入しています。昨今の報道で、中東から原油を運ぶタンカーが通らざるをえない「ホルムズ海峡」という言葉に耳慣れた方が多くなったことでしょう。原油価格の指標であるWTI(West Texas Intermediate)は、米国テキサス州などで産出される軽質・低硫黄の高品質原油です。ガソリンなどを多く精製でき、世界の原油価格指標の一つ(NYMEX先物)として、世界中でその値の変化を注目されます。WTIの値の変化は取引の対象にもされます。その値は2月末から大きく上昇しています。中東情勢の緊迫化が素直に反映されています。中東情勢が緊迫したらWTIが上昇する傾向があるのは知っておいていいと思います。

2025年夏から2026年春の商品市場の主役は「ゴールド」だった

少し時間をさかのぼりましょう。2025年夏から2026年春にかけてマーケットで話題になったのは「ゴールド」価格の変化でした。連日のように最高値を更新し、その価格の変化の恩恵を受けたいと、貴金属店に行列ができたのは記憶に新しいところです。「ゴールド」は「有事の金」といわれ、戦争や自然災害発生時にプライスが上昇することが多いです。株も債券もうまくいかないというような局面でよく買われて、資産を守る役割を果たしたことが何度もありました。近年は有事でなくてもプライスが上昇し、投資対象としての魅力も増してきています。

「原油」も「ゴールド」も「商品」の一種

「原油」や「ゴールド」は「商品」と呼ばれるアセット(資産)の一部です。「商品」を「コモディティ」とも呼び、取引所で標準化されて大量に取引される一次産品の総称です。

これらは現物取引のほかに先物取引があります。先物取引とは将来の決まった日に、原油・金・小麦などの商品を、あらかじめ決めた価格で買う・売る約束をする取引です。取引所で数量・品質・納期が標準化された契約だけを扱います。実際に商品を受け取る必要はなく、決済は価格差で行われるのが一般的。モノのやり取りは輸送手段等も必要になり、煩雑になりがちだからです。取引される主な商品は以下の通りです。これらが取引所で取引される際には、それぞれの商品が契約ごとに厳格な「仕様(Specification)」を定めています。これにより、誰が取引しても同じ品質・数量の商品として扱われます。冒頭にご紹介した原油の指標、WTIであれば1契約=1,000バレル、硫黄分0.42%以下、API比重40度前後と定められています。API比重は原油の品質を示す値と理解してください。

コモディティのインデックス、「CRB指数」

市場では数多くの商品が取引されていて、商品のインデックスも存在します。代表的なものは「CRB指数」(しーあーるびーしすう)です。正式名称は「FTSE/CoreCommodity CRB指数」で、1957年にCommodity Research Bureau(CRB)社が開発しました。CRBは算出を開始した会社の名前の頭文字をとったものなのです。1967年の値を100として基準とし、米国・英国の主要商品取引所(NYMEX、CME、LMEなど)の先物価格から算出されます。2026年5月にルールの変更があり、構成するコモディティの種類が21年ぶりに3種類増えて22品目になりました。22品目は4つのグループに分類され、グループごとにウエイトの上限が決まっています。「大豆の搾りかす」って何? と思われたかもしれません。これは大豆から油を絞った後の「かす」で、家畜飼料などに用いられるものです。飼料価格が上昇すればそれらを食べて成長する牛や豚の価格が上がるため、農産物価格の先行指標になるということでしょう。

22品目の中で最もウエイトが高いのは原油で、23%です。原油がCRB指数の約4分の1を占めるということです。

株式指数のように定期的に算出対象のコモディティが変更されるようなルールはありません。それぞれの品目は世界の様々な取引所で取引されていますが、原油ならニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)のWTI Crude Oilの取引価格を使うといったように、品目ごとに使うプライスには決まりがあります。

チャートを確認

ではCRB指数の変化を10年チャートで確認しましょう。足下は史上最高値水準です。

2020年春に大きく下落しています。この時はCOVID-19の世界的な感染拡大に伴い、原油価格が大きく下落したときです。人の動きが減ると、原油の需要が減ると考えられたわけです。直近1年のみを見ると、やはり2026年3月以降の上昇が非常に大きいです。CRB指数においては原油のウエイトが高いですから、冒頭で述べた3月以降の原油価格の大きな上昇が、CRB指数の大きな上昇に直接寄与しています。

将来の物価の変化を示唆するインデックス

昨今、様々なモノやサービス価格が上昇していますね。CRB指数は一次産品で構成されますから、私たちの生活で利用する多くの加工品の価格はCRB指数よりやや遅れて変化する傾向があります。2026年3月以降に原油価格が大きく上昇したあと、4月ぐらいから価格上昇だけではなく供給不足懸念も指摘されるようになりました。

こうした観点から、CRB指数の変化を物価の変化の先行指標としてとらえ、近未来の消費者物価を予想するために用いてはいかがでしょうか。CRB指数が急騰しているということは、近い将来多くのモノの価格が上昇するんだなといった具合です。

本来であれば、CRB指数に連動する円建てのETFがあれば都合がいいのですが、残念ながら現時点では存在しません。インフレヘッジに有効なので、近い将来円建てのETFが登場することを望みます。