メモリ価格高騰がもたらす影響

テーマで横ぐし!世界の会社を見てみよう/ 日興フロッギー編集部スタジヲ タケウマ

旬な投資テーマをもとに、関連する国内外の企業をまとめて紹介する本連載。今回のテーマは「メモリ」です。最近、世界的に半導体メモリの価格が大きく上がっています。半導体市場は成長局面にありますが、どの分野で使われるかによって、企業の明暗が分かれ始めています。 投資のヒントを探ってみましょう。

AIサーバー需要がメモリ需要を押し上げる

パソコンやスマートフォンで使われる「メモリ」と呼ばれる半導体部品や、DRAM(データを一時的に保存するメモリ)やNAND(データを長期間保存するメモリ)などの価格が2025年秋以降、急上昇しています。背景には、生成AIの普及に伴い、データセンターへの投資が増えていることがあります。

クラウド事業者は、AIを動かすために多くのサーバーを新しく導入しています。その結果、サーバー向けDRAMや、企業向けの高速保存装置であるSSD(NANDを使った記憶装置)の需要が拡大しています。

調査会社TrendForceによると、2026年4~6月期のメモリ契約価格は、汎用DRAMが前四半期比+58〜63%、NANDフラッシュが+70〜75%と予想しています(3月末時点)。

また、金融経済情報サービスBloomberg Intelligenceによると、世界で使われるDRAMのうち、データセンター向けの割合は2025年に約50%で、5年前の32%から大きく増えました。この割合は今後も増え、2030年にはAIサーバー向けが全体の6割以上になると見られています。

クラウド事業者とメモリメーカーの間では、価格変動リスクを抑えるため長期契約を結ぶ動きが広がっています。その一方で、短期的には需給のひっ迫が解消される可能性は低いと想定されています。調査会社Gartnerは、メモリ価格が本格的に落ち着くのは2027年後半以降になるとの見方を示しています。メモリ各社は生産能力の拡大を進めていますが、当面は価格高騰が続くと見込まれます。

メモリメーカーの収益は急拡大

世界半導体市場統計(WSTS)によると、2026年の世界半導体市場は約9755億ドルになると予想されています。その中でも、メモリとロジック半導体は、どちらも前年比+30%超の成長と予想されます。この成長をけん引しているのは、AI関連投資の拡大です。こうした動きは、メモリメーカーの業績にもはっきりと表れています。

アメリカの大手メモリメーカーであるマイクロン・テクノロジー(MU)は2025年12月~2026年2月期の業績で、売上高238.6億ドル(前年同期比196%増)、調整後粗利益率74.9%(同+37%pt)と、大幅な収益拡大を示しました。

韓国のSKハイニックスも、2026年1~3月期の営業利益が前年同期の5倍に増えました。メモリ価格が今後も高水準で推移するとの見通しから、同社は今年の設備投資を大きく増やす予定です。

日本ではNANDメモリを専門に作っている「 キオクシアHD 」が2026年4~6月期の営業利益について、同29倍の1兆2980億円という大幅な増益見通しを発表しました。株価は1年で約30倍になっています(5月末時点)。

非AI領域へのマイナス影響

一方で、メモリ価格の上昇は、一部企業の業績にはマイナスの影響となります。特に、AIとは直接関係のない分野では、業績へのマイナス要因となっています。

メモリ価格上昇は、パソコンやスマートフォン、家電製品といった非AI分野にも大きく影響を与えています。世界有数のパソコンメーカーであるHP(HPQ)は、2026年10月期のパソコンの部品コスト全体に占めるメモリの割合予想を約35%に引き上げる見通しを示しました(同年2月)。これは、2025年11月時点に想定した15〜18%から大幅な上昇であり、実際に製品価格の引き上げにつながっています。

また、一部の調査会社は、部品コストの上昇を背景に、2026年の世界スマートフォン市場が減速すると予測しています。

さらに、「 ソニーグループ 」や「 任天堂 」といったゲーム機メーカーも、部品供給ひっ迫や調達コストの上昇が、製品価格や新製品の販売時期に影響を及ぼす可能性があると警告しています。

このように、AI関連分野の成長に伴うメモリ価格の高騰は、非AI分野へもコスト増として幅広く影響を及ぼしています。

今回のメモリ価格高騰は、一時的なブームではなく、AI普及という構造的な変化の一部といえます。関連銘柄の短期的な価格変動に振り回されるのではなく、世界の企業を横断的に見ながら、中長期でどの企業が競争力を高められるのかを見据えることが、今後ますます重要になっていきそうですね。

SKハイニックスは掲載はありますが当社では取り扱いをしていない銘柄です。